観光の前に知りたい「箱根湯本温泉」の昔と今、及び周辺の歴史的スポット

箱根温泉とは、神奈川県の西端にある温泉。箱根火山の周辺には温泉地が点在していて、年間通じて多くの観光客が訪れる、日本有数の観光地でもあります。数ある箱根の温泉地の中でも最も歴史が古いのが、箱根山の東側にある箱根湯本温泉。小田急線箱根湯本駅を中心に広がる旅館街は東京都心からのアクセスもよく、誰でも気軽に訪れることができる温泉地として人気です。そんな箱根湯本温泉の歴史に触れることができるオススメスポットをたっぷりとご紹介してまいります。

箱根湯本の歴史

開湯~戦国時代の箱根湯本

開湯~戦国時代の箱根湯本

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箱根温泉の歴史はかなり古く、奈良時代に始まります。
738年(天平10年)、関東に広まった流行り病を何とかするために派遣されてきた浄定坊(じょうじょうぼう)というお坊さんが箱根湯本にやってきて修法(しゅほう:祈祷)をしたところ、岩が避けてお湯が湧き出した、という伝説が残っています。
このお湯につかったら流行り病はたちどころに治ったとか。
このとき発見したお湯を「惣湯(そうゆ)」と呼んでいて、この源泉は今でも湧いているのだそうです。

箱根という名前は奈良時代には既に定着していたようですが、”箱”は四角い形の山、”根”は山の峰を指してつけられたものではないか、と考えられています。
箱根の中心的存在でもある駒ヶ岳は山頂がやや平らで、芦ノ湖越しに見ると箱のように見えなくもないので、駒ヶ岳の形から”箱根”と呼ばれるようになったのかもしれません。

箱根を一躍有名にしたのは、豊臣秀吉だと言われています。
1590年、天下統一を目前にして小田原の北条氏を攻めた際、湯本より少し山間に進んだところにある底倉温泉で疲れを癒したのだそうです。
箱根の名は広く知られるようになりました。

江戸時代~明治・大正の箱根湯本

江戸時代~明治・大正の箱根湯本

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奈良時代より良質の湯治場として人々を癒してきた箱根湯本。
江戸中期から後期あたりになると、庶民の間で湯治を兼ねた温泉旅行が大ブームになり、温泉番付やガイドブックのようなものが盛んに作られて、箱根にも多くの湯治客が訪れるようになります。
特に湯本は街道沿いで交通の便がよく、江戸から訪れやすいということもあって人気があったようです。
数軒の宿屋が並び、既に行楽地としての箱根の片鱗が見えていました。

明治に入ると、政財界の著名人が箱根を訪れる機会が増えたこともあって、道路や鉄道の整備が進みます。
このとき、小田原から伸びた人力車道の到達地点となったのが湯本でした。
さらに、川沿いに上ったところにある宮ノ下温泉というところに富士屋ホテルが開業し、外国人観光客が訪れるようになったため、湯本から宮ノ下までの道も整備されます。
道はさらに伸びて芦ノ湖まで続き、湯本を玄関口として箱根の温泉地は少しずつつながっていきました。

道路だけでなく鉄道も整備されていきます。
明治33年には小田原電気鉄道が湯本へ乗り入れ、大正8年には箱根登山鉄道が開通。
同時期に強羅から早雲山までのケーブルカーも営業を開始します。

険しい山道を移動しなくても温泉に浸かることができるようになったことで、さらに著名人が箱根を利用するようになりました。

昭和~現在の箱根湯本

昭和~現在の箱根湯本

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昭和に入ると、箱根は押しも圧されぬ有名観光地となります。
湯本や宮ノ下など古くから続く温泉のほかにも、強羅や仙石原など高原地にも、避暑を目的として多くの観光客が訪れるようになりました。

昭和2年には、私鉄小田急線が新宿から小田原までの営業を開始します。
これによって、どちらかというとセレブが利用する温泉地というイメージがあった箱根が、庶民にとっても身近な観光地となっていきました。
増え続ける観光客を受け入れるべく繰り返し掘削が行われるようになり、温泉の数も増えていきます。
江戸時代には七湯であった箱根も、現在では「箱根十七湯」を数えるほどになりました。

時代が変わり、公共の乗り物が整備されて多くの人が訪れるようになっても、箱根の中心はやはり湯本。
多くの旅館や土産物屋が軒を連ね、賑わいを見せています。

古い歴史を持つ箱根湯本。
周辺には歴史に触れることができる名刹・古刹がたくさんあり、散策にはもってこいです。

箱根湯本の歴史的スポット(1)~名刹・古刹を訪ねて

全てはここから~湯本熊野神社

全てはここから~湯本熊野神社

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箱根湯本駅から温泉街を抜けてぶらぶらてくてく約10分、木漏れ日が踊る国道一号線を川沿いに歩いていくと、道の脇に小さな石段と”熊野神社”ののぼりが見えてきます。
738年に浄定坊によって発見され、紀伊の熊野権現から分霊されたと伝えられる湯本神社は、この小高い場所から1000年以上もの間、箱根の移り変わりを見つめてきました。

