【カナダの世界遺産】美しい街並みに世界最大級の恐竜化石層など…カナダ」の世界遺産はこれ

1972年のユネスコ(国際連合教育科学文化機関)総会で採択された「世界遺産条約」に基づき登録された「世界遺産」。これまでに登録された世界遺産は165ヶ国で1052件となっており、どの遺産も長い歴史で育まれてきた自然、文化を現代に伝える重要な遺産となっています。今回はその世界遺産の中から北米・カナダにある世界遺産を見てみましょう。

豊かな自然を残す「自然遺産」

数億年前の姿を現代に残す「グロスモーン国立公園」

数億年前の姿を現代に残す「グロスモーン国立公園」

image by iStockphoto / 28982968

ニューファーランド等西部にある国立公園。
北米大陸プレート、ユーラシア・アフリカ大陸のプレートが激突した際に流れた上部マントル(地殻と核との間にある層)が海底から隆起して形成されたテーブル状の台地「テーブルランド」、ピンク色の珪岩がむき出しとなった園内最高峰の山「グロスモーン山」など、地殻変動した数億年前の姿を現代に残すところに特徴がある世界遺産。

ギザギザの形をした「フィヨルド(氷河による浸食によって形成された複雑な地形の入り江)」が残る「ウエスタン・ブルック・ポンド」は1万5千年前の氷河浸食によって形成されたものとされ、地質構造学における「プレート・テクトニクス(地震、火山噴火などのメカニズムを、地球表面の「プレート」水平運動で説明する考え)」を証明する世界でも珍しい例。
大地が見せる荒々しさがそのまま見られるのですね。

多様な魚類が発見された「ミグアシャ国立公園」

カナダ・ケベック州にある国立公園である「ミグアシャ国立公園」はセントローレンス川に突き出た「ガスペ半島」にある国立公園。
南側・シャレール湾に面した場所にあります。

約4億1600万年前から約3億5920万年前の「デボン期」と呼ばれる時代は亜熱帯気候に属していた地域であり、この時代には多様な魚類が生息。
そのことから周辺では「ボスリオレピス・カナデンシス」や「エウステノプテロン・フォールデイ」といった魚類が発見されており、これらの化石層は園内の自然史博物館で見学可能。

公園のある半島内には島の先端にあるケベック州初の国立公園「フォリヨン国立公園」、宿泊施設などが並ぶリゾート地「ペルセ」があり、「ペルセ」には3億7500年前に形成されたと伝わる「ペルセ岩」が名物になっています。

「バッファロー」狩りに使われた狩り場が残る

「バッファロー」狩りに使われた狩り場が残る

image by iStockphoto

アルバータ州ポーキュパイン・ヒルにある「ヘッド-スマッシュト-イン・バッファロー・ジャンプ」は6000年以上前から使用されたバッファロー狩り用の狩り場。
この付近はかつて先住民・ブラック・フット族が住んでおり、彼らはここにある幅約300m、高さ約18mの断崖を利用してバッファローを追い込み、追い落とし猟を行っていたとされています。

その後猟は19世紀まで続き、現在の崖の周囲からははバッファローを追い込むときに使用したとされる火を焚いた跡、バッファローの骨の中から矢尻などが発掘。
彼らが行っていた狩猟方法は北米地域で広く行われていたものとされていますが、地形の特徴をうまく利用した彼らは非常に「頭が切れる」人々であったのですね。

落差90mの巨大な滝を持つ「ナハニ国立公園」

落差90mの巨大な滝を持つ「ナハニ国立公園」

image by iStockphoto

カナダの秘境とされるノースウエスト準州にある「ナハニ国立公園」は標高2,972mの「マッキンジー山」を含む国立公園で、国立公園の中心部は「サウスナハニ川」の流域。
公園名の「ナハニ」は先住民・デネ族(en)の言葉で「精神」を意味する言葉。

