蔵王温泉の観光前に知りたい!美肌の湯・美味の郷・仏のまします霊峰「蔵王温泉」の歴史

みちのくは山形県。東京から山形駅まで山形新幹線で2時間30分、山家駅からさらにバスで40分の場所に〈蔵王温泉〉はあります。夏には緑が映え、冬には美しく白雪をかぶる聖なる山の峰には1900年の昔から湧き出でる温泉が。ヤマトタケルノミコトの昔に発見された「美肌の湯」は今も愛されています。〈蔵王大権現〉で山岳信仰が栄え、のちには巡礼ツアーの場所としてもフィーバーし、さらに昭和に入って山形新幹線の開通で、ウィンタースポーツの聖地としても盛況を見せる蔵王温泉。今回は霊峰・蔵王山の歴史やグルメをどーんと紹介です!

開湯1900年!〈蔵王三大神〉のまします霊峰

 

開湯1900年!〈蔵王三大神〉のまします霊峰

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蔵王温泉の歴史をさかのぼれば、1900年前にまで行き着きます。
すなわち日本列島がまだ未統一だった時代。
英雄ヤマトタケルノミコトによる東征で、1人の部下がこの地に湧き出るふしぎな湯を発見します。
傷ついた戦士が癒された温泉は発見者の名にちなんで「高湯温泉」と呼び習わされるようにもなります。
その後奈良時代から平安時代にかけて〈蔵王山〉の名前の由来となる、ある仏様が到来。
山岳信仰と温泉で栄える土壌が、このころからできていったのです。

温泉を発見したのはヤマトタケルノミコト……の、部下

 

温泉を発見したのはヤマトタケルノミコト……の、部下

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大和から東征を行った英雄〈ヤマトタケルノミコト〉。
伝説によると、その部下の1人である吉備多賀由(きびのたがゆ)が〈蔵王温泉〉を発見したといいます。
ときは西暦110年。
多賀由は戦で矢の毒を受け、それを癒やすために山に湧く湯に浸かったところ、たちまち全快。
その後この温泉は多賀由(たがゆ)から言葉が転じて「高湯」と呼ばれるようになりました。
蔵王温泉は福島県の高湯温泉、同じ山形県の白布温泉とともに〈奥羽三高湯〉として古くから親しまれています。

さて、その「たかゆ」さん。
彼は、これを日頃信仰していた大国主命が助けてくれたものと感謝し、この蔵王山の頂きにお祀りしました。
それが〈蔵王三大神〉のうちの一柱〈蔵王大黒天〉。
大国主命と大黒天は神仏混合の過程で同一視され、七福神の「大黒さま」と親しまれるようになったのです。
ちなみに現在の大黒天像は、観光客の旅の安全祈願、蔵王温泉の商売繁盛を願って昭和年間に建立されたもの。

〈蔵王三大神〉はこのあと述べる〈蔵王大権現〉と並んでこの大黒天、そして江戸時代も末期の安政年間に土地の庄屋が37年の歳月をかけて建立した〈蔵王地蔵尊〉。
山形の人びとの心の支えとして今なお愛されています。
さて次に述べるのは「蔵王山」の由来となった仏様について。

〈蔵王大権現〉のまします霊峰

 

〈蔵王大権現〉のまします霊峰

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「山頂と天は結ばれていて、そこに『一柱』の神様がおられる」そんな日本の山岳信仰。
この山が「蔵王山」と呼ばれるようになったのは奈良時代のころ。
西国は奈良から〈蔵王権現〉という仏様がやってきたのです。
そう、〈蔵王大権現〉がましますから「蔵王山」。

この蔵王大権現は、とっても強い仏様。
神、仏、菩薩などすべての力を包括し、究極の真理を体現しています。
おそろしい容貌ですが、ゆえに悪鬼悪霊を退散させ、世界に平和をもたらすのです。
また、農耕をはじめとしてさまざまな産業を守護する仏様としてこの一帯の人びとを見守ってきました。

蔵王山ではことに平安時代から〈蔵王大権現〉を大々的にお祀りするようになり、人びとの信仰を集めていきました。
また平安時代からはとくに、山岳信仰と仏教がミックスした上で悟りを求める〈修験道〉を極めようとする〈修験者〉(山伏)たちの山としても栄えたのです。

戦国のヒーロー〈最上義光〉そして江戸時代へ

 

戦国のヒーロー〈最上義光〉そして江戸時代へ

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ときは流れ戦国時代。
山形に英雄があらわれます。
山形城(現・霞城公園)をつくった武将〈最上義光(もがみよしあき)〉公です。
この人は山形県民にとって今もヒーロー。
出羽国(現在の山形県)を統一した彼は力持ちで人情家の英君。
山形の礎を築いた義光公にまつわるエピソードが蔵王山に残っています。
その後、江戸時代にいたって蔵王山と蔵王温泉は〈蔵王三大神〉をめざす巡礼ツアーのお客様で大フィーバー!そんな近世の蔵王山を見ていきましょう。

