中国最大の国際都市・上海の成り立ちと歴史的スポット6選

世界一人口の多い都市、上海。日本から最も近い大都市のひとつでもあり、毎年多くの日本人観光客が訪れる観光都市としての顔も持っています。海沿いの摩天楼やネオン鮮やかな繁華街など、人で溢れかえっているイメージが強いですが、どんな歴史を辿って来た街なのでしょう?古い歴史があるのかと思いきや、意外にも都市としての歴史はそれほど古くないのだそうです。どんな経緯で世界的な大都市が誕生したのか、どんな歴史を辿ったのか、時代を「成り立ち」「租界時代」「近年」の3つに区切り、歴史解説と共に観光にピッタリな歴史的スポットをご紹介してまいります。

上海の成り立ちとオススメの歴史的スポット

上海の歴史解説【1】誕生したのはいつ頃?

上海の歴史解説【1】誕生したのはいつ頃?

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現在では世界有数の大都市であり、経済・金融・産業・交通の中心として躍動する上海。
人口は2400万人を超え、首都北京をしのぐ勢いで、しかも4割ほどが外部からの居住者で、外国人も多い”世界都市”。
北京市、天津市、重慶市と共に直轄市(省と同格の行政区画)となっています。

上海は長江デルタの河口域の南岸に位置する海に面した街。
中国大陸の中ほど、海側に少し突き出した部分にあります。
市街地は海からほんの少し内陸、長江の支流、黄浦江を遡ったところにあって、河口は良質な港として栄えてきました。

6000年ほど前には既に陸地であり、古くから人が住んでいたと思われます。
春秋戦国時代と呼ばれ中国大陸に多くの国ができ互いに争い合っていた時代(紀元前770年~紀元前221年)には、長江周辺には呉、越、楚といった大国が広い領地を誇っていました。
この頃の上海周辺は春申君という楚の政治家に与えられた土地であったため、「申」と呼ばれていたそうです。
この頃、この付近に住む人々はほとんどが漁民でした。

”上海”の文字が史上に現れるのは唐代(618年~907年)に入ってから。
黄浦江流域に華亭県が設置され、上海浦という村が誕生しました。
宋の時代に入る頃には上海鎮(鎮=防衛や経済面で重要な土地に派遣された軍)となって、商業の港として栄えていきます。
長江の河口、複数の川が流れ込むデルタ地帯にあった上海は外洋と行き来しやすい地形にあり、代々の統一王朝の都からは遠く離れていましたが、需要な港として注視されていたのです。

オススメの歴史的スポット<1>「上海博物館」

オススメの歴史的スポット<1>「上海博物館」

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上海の、というより中国全体の歴史を知る、ということになりそうですが、上海には上質な展示品で知られる博物館があります。
歴史旅に欠かせないスポットです。

上海博物館は、故宮博物館、南京博物館とともに中国三大博物館と呼ばれ、古代青銅器や陶磁器を中心に膨大な量の展示を行う、収蔵点数13万点の巨大博物館。
じっくり見るなら半日は欲しいところです。
あまりの規模に気後れしてしまいそうですが、入館料は無料なので、歴史にそれほど興味のない人でも気軽に立ち寄ることができます。

取っ手のついたお盆のような形をした、円形の建造物は、古代中国の世界観を表しているのだとか。
中は4階まで吹き抜けになっていて、デパートかショッピングモールのような雰囲気です。
時間帯によっては、入り口付近はかなり混雑します。

青銅器、石像・彫塑、陶磁器、墨絵などの絵画や書、印章、少数民族の衣装、家具、紙幣や硬貨など、展示品は多岐に渡り、中国の歴史の深さ・スケールの大きさは想像以上です。
中でも4階にある「中国少数民族工芸館」の展示は非常に珍しいもので、色鮮やかな刺繍や装飾が施された女性の衣装の展示はどれも可愛らしく、見ていて思わず微笑みたくなってしまうほど。
同じく4階にある「中国歴代銭幣館」も見ごたえあり。
紀元前1000年頃から近代に至るまでの様々な貨幣が数千点展。
貨幣というカテゴリだけでこれだけの数を展示している博物館も珍しいかもしれません。