公園にある「ヴァージニア・フォールズ」は90mの落差を誇る巨大な滝であり、この落差は「ナイアガラの滝」の約2倍となる数字。
滝の中心にある「メイソンズ・ロック」はカナダの有名なカヌー選手、著述家、映画監督でもあるビル・メイソンの名を取って名づけられた岩で、滝自体は1972年に国立公園と認められた際のカナダ元首相ピエール・トルドーにちなんだ名称への改名が議論されています。
有名人と深く関係のあるスポットでもあるのですね。

公演は1978年に世界遺産登録されたのち2003年には23,000平方キロメートル、2007年8月には国立公園の拡大と5,400平方キロメートル保護が決定し、国立公園では国内3位の大きさに。

世界最大級の恐竜化石層を持つ「州立恐竜公園」

世界最大級の恐竜化石層を持つ「州立恐竜公園」

image by iStockphoto

カナダ・アルバータ州カルガリーから車で2時間の場所にある「州立恐竜公園」は、1955年に州50周年記念事業の一環として、化石の出土する地層を保護する目的で設定された州立公園。

公園内は「世界最大級の恐竜化石層」があることで知られ、ここから発見された恐竜の種類はティラノサウルス、トリケラトプスなど39種類。
そのほかここから発見された500以上の標本が世界中の博物館に移送されており、世界の博物館にとって「注目すべき存在」とも言えますね。
現在は「ミッドランド州立公園」内にある「ロイヤル・ティレル古生物学博物館」の現地調査拠点にもなっており、かつては植物が生い茂る土地でしたが、荒涼とした地であることから「バッドランド」と呼ばれてきました。

最古の爬虫類の化石が発見された「ジョギンズ」

「ジョギンズ」はカナダ・ノバスコシア州カンバーランドにある農村で、かつては石炭の採掘地・炭鉱町として栄えた街。
海岸沿いに露出した石炭紀の岩石は約3億年前に形成されたものとされており、距離にして15 km 。
地質学者チャールズ・ライエルとジョン・ウィリアム・ドーソンが1851年に発見した四肢動物の化石は生物史上で最も初期のものと認識される「ヒロノムス」と呼ばれる生物のもので、2002年に「ヒュロノムス・リュエリ」の名が付けられることに。

ここで発見された化石記録については、イギリスの自然科学者チャールズ・ダーウィンの『種の起源』でも触れられており、「世界で最も保存状態の良い」天然の化石の森を見られることで有名に。
19世紀になると多数の有名な地質学者がここを訪れるように。
有名人を多く引き付ける遺跡ですね。

シンリンバイソンの生息地「ウッド・バッファロー」

シンリンバイソンの生息地「ウッド・バッファロー」

image by iStockphoto

「ウッド・バッファロー国立公園」はカナダ・アルバータ州北東部、ノースウエスト準州の南部にまたがる国立公園で、面積約4万5000平方キロメートルはカナダ国内最大。

ヘラジカやアメリカグマ、オオカミ、オオヤマネコなど多様な動物の生息地として知られていますが、最も有名なのが「シンリンバイソン(アメリカバイソンの亜種)」の存在。
ここには世界最大規模の群れが存在しており、現在でも約5,000頭が生息すると言われているほど。
国立公園への指定は「シンリンバイソン」の保護を目的にされており、世界遺産に登録されたのは1983年。

このほか公園内には「ピース川」と「アサバスカ川」、「スレーブ川」によって形成された大規模な三角州が存在し、公園内の見どころに。

人の踏み入らないエリアが残る「カナディアン・ロッキー」

image by PIXTA / 6569678

カナダの西部にある「カナディアン・ロッキー山脈自然公園群」は「カナディアン・ロッキー」と省略されることもある公園。
北米大陸西部を南北に貫く総長約4,500kmの「ロッキー山脈」のうち約2,200kmの連峰が「カナデイアン・ロッキー」と呼ばれます。
約100万年前の氷期にこの一帯を覆った氷河が山々を激しく削ったことから生まれた場所で、4つの国立公園と3つの州立公園で構成。

敷地内最大の国立公園である「ジャスパー国立公園」は国内で最初に「国立公園」に指定された場所。
1883年に行われた大陸横断鉄道の建設中に偶然温泉が発見され、1885年に「バンフ温泉保護区」に指定。
「偶然」が世界遺産誕生につながっていたのです。

