高層ビルファン必見!ニューヨーク高層建築の歴史を辿る旅

高層ビルはお好きですか?ドバイの「ブルジュ・ハリファ」や上海の「上海タワー(上海中心)」など、経済成長目覚ましい都市では高尾山(標高599m)より高いビルが次々誕生し、近い将来1,000mを超える建物が誕生するのではないか、と言われています。今やアジアや中東が主流ですが、高層ビルの歴史の幕を開けた街といえばやはりニューヨークのマンハッタン島ではないでしょうか。そこで今回は、ニューヨークにある高層ビルの中から、歴史の古いものや歴史を築いたものなどを選りすぐり、高層ビルの魅力を余すところなくご紹介してまいります。

ニューヨーク高層ビルの歴史(1)~1920年代

トンガリ三角形の古株ビル「フラットアイアンビルディング」

トンガリ三角形の古株ビル「フラットアイアンビルディング」

image by iStockphoto

まず、ニューヨークに今も残る高層ビルの中で、最も古いと言われているビルを見に行きましょう。

5番街とブロードウエイの交差点に、ひときわ目立つトンガリ三角形のビルがあります。
高さ87m、22階建て。
1902年に完成した「フラットアイアンビルディング」。
摩天楼だらけのマンハッタンでは高いうちに入りませんが、Y字路の角度に合わせるかのように築かれた鋭角三角形の外観はとってもユニーク。
ニューヨークで最も多く写真におさめられたビルのひとつと言われているほど特異な形をしていて、ニューヨーカーにも観光客にも人気があります。
鋭角部分の先端の幅は2mほどしかないのだそうです。

内部はオフィスビルとして使われていて、一般に公開されている展望室などはありませんので高層階からの展望を楽しむことはできませんが、是非、真下から外壁を見上げて、独特のフォルムや外部装飾の美しさを堪能してみてください。
最上階部分に施された彫刻をじっくり観察したいなら、近くにあるマディソン・スクエア・パークからの写真撮影がオススメです。

鐘楼をモチーフにした「メトロポリタン生命保険会社タワー」

またの名を「メットライフ・タワー」。
同じくマディソン・スクエア・パークの近くに建つ、大きな時計と尖った屋根が印象的な高層ビルも、古い歴史を持つスカイスクレイパー(摩天楼)のひとつです。

着工は1893年、完成したのは1909年。
高さ213m、50階建て。
1913年にウールワースビルが完成するまでの三年間、世界で一番高いビルでした。

イタリアの都市ヴェネツィアのサン・マルコ広場にある鐘楼をモデルにデザインされたのだそうで、大きさはともかく、四角錘の屋根やてっぺんの装飾など、形はとてもよく似ています。
オフィスビルにしてあまりにもひょろっと細長いようにも見えますが、ビル完成以来2005年まで、メトロポリタン生命(現在のメットライフ)の本社ビルとして使われていました。

1920年代に入ると事業拡大に伴ってフロアが足りなくなり、一時はすぐ近くに”100階建てのビル”を建てる計画もあったようですが、世界恐慌の影響で頓挫。
1950年になって、”100階建てビル計画”の土台の32階分が北館が誕生しました。
こちらも見ようによっては、これからもっと高く積みあがっていきそうな、まだ建築途中のようにも見えて、なかなか魅力的なフォルムをしています。

ゴシック調の荘厳な高層ビル「ウールワースビル」

ゴシック調の荘厳な高層ビル「ウールワースビル」

image by iStockphoto

ダウンタウンのシヴィック・センター、ニューヨーク市庁舎のすぐ近くに建つ、ひときわ美しく輝くネオ・ゴシック様式の高層ビルがウールワースビル。
1910年着工、1913年完成、高さ241m、57階建て。
メトロポリタン生命保険会社タワーを抜いて、1913年から1930年までの間、世界で一番高いビルだったという、高層ビル界の大スターです。
1930年に同じくマンハッタンに建てられた40ウォール・ストリート・ビルとクライスラービルに追い抜かれるまで世界一の座を守り、建設当初は最上階は展望室として一般に公開されていたのだとか。
残念ながら現在では、警備上の問題などから一般には公開されていません。

高さもさることながら特筆すべきはそのデザインの美しさ。
ヨーロッパのゴシック教会を思わせる荘厳で神々しいデザインは、今もなおニューヨークのランドマークとして多くの人々から愛されています。

このビルは是非、正面入り口付近から上を見上げて鑑賞してみてください。
入口の装飾の繊細さと、外壁の波打つような美しさ、そして中段や頂部に設けられているトゲトゲした尖塔。
見ていて時を忘れるほどの美しさです。

ニューヨーク高層ビルの歴史(2)1930年代

高層ビル界の超エリート「クライスラービル」

高層ビル界の超エリート「クライスラービル」

image by iStockphoto

1920年代後半から1930年代にかけて、ニューヨークの街は高層ビルの建設ラッシュ時代に突入します。
地盤が固く高層建築に適していたマンハッタン島。
200mを超える高層ビルが次々と建てられていきます。
この時代に建てられた数あるビルの中からひとつ、と言われたら、多くの人がクライスラービルの名前を挙げることでしょう。