オススメの歴史的スポット<2>「豫園」

オススメの歴史的スポット<2>「豫園」

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上海というとビル街や繁華街など人が集まる賑やかな場所がすぐ思い浮かびますが、街中にある美しい庭園も見逃せないスポットです。

上海のほぼ中央、黄浦区にある豫園(よえん)は、敷地面積およそ2万㎡にもなる緑豊かな討つ宇久強い中国庭園。
明王朝時代、四川省の役人だった潘允瑞という人が、故郷を思う父親を慰めるために造ったもので、1559年から1577年、実に18年もの歳月をかけたと言われています。
完成した時には、父親はもう亡くなっていたそうですが、国の事業ではなく個人が造らせた庭だとは驚きです。
豫とは”愉”という意味を持つのだそうで、豫園は「楽しい園」という意味合いになります。

明が終わり清の時代に入ると潘氏は衰退。
豫園は地元の有力者たちによって建て直され、継承されていきます。
完成からおよそ400年の間、時代が変わっても、多くの人々の手によって守られ愛され続けてきた庭園。
1961年には一般開放され、現在では上海観光に欠かすことのできない人気スポットとなりました。

園内には40カ所以上もの見どころがあると言われ、四隅が尖って反り返った独特の形をした屋根の建造物や、ごつごつと荒々しい岩や敷石、池や橋、回廊など、どこを切り取っても絵になるため、ついついカメラを向けたくなります。
ゆっくり回っているとあっという間に1日が過ぎてしまうほど。
周辺には飲食店やショップがたくさん並んでいるので、庭園散策の後にはショッピングやグルメも楽しむことでできます。

租界時代の上海とオススメの歴史的スポット(2)

上海の歴史【2】フランス租界時代の上海

上海の歴史【2】フランス租界時代の上海

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近代に入ると、1849年から1946年まで、上海は租界(そかい)という特異な歴史を歩んできました。
その名残を示すスポットも、上海の見どころのひとつとなっています。

租界とは、一口に言えば近代中国各地の港にあった外国人居留地のこと。
”租”は借り受けるという意味で、中国政府もしくは個人からイギリスやフランス、ロシアなど海外の国々が「永借」した土地、という意味になります。

清王朝がアヘン戦争でイギリスに敗北。
1842年、「南京条約」によって、香港島の譲渡や賠償金の支払い、貿易の自由化といった条項と共に、上海を始めとする5つの港の開港が言い渡されます。
そして2年後、黄浦江流域にまずイギリス人の居留地が設けられ、1848年にアメリカ人居留地が、1849年にはフランス人居留地が、イギリス人居留地の対岸に設けられました。
外国人の居留地に中国人が自由に立ち入ることは許されておらず、どちらかというと、中国政府側が外国人を隔離し監視するための土地、という意味合いが強かったようです。
この租界は後に、英米と日本による共同租界と、フランスによるフランス租界の再編され、それぞれ、領事館や銀行、商業施設などが建てられ発展していきます。

黄浦江沿いは、最先端建築様式の建物が並び、外国人たちを乗せた路面電車が走り、外灯が道を照らす近代的な街へと変貌。
上海は「東洋のパリ」と言われるほどに。
しかし第二次世界大戦が勃発し、状況は一変。
戦後、上海の全ての租界は中国政府に返還され、租界の歴史は終わりを告げます。

オススメの歴史的スポット<3>「外灘」

オススメの歴史的スポット<3>「外灘」

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租界として海外の建築物や文化が急速に広まっていった上海。
この時代に建てられた欧風建築がそのまま残る、異国情緒あふれる街並みを今に伝える場所が外灘(わいたん・がいたん:または英語名でバンドと呼ぶことも)です。
黄浦江沿いにおよそ1㎞、19世紀後半から20世紀前半にかけて建てられた建物が、現在もそのままの形で使用されています。