カナディアン・ロッキー内最大の国立公園である「ジャスパー国立公園」は総面積10,878平方キロメートルに及ぶ巨大な公園。
現在でも人が踏み入っていないエリアが多く残されており、そこで野生動物に接する機会も多くあると言われています。
動物たちにとって心地よい場所なのかもしれませんね。

歴史や美しい街並みが残る「文化遺産」

ヴァイキングが開拓のために来た「ランス・オ・メドー」

ヴァイキングが開拓のために来た「ランス・オ・メドー」

image by iStockphoto

カナダのニューファンドランド・ラブラドール州・ニューファンドランド島最北端にある「ランス・オ・メドー」は1978年に世界遺産登録された考古遺跡。
フランス語で「くらげの入り江」を意味する 「L’Anse-aux-Méduses」が名前の由来で、「ランソメドウズ」とも呼ばれています。

北米において唯一見つかっている「ヴァイキング(9~12世紀に西ヨーロッパで海賊活動・交易を行った人々)」が開拓のためにやってきた場所で、1960年にノルウェー人の探検家ヘルゲ・イングスタッドと妻で考古学者アン・スタイン・イングスタッドが発見。
現在の遺跡近くには住居、道具の跡などが残されており、西暦1000年頃に大西洋を渡った「ヴァイキング」の生活ぶりを見ることができます。

先住民の「ハイダ族」が住んだ「スカン・グアイ」

ブリティッシュ・コロンビア州西部のグアイ・ハアナス国立公園最南端にある無人島。
かつて先住民の「ハイダ族」が疫病により激減、廃墟となるまで暮らしていた場所で、1981年に世界遺産(文化遺産)登録。
現在の島には住居跡や貝塚など、ハイダ族が生活した村落址などが残っています。

そうした生活の後の中でも有名なものが、32本の「トーテムポール」。
これは北アメリカ大陸に住んだ先住民の人々が家、墓地に建てた民族の伝統文化であり、ここのものにはシャチや伝説上の鳥「サンダーバード」などの彫刻の姿。
芸術的な側面からも注目したい貴重な品ですね。

島にある「グアイ・ハアナス国立公園」は環境保全のため年間入園者を制限しており、すべての観光客には「公園局のオリエンテーション」を受けることが義務に。
厳しい管理の中「ハイダ族」の歴史・文化が守られているのです。

北米で唯一の城郭都市「ケベック歴史地区」

北米で唯一の城郭都市「ケベック歴史地区」

image by iStockphoto / 92880731

ケベック州の州都ケベック・シティーにある旧市街で、カナダで9番目に登録された世界遺産。
北米で唯一の城郭都市として知られ、城壁に囲まれた丘の上にある「アッパータウン」、丘と川岸の間にある「ロウワータウン」の2つに分類されます。

アッパータウンで有名なホテル「シャトー・フロンテナック(正式名称「フェアモント・ル・シャトー・フロンテナック)」はケベック・シティーのランドマークとされる1893年に開業した高級ホテルで、「フレンチ・ロマネスク」建築が特徴。
19世紀後半から建設された「シャトー・スタイル」ホテルの1つで、1953年には映画『私は告白する』の舞台に。

ロウワータウンにある「勝利のノートル・ダム聖堂」は聖母マリアとパリの守護聖人・ジュヌヴィエーヴを祀る聖堂で、1688年に創建。
創建から2年後にケベックを包囲したイギリス艦隊をフランス軍が撃退したことから勝利を記念して「勝利の」という名前が付いています。

北米で最も美しい「ルーネンバーグ」

北米で最も美しい「ルーネンバーグ」

image by iStockphoto / 68902121

カナダ・ノバスコシア州ルーネンバーグ郡にある港町。
1753年に建てられた都市で、イギリス国王ジョージ2世が「ブラウンシュヴァイク=リューネブルク」の支配者であったことからその名が付いたとされています。