現在も現役・箱根最古の源泉「惣湯(そうゆ)」が社殿の下にあり、「ゆや権現」として地元の人たちに大切にされてきた箱根の鎮守。
北条氏の武将たちが早雲寺参詣の際に立ち寄ったとも言われているそうです。

毎年9月には例祭があり、温泉に携わる人々が温泉に感謝する神事が行われます。
箱根温泉の歴史の始まりを今に伝える小さな神社は、温泉の神様として地元の人々の信仰を集めています。

神社の敷地はそれほど広くはなく、見どころが多いわけではありませんが、温泉街からそれほど離れているわけでもなく、静かな場所なのでぶらりと訪れる観光客も多い様子。
惣湯を見学することもできますので、箱根湯本のお湯で温まったら、是非、足をのばして立ち寄ってみてください。

北条一族を忍んで~早雲寺

北条一族を忍んで~早雲寺

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箱根湯本駅から川を渡り、箱根街道方面へ歩くこと10分ほど。
急な山道を上っていくと、趣のある山門が見えてきます。
戦国時代初期に活躍した武将、北条早雲の遺言で建てられ、戦国大名として関東一円を支配していた小田原北条氏の菩提寺でもある早雲寺です。
北条早雲は湯本が大変気に入っていたと言われています。

早雲寺は1521年、二代目北条氏綱によって建立。
一時は本堂の他に多くの塔頭(たっちゅう)や寮舎が建ち、多くの僧侶を抱え、関東随一の禅寺として大いに栄えたのだそうです。
湯本の町は早雲寺の門前町という一面も持っていました。

しかしその栄華も長くは続きません。
北条氏は小田原城を中心として関東で絶大な力を誇っていましたが、時代は豊臣秀吉天下へと動き始めていました。

北条氏四代目氏政は最期まで秀吉に従わず、難攻不落と言われた小田原城は豊臣の大軍に取り囲まれ落城。
1590年、北条氏が滅びると、早雲寺も荒廃していきます。
早雲寺が再び息を吹き返したのは江戸時代に入ってから。
十七世菊径宗存という僧によって1627年に再建され、徳川三代将軍家光から朱印状を与えられて復興を果たしました。

境内には江戸時代に再建された本堂を始め、貴重な文化財が数多く残されていて見どころ満載。
中でも是非、訪れてほしいのが北条五代の墓所。
北条早雲、氏綱、氏康、氏政、氏直の墓が、一列に並んで建てられています。
豊臣の小田原攻めの際、この一帯は焼き払われてしまい、実際の墓の場所がわからないそうで、この墓は江戸時代に入ってから北条氏の子孫によって建立されたもの。
さほど大きくもなく、ごくシンプルな、簡素な墓標が、返って北条一族らしさを感じさせます。

境内を散策するだけでもかなり見ごたえがありますが、毎年、11月の初旬の数日間、本堂の襖絵や寺宝などを特別公開していますので、時期を合わせて訪れるのもおススメです。

箱根湯本きってのパワースポット~箱根観音 福寿院

箱根湯本は古来より「観音沢」と呼ばれていたほど霊験あらたかな所で、多くの人々が祈りを捧げにこの地を訪れていました。
そして、その祈りの場として建てられたお寺が「箱根観音 福寿院」です。

徳川時代初期の頃、箱根の山越えをしていた旅人が盗賊に襲われ、川底に落とされながらも一命をとりとめた、という出来事があったのだとか。
谷の途中の木に引っかかって気を失っていた旅人は温かいお湯で意識を取り戻し、この地に小さな庵を設けて観音菩薩像を安置したのだそうです。
以来、この地は「観音沢」と呼ばれるようになり、地元の人々や旅人たちから大切にされてきました。

箱根湯本駅から徒歩15分ほど。
旧東海道から一本入った細い路地を進んでいくと、民家の脇に小さな門と急な石段が。
うっかり見過ごしてしまいそうな狭い入り口ですが、厄を払い福を呼ぶとして、地元の方をはじめ、遠方からも多くの観光客がお参りにやってくるのだそうです。

箱根観音のご本尊は「開運出世慈母観音菩薩」といい、大変貴重なものだそうで、普段は見ることができません。
その代わり、この分身とされる「跨(また)ぎなで観音」に手を合わせます。
観音様の前にある木にまたがって観音様をさすると体の不調が治るとか。

さらに福寿院には「媽祖菩薩」という日本では大変珍しい仏様も祀られています。
千年以上信仰されているアジアの万能仏なんだそうで、特に航海安全を祈願する人々の間で広く信仰されてきました。
この珍しい仏様目当てに訪れる人も多いのだそうです。

また、美しい山々を見ながらの座禅や写経などを体験することもできます。
座禅は事前の予約が必要なので、確認してからお出かけください。

箱根湯本の歴史的スポット(2)~箱根湯本の歩みを知る

箱根の山の中をトコトコ・箱根登山鉄道

箱根の山の中をトコトコ・箱根登山鉄道

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箱根がこれだけ有名な温泉地となった理由は、お湯の良さのほかにもうひとつ、道路や鉄道の整備にあると言ってよいでしょう。