〈最上義光力石(ちからいし)〉

 

〈最上義光力石(ちからいし)〉

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最上義光(もがみよしあき)(「よしみつ」じゃないですよ!)は山形城をつくった戦国武将。
山形を統一した彼は〈関ヶ原の戦い〉で東軍につき、最上家を51万国の大々的に押し上げ山形藩の初代藩主となった男です。

この出羽国は代々最上家の土地。
ある日、若き義光は家臣たちとともに、蔵王山へ武者修行へおもむきます。
そのとき義光は、家臣たちが8人がかりでようやく持ち上げた石を1人でひょいっと持ち上げたといいます。
その〈力石〉は今も蔵王山に残っています。
あなたは持ち上げられそうですか?

実際、義光公は1.8キロの指揮棒をぶん回して全軍を戦を司っていたといいますから、かなりの力持ちだったのでしょうね。
彼が当主だったときには一揆も起こらなかったほどの名君でした。
山形城跡であり桜の名所でもある〈霞城公園〉には最上義光公の騎馬像が建っています。
山形駅から徒歩10分の霞城公園も美しい城跡、筆者イチオシの観光スポットです。
蔵王温泉の行きか帰りに、ちょっと寄ってみてください。

「美肌の湯」が巡礼者に大人気!

 

「美肌の湯」が巡礼者に大人気!

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時代は泰平の世、江戸時代へ。
レジャーを求める人びとは「巡礼」ツアーを組んで寺社仏閣めぐりをし、祈願ついでに温泉にも浸かってゆったりする……そんなスタイルが流行りました。
山岳信仰の蔵王山も〈蔵王三権現〉を目当てにした巡礼旅行者がおとずれ、盛況を見せました。

この蔵王温泉、開湯当時から「美肌の湯」として有名。
強酸性のお湯でお肌や血管の若返りを促進。
殺菌効果も高く、いにしえに吉備多賀由が傷を癒やすことができたのは、切り傷ややけど、疲労回復に効果の高いこのお湯の特徴ゆえだったかもしれません。
ただ、お肌の弱い方や心臓の悪い方、妊婦さんは注意です。

ちなみに現在も山形市観光協会では、温泉で体を清めたのち、〈蔵王三大神〉をめぐるのがモデルコース。
情勢が不安定になっていった幕末の安政年間には、前述した〈蔵王地蔵尊〉も建立されています。
ぜひとも霊峰・蔵王山に来たあかつきには、ありがたい神様・仏様にご利益をお祈りして帰りましょう。

山形新幹線、開通!繁栄のはじまり

 

山形新幹線、開通!繁栄のはじまり

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1992年、山形新幹線が開通。
当初、大都市間をつなぐ路線だった新幹線が、地方都市と結ばれるようになったのは山形新幹線が最初でした。
地方活性化に山形新幹線は大貢献!首都圏から旅行客を呼びました。
自然ゆたかな山形は季節によりとりどりの顔を見せます。
夏には東北三大祭りの1つ〈山形花笠まつり〉も開催。
そしてウィンタースポーツの聖地〈蔵王温泉スキー場〉では国際的な大会も開かれるようになり、温泉にスキーにと冬のレジャーを楽しめる蔵王は東北随一のレジャースポットとなっていきました。

夏の〈山形花笠まつり〉

 

夏の〈山形花笠まつり〉

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夏の山形といえば〈花笠まつり〉。
毎年8月に行われるこの有名なお祭りは、実は戦後生まれ。
もともと冬が厳しく飢饉にたびたび襲われたり、貧しい土地ゆえに戦前には満州や朝鮮半島へ移民・出稼ぎも多かった山形。
それゆえに観光産業に非常に熱心です。

戦後の山形を励まそう!それまでのお祭りに加えて発案されたのがこの〈山形花笠祭り〉。
曲にも踊りにもさまざまなバリエーションがありますが、元ネタをさかのぼると案外新しく、明治から大正時代。
土を突いて灌漑水路を作るときに歌われていた「土(ど)ん突き唄」が源流です。
その後、さまざまなアレンジメントや新曲が加えられ、花笠音頭は県内外から募集した歌詞などを入れて計15種類になりました。

「ヤッショ、マカショ」のはやし言葉とともにあざやかな花笠をかぶった人びとが舞う、一糸乱れぬパレードは見もの。
しかし夏の山形は盆地ゆえにとても暑いので、熱中症にご注意。
そしてぜひとも山形夏の名物〈冷やしラーメン〉を食べていってくださいね!

冬の絶景を楽しもう!〈蔵王温泉スキー場〉

 

冬の絶景を楽しもう!〈蔵王温泉スキー場〉

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清らかな雪におおわれた蔵王山は、まさしく霊峰の名にふさわしい絶景。
この山、今はウィンタースポーツの聖地でもあります。
戦後に観光立国として復興していく過程で、人びとは山の恵みに目を留めました。
白雪に美しいゲレンデ、それに樹氷……冬の蔵王山は見るものを魅了します。
〈蔵王温泉スキー場〉には国際スキー連盟公認のスキージャンプ場があります。
このスキージャンプ場で世界的な大会も開かれる蔵王山。
有名選手に近くのコンビニで会えちゃう……かも?