建物はどれも強固な石造りのものばかり。
当時の最先端の技術を駆使して建てられた高層建築が並ぶ様子は圧巻です。
ホテルや銀行以外の複合ビルは、南側から順番に「外灘○号」と名付けられているのだとか。
特に有名な建物としては、ネオ・バロック様式の6階建の「外灘3号」、日清汽船の上海支店として建てられた「外灘5号」、直径5.3mの時計台が印象的な「旧江海関大楼」などがあります。
どの建物も、ショップやレストラン、ホテル、銀行などが入っていて、史跡というより現役の建物。
中には敷居の高い高級店もありますが、気軽に立ち寄れる店も多いので、気になるデザインの建物があったら中を覗いてみてください。

川沿いに整備された幅の広い遊歩道を歩きながら、それらの建物の外観を鑑賞するだけでも、十分歴史の息吹を感じることができます。
夜になると建物がライトアップされるので夜景もオススメ。
対岸に広がる、上海タワーを中心とした浦東新区の近未来的な光景とのコントラストも見どころのひとつです。

オススメの歴史的スポット<4>「新天地」

オススメの歴史的スポット<4>「新天地」

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外灘と並んで人気の観光スポットとなっているのが「新天地」。

同じく、フランス租界地だった1920年から30年代に立てられた石庫門住宅(石造りの集合住宅)を修復し、当時の街並みを再現したモダンな街並みが人気のスポットです。

修復された石庫門は味わい深い色合いのレンガが印象的で、一歩足を踏み入れたらそこはまるで異世界。
レトロな街並みを前に、まず、1920年~30年代にタイムスリップしたかのような感覚に陥ります。
しかし建物の中に入っているのはどれも現代の、スタイリッシュなショップやレストラン。
街路樹の緑も美しく、木陰の下のオープンカフェでくつろぐ人々の姿も多く見られます。
観光客向けのスポットとしてだけでなく、上海の新しい文化を表現しているかのよう。
東洋西洋、過去と未来が混ざり合った、上海の新しい中心地として変貌を遂げようとしています。

大通りに面したオシャレショップ街から一本路地を入ると、いかにも”路地裏”といった雰囲気の狭い路地がいい雰囲気を醸し出していて、写真撮影にピッタリです。

街の一角に中国共産党第1次全国代表大会が行われた場所があり、記念館として公開されています。
セキュリティチェックがありますが、入場は無料です。

80年代以降の上海ととオススメの歴史的スポット(3)

上海の歴史【3】国際経済都市として発展を遂げた上海

上海の歴史【3】国際経済都市として発展を遂げた上海

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上海の租界の歴史に幕が閉じられると、外国資本はイギリスの租界地だった香港に集中。
かつての租界の賑わいは、香港へと移っていきます。
勢いを失った上海は一時期息をひそめますが、1980年代に入り、中国共産党による国内・対外政策の改革が進み、上海にも再開発の波が。
黄浦江を挟んで租界地の対岸に当たる浦東地区に、「上海浦東新区」と銘打ったビジネス地帯の建設が始まりました。
90年代に入ると浦東新区を中心とした国際都市としての形態が確立され、金融、貿易、経済の中心として世界をリードする街へと発展。
上海の人々が持つ底知れぬパワーと時代の流れが相まって、押しも押されぬ大都市へと成長していったのです。

浦東新区には、都市の成長を表すシンボルともいえる摩天楼が広がり、世界屈指の高層建築物が次々と建てられて、街の風景は日々刻々と進化を続けています。
浦東新区の建物はどれも個性的な形で、ニューヨークやシカゴとは違う、全く新しいタイプの街並みを形成。
昔の面影を残しつつ発展を遂げる上海の街では、訪れる場所によって様々な表情を見ることができるのです。