1753年にイギリス人がこの街に入り始めて以降に街づくりが始まり、18~19世紀に造られた木造住宅、カラフルな家々が残る光景は「北米で最も美しい」と言われることも。
街は重要な海港、造船所として栄え、現在はカナダ最大級の魚加工業者であった「ハイ・ライナー・フーズ」など工場が多く存在。
世界的に有名なスクーナー船「ブルーノーズ」号、「ブルーノーズII」の生まれた場所で、後続機は現在街の観光名所に。

家々に設けられた「ルーネンバーグ・バンプ」と呼ばれる出窓は「長い間漁業に出た夫の帰りを妻がよく見える」ように作られたもの。
夫の帰りを待ちわびた妻の姿が浮かんできそうですね。

冬はスケートリンクに「リドー運河」

冬はスケートリンクに「リドー運河」

image by iStockphoto / 70539159

リドー水路とも呼ばれ、オタワ川が流れるオタワ市、キングストン市とを結ぶ運河。
米英戦争の直後に「アッパーカナダ(イギリス支配下にあった場所)」がアメリカの軍事的脅威に備えて建設した運河で、モントリオールーキングストン間を結ぶ物流輸送ルートを確保する目的で1832年に開通。
開通してから現在も使われている現役の運河で、北米で最も古くから使われている運河であります。

カヌーをはじめとした川遊び、サイクリングなどのアクティビティも盛んに行わる場所で、冬の時期には長さ7.8 kmの「世界で最も長いスケートリンク」に変身。
スケートリンクはこの地域の観光名所にもなり、「ウィンタールード・フェスティバル」の会場としても利用。
世界遺産には開通175周年にあたる2007年の第31回世界遺産委員会において認定され、これが州最初の世界遺産になりました。

「アカディアン」最大の村「グラン・プレ」

「アカディアン」最大の村「グラン・プレ」

image by iStockphoto

「グラン・プレの文化的景観」はカナダ・ノバスコシア州キングス郡の農村自治体で、フランス語で「大牧草地」を意味する世界遺産。
2012年に世界遺産登録されています。

村は18世紀半ばにフランス系移民「アカディアン」最大の村として栄え、アメリカの詩人ヘンリー・ワーズワース・ロングフェローの詩『エヴァンジェリン』で美しい風景が語られたことから有名に。
一方で、1704年にアン女王戦争、1747年のジョージ王戦争、1749年にはル・ロートル神父戦争、グラン=プレ包囲戦、1755年には7年戦争と戦争の舞台に。
美しい景観の裏に激動の歴史が隠された世界遺産でもあります。

バスク人たちの捕鯨基地「レッドベイ」

バスク人たちの捕鯨基地「レッドベイ」

image by iStockphoto

カナダのニューファンドランド・ラブラドール州レッド・ベイにある1979年指定のカナダ国定史跡。
「レッド・ベイ」の名は17世紀のフランス人漁師たちが湾を「ベ・ルージュ(赤い湾)」と呼んだことに由来し、1550年からバスク人たちの主要な捕鯨基地のひとつに。
このほか鯨油の精製も行われ、これらはヨーロッパに輸出。

水中文化財の引き揚げ作業が1978年から1984年まで実施されガレオン船3隻、小型の舟艇4隻、16世紀の捕鯨船が引き揚げ。
海底には4隻の難破船の船体が残り、うち1隻は「サン・フアン(San Juan) 」号のもの。
現在のエリアには陸上、海底の遺跡には16世紀バスク人の捕鯨基地の様子が保存され、2013年に「レッド・ベイのバスク人捕鯨基地」の名称で世界遺産リストに登録。
水中文化遺産を対象に含む初の世界遺産になっています。

自然を見ながら人々の姿を思い浮かべる

カナダの世界遺産には人の踏み入らない「未開」の場所、有名な化石発掘場所、美しい街並みとさまざまあります。
こうした文化・自然遺産にはかつて生活した人々の生活の跡が残されており、自然を見ながらかつての人々の姿を思い浮かべてみたいところですね。
photo by PIXTA and iStock