また1年を通して、とりどりの花に深緑に紅葉に樹氷にと楽しめるのが〈蔵王ロープウェイ〉。
空中散歩を楽しめるこのロープウェイはそのロマンチックさから〈恋人の聖地サテライト〉としてNPO法人に認定されてもいます。

締めには温泉で、冷えた体をあたためて。
ちなみ冬場に行くときの注意。
大勢のレジャー客とスリップ防止運転で、道路はしごくゆっくりとしか動きません。
時間の調整・携帯トイレや食料の準備はお忘れなく。

絶品!山形グルメを堪能

 

絶品!山形グルメを堪能

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筆者は何度も山形に足を運んでいます。
そのたびに食べるのが「山形産のつや姫(お米)」と「芋煮」「そば」そして「山形牛の焼肉」!どれもリーズナブルなお値段で食べることができる絶品グルメです。
新鮮で安くておいしくて……都会では味わえない味。
やはり素材は新鮮で、それを知り抜いた土地の人が作った料理に限ります!ちなみに山形新幹線の車窓の景色をながめていると、途中から牧場にのんびりと牛が放牧されている、関東ではなかなか見られない光景が広がりますよ。
蔵王温泉でももちろん食べられる、山形グルメをご紹介。

衝撃の甘さとやわらかさ、芋煮と白米をモリモリ!

 

衝撃の甘さとやわらかさ、芋煮と白米をモリモリ!

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生まれも育ちも農業大国・茨城県の筆者。
野菜と茨城県産のお米のおいしさには自信がありました。
けれども山形の誇るブランド米「つや姫」には正直かないません。
山形の清らかな水でつくられたつや姫は甘く、つややか。
一口食べたらその旨さに衝撃が走ります。
白米だけで贅沢感を味わえるすさまじいお米です。

〈芋煮〉は山形、新庄、米沢など各地方で入れるものに違いはありますが、山形地方スタイルの芋煮は「牛肉・玉こんにゃく・里芋をしょうゆで煮た」もの。
「芋煮と白米で食卓は完結する、おかずなどいらない」と山形県民は熱く語りますが、一度食べたら納得。
すき焼きの甘さを喉ごしよくしたようなおつゆに、やわらかなお肉、弾力あるこんにゃく……。
絶妙な味わいとうまみでどんどんご飯が進みます。

この芋煮、ホテルの朝食バイキングや居酒屋さん、食堂で食べることができます。
季節によっては「芋煮会」なるものが開催され、川べりや空き地で大鍋に芋煮を作り、ワイワイ楽しむのも山形県民の情緒あふれる風景です。

思わず呆然とする山形牛の旨さ、そして……

 

思わず呆然とする山形牛の旨さ、そして……

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ブランド牛として、東京で食べると数千円はくだらない、山形牛。
県内の焼肉屋さんやステーキ屋さんで格安で食べることができます。
そもそも山形では肉の値段がべらぼうに安いのです。
「お金のなくなった山形の大学生は毎日すき焼き」というほど。

山形牛のブランド化がはじまったのは、日本人が一般にお肉を食べるようになった明治時代。
お雇い外国人のイギリス人が山形のご当地牛を横浜に送ったところ「これは旨い!」と大評判に。
甘く、やわらかく、じんわりとにじむ旨味。
都会で食べる高級「熟成肉」とは違うフレッシュさ。
現地をめいっぱい楽しむためにも「山形牛の焼肉」を、お近くの焼肉屋さんで格安で召し上がってくださいね!

また、山形牛を活かしたひんやりした〈肉そば〉も美味。
夏は気温が36度を超えることもある、山形。
鶏肉とネギを具材に、冷たいそばをどんぶりに盛り付けた肉そばは、近年テレビなどでご当地B級グルメとして広まりました。
また太くて固くて味わいぶかい〈板そば〉も美味。
蔵王山はじめとして山形の各観光地で食べることもできます。

意外と近くてコスパ率高し!蔵王の歴史と魅力

 

新幹線で2時間半。
首都圏から遠いようで案外近い、山形県の蔵王温泉。
ドライブして近郊に……もいいですが、思いきって新幹線に乗ってふだんとは違う景色の中にトリップしてみてはいかがでしょう?春夏秋冬で違う表情を見せる蔵王山。
温泉に浸かりながら、蔵王山の景色や空気、森や雪を堪能してください。
そして都会よりもずっとリーズナブルでおいしい山形牛やお米、海鮮料理も待っていますよ。
ちょっとしたご褒美旅にはぜひ蔵王温泉を。
満足度のコストパフォーマンスは抜群、保証します。
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