箱根を形成する山々は標高1000m前後ですが街道は険しく、その地形を活かして関所が置かれていました。
湯本から先へ進むには、険しい山道を進まなければなりません。
そこで活躍したのが登山鉄道。
湯本から強羅までの急勾配を、車輪とレールの間の粘着力だけで力強くのぼっていきます。
車両の中からレールを見ていると、垂直の壁を登っているのではないかと錯覚するほど、思わず足がすくみます。
高いところが苦手な人は後方の座席に座らないほうがいいかもしれません。

明治33年、小田原電気鉄道が湯本まで乗り入れを開始したことを受けて、より多くの観光客を呼び込むために、湯本より西側に鉄道を敷く計画が持ち上がりました。
それは並大抵のことではありません。
そのような山岳鉄道は日本ではまだ例がありませんでした。
難工事と巨額の費用は当然のこと。
しかし、箱根を愛する名士たちの熱心な働きかけにより、計画は進められていきました。
工事に当たり、登山鉄道の先進国として知られていたスイスの技術がお手本となったようです。

工事は困難を極め、予定より大幅に遅れることとなりましたが、起工より7年半の歳月をかけ、日本発の本格的登山鉄道が箱根の山に誕生しました。

この鉄道が完成したことで、湯本から奥へ、強羅や早雲山といったところへも気軽に足を運ぶことができるようになり、より多くの人が箱根を訪れるように。
湯治客だけでなく、鉄道ファンも多く、各駅はカメラ片手に多くの観光客で賑わいます。

両側に広がる箱根の自然も見所のひとつ。
箱根登山鉄道が箱根の山の中にうまく溶け込んでいることがよくわかります。
特にオススメなのがあじさいの時期。
路線の両脇にはたくさんのあじさいが咲き、夜はライトアップ。
他の鉄道と異なり、車窓の景色をゆっくり楽しめるのも登山鉄道ならでは。
春先や紅葉の季節もオススメです。

計算されつくした美しさ~本間寄木美術館

湯本駅から小田原方面へ少し戻った入生田(いりうだ)駅から徒歩10分ほど。
箱根寄木細工本間木工所の2階に、江戸から昭和初期の寄木細工の作品が展示されています。

箱根のお土産の定番でもある寄木細工は、色合いの違う様々な木材を組み合わせて模様を描く木工細工。
年始の風物詩ともなっている箱根駅伝の往路優勝チームに渡されるトロフィーは寄木細工で作られています。

箱根ではもともと、街道を通る湯治客相手の土産物がいろいろと売られていました。
寄木細工の歴史は江戸時代の後半の頃からと見られています。
箱根の山々には様々な種類の樹木が生息しており、こうした細工物を作るための材料に事欠かなかったため、美しい模様を生み出す高い技術が生まれ、継承されていったのでしょう。

盆や碗、小箱などが一般的ですが、中には人形など「これが寄木なの?」と目を疑うような巧みなものも。
本間寄木美術館では江戸時代後期から昭和初期にかけての作品を500点以上収蔵しており、その中から常時200点ほどを展示。
時が経って味わい深い色合いになった箪笥や硯箱は見ていると心洗われるよう。
展示作品は定期的に入れ替えられるので、何度も訪れるファンも多いのだそうです。

旅館の敷地内にある美しい滝~玉簾の滝

旅館の敷地内にある美しい滝~玉簾の滝

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箱根湯本を代表する温泉旅館「天成園」。
広い庭園の中に、高さ8メートル・幅11メートルの滝があります。
玉簾(たまだれ)の滝と名づけられたその滝は、宿泊客だけでなく自由に見学することが可能。

天成園は箱根湯本駅から徒歩15分ほど。
日帰り温泉としても利用できる大きな旅館。
様々なお風呂を楽しむことができるため、家族連れから温泉マニアまで幅広い観光客に人気です。

玉簾の滝はその昔、箱根神社へ参拝に行く人々が途中立ち寄って水を飲んで一休みしたと言われている滝。
流れ落ちる水は「延命の水」とも言われていたのだそうです。
険しい岩場を流れ落ちる水は白く美しく、荻原井泉水や与謝野晶子もその風情を歌にしているのだとか。
多くの旅人の喉を潤し、文化人たちの心を揺さぶり、今は箱根一の人気旅館敷地内で、お湯を楽しみにやってきた人たちをやさしく見守っています。

旅館の敷地内には「玉簾神社」(たまだれじんじゃ)も。
芦ノ湖の守り神「九頭龍明神」を祀った、箱根神社の分社で、水の守り神として崇められています。
また、箱根神社同様、九頭龍様は「縁結びの神様」としても知られており、良縁を求める人たちの姿も。
滝を眺めた後は是非、お参りなさってください。

ぶらぶら歩けば心も温まる町・箱根湯本

谷間に川が流れ、緑豊かで、風光明媚な景色が広がる風情ある温泉地、箱根湯本。
古き良き風景と近代的な大規模旅館が調和をとって共存している、そんな温泉町は徒歩でのゆったり散策がオススメです。
人が多く訪れるようになっても山間の景色は昔のまま。
歴史ある温泉町、箱根湯本に是非お運びください!
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