オススメの歴史的スポット<5>「東方明珠電視塔」

オススメの歴史的スポット<5>「東方明珠電視塔」

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租界返還後の躍進の歴史を感じられるスポットなら、まず浦東新区を訪れるべきでしょう。
現在の上海を牽引するパワフルな街。
個性豊かな高層建造物が建ち並ぶ様は必見です。

中でもひときわ異彩を放つのが「東方明珠電視塔」。
上海テレビ塔とも呼ばれる世界屈指の高さを誇る送電塔です。
浦東新区の開発に先駆けて、1991年に着工・1995年に完成した、高さ468mの巨大タワー。
赤色の球体状をした2つの展望台が印象的な、手塚治虫の漫画に出てきそうな近未来的な形をしています。
土台の形状も独特で、まるでロボットの足のよう。
今にも立ち上がって動き出しそうな感じです。

塔の内部の観光ポイントは地上90m、263m、350mの地点にある3カ所の展望台と、1階にある「上海歴史陳列館」。
こちらは、上海の昔の生活の様子や著名人の蝋人形などが展示されている施設で、ビックリするほどリアル。
展望台と合わせて見学するのがオススメです。

展望台は360度ぐるりと上海の街並みを見下ろすことができて迫力満点。
上海市の面積はおよそ総面積は約6300㎡で、東京のおよそ3倍。
目の前に河があり、海も間近に迫っているせいか、高いビルがたくさんあるのに東京ほど混み入っている感じはしないかもしれません。

この街が、3~40年の間に作られたものなのだと思うと感慨深いものがあります。
小さな漁村だったという上海の街。
海沿いの平らな土地にどこまでも果てしなくビルが建ち並ぶ様子は壮観です。

オススメの歴史的スポット<6>「上海中心大厦」

オススメの歴史的スポット<6>「上海中心大厦」

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”上海タワー”と聞いて東方明珠電視塔を思い浮かべる人もいますが、今、上海でタワーといったらこちら。
浦東新区の新しいシンボル、上海中心です。

高さは632m、127階建て、ドバイのブルジュ・ハリファ(828m)の次に高い(塔も含む建造物としては東京スカイツリーが2番目)超高層ビル。
2008年着工、2016年に完成。
館内にはホテル、オフィス、商業施設、会議場などが入っており、118階に展望フロアが設けられていて観光客に大人気です。

高さもさることながらそのデザインも特筆すべきところで、ろくろでひねったようにぐりんとねじれていて、真下から見上げるとらせん状に渦を巻きながら天へ上る竜巻のように見えます。
しかもよく見ると、外側をガラスで覆われたようなデザインになっていて、見る角度によって様々な表情を見せてくれます。
すぐ近くにある金茂大厦(ジンマオタワー:高さ420m、88階)や上海環球金融中心(上海ワールドフィナンシャルセンター:492m、101階)と3棟が並ぶ様子は圧巻。
全部を写真におさめるべく、ベストアングルを探してあちこち駆け回る観光客の姿もよく見られます。

上海中心の展望フロアまでは世界最高速の三菱電機製エレベーターでおよそ55秒。
あっという間に天空回廊に到着です。
展望フロアは足元まで全面ガラス張りで、360度ぐるっと一周できるようになっています。
金茂大厦と上海環球金融中心を真上から見下ろすと下に吸い込まれそうで思わず足がすくんでしまいそう。
上海再開発の象徴でもある東方明珠電視塔も眼下に見ることになります。
展望フロアは遅い時間まで開いているので、夜景もオススメです。

進化を続ける上海の街・歴史散歩はまだまだ続く!

中国4000年の歴史からすれば、上海の歴史はそれほど古くありません。
でも、短期間に大きく変化したからこそ生まれた街並みや文化というものもあるのだと思います。
まだまだ進化を続ける上海。
これからどんな街になっていくのでしょう。
上海の歴史散歩はまだまだ続きそうです!
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