グランド・セントラル駅のすぐ近くに建つ美しく銀色に輝くクライスラービルじゃ1928年着工、1930年完成。
完成したときの最頂部までの高さは320m(最上階までの高さは274m)、77階建て。
翌年、エンパイアステートビルが完成するまでの間、世界一の高さを誇っていました。

実はこの頃ニューヨーク市内は、単に高層ビルの建設ラッシュというだけでなく、世界一の高さのビルの座を奪い合う競争がブームになっていたのです。
クライスラービル建設の際にも、ウォール街40番地に建設中のウォールタワーとの間で激しい”世界一の高さ”争いが繰り広げられていました。
ウォールタワーが高さ260mを目指して建設していることがわかると、クライスラービルは246mだった予定を282mに伸ばします。
それを知ったウォールタワーが283mに計画を変更して世界一の高さに躍り出ると、クライスラービルはかねてより秘密裏に進めていた「ビルのてっぺんに38mの塔を取りつける計画」を遂行。
見事、320mの高さに到達し、クライスラービルが世界一の座を射止めたのです。

まるで漫画のような出来事。
お互い目に留まるくらい近い場所で火花を散らし、競い合っていた時代。
今は間にたくさん高層ビルが建ってしまって、クライスラービルからウォールタワーは見えなくなってしまいましたが、ニューヨークの活気溢れる時代を牽引したビルは、今もニューヨークのランドマークとして凛と立ち続けています。

今は”あの人”のビル「40ウォール・ストリート」

今は”あの人”のビル「40ウォール・ストリート」

image by iStockphoto

そんなクライスラービルとの熾烈な「世界一の高さ争い」を繰り広げたウォールタワーは、ウォール街40番地に高々と建っています。
ただ、こちらは完成後、クライスラービルとは異なり、所有者や出資者が何度か変わり、その都度ビル名も変わるという運命を辿りました。
当初の正式名称としては「バンク・オブ・マンハッタン・ビル」や「マンハッタン・カンパニー・ビル」と呼ばれていましたが、別の銀行と合併した際に番地を取って「40ウォール・ストリート」というビル名に。
しばらくこの名前で親しまれてきましたが、1995年に第45代アメリカ大統領で不動産王のドナルド・トランプが買収。
現在の正式名称は「トランプ・ビル」なのですが、5番街にある「トランプ・タワー」と混同してしまうこと多いので、「40ウォール・ストリート」と呼んだ方がピンとくる、という人も少なくないようです。

クライスラービルとの高さ競争に打ち勝つため、1年足らずの急ピッチで建設されたことでも知られる40ウォール・ストリート。
1929年着工、1930年の4月に完成。
高さ283m、70階建て。
クライスラービルが完成するまでの2か月間だけ、世界一高いビルでした。

このビルの特徴は何といっても緑色に輝く最頂部分。
ビルが高いので肉眼ではよく見えないのが難点ですが、アールデコ調の美しい装飾が息を飲むほど美しい。
望遠が可能なカメラか双眼鏡をお持ちでしたら、是非、最頂部の装飾にも注目してみてください。

高層ビルの代名詞「エンパイアステートビル」

高層ビルの代名詞「エンパイアステートビル」

image by iStockphoto / 72490647

高層ビルにあまり詳しくなくても、エンパイアステートビルなら知っている、という人も多いはず。
ニューヨークのランドマークとしてマンハッタン島のど真ん中にそびえ立つこのビルも、当時はクライスラービルから「世界一高いビル」の座を奪うことを目標として建てられたものでした。

1929年着工、1931年完成。
最頂部までの高さ443m(最上階の高さ373m)、102階建ての巨大高層ビル。
クライスラービルから世界一の称号を奪い、1972年にWTC(ワールドトレードセンター)が完成するまでの40年余りの間、世界一の座を守り続けました。

デザインは1930年代当時流行していたアールデコ様式。
高さ世界一の座を狙って急ピッチで建設が進められましたが、建設途中から世界経済はどん底に。
高層ビル界の大御所も、完成当時はなかなかテナントが埋まらず空き部屋が目立ち、大変苦労したといいます。

世界中にたくさんの高層建造物が建てられるようになった今でも、エンパイアステートビルは特別な存在。
今から80年以上も前に建てられた高層ビルは、今も現役のオフィスビルとして活躍しています。
このビルの魅力は高さ・大きさ・デザインの美しさに加えて展望台があること。
地上320m、86階部分には一般に公開された屋外展望台があり、窓越しではなく、この高さの風や温度を肌で感じながら街並みを見下ろすことができます。
さらに102階部分(地上から381m)にも第二展望台があり、こちらはガラス越しで追加料金が必要ですが、特別な記念日などをここで過ごしたいというニューヨーカーも多いのだそうです。

ニューヨーク高層ビルの歴史(3)1950年~現代

クイズマニアの聖地「メットライフビル」

クイズマニアの聖地「メットライフビル」

image by iStockphoto

ニューヨークと聞くと、1977年から1984年にかけて日本テレビ系列で放送されていた伝説のクイズ番組『アメリカ横断ウルトラクイズ』を思い出す人もいるのではないでしょうか。
そのクイズの決勝の舞台となったのが、パーク街にある高層ビルの屋上。
決勝まで勝ち残った解答者は、ヘリコプターでこの屋上へ降り立ち、最後のクイズに挑みました。
そのビルの名前はメットライフビル。
クイズ放送当時はパンアメリカン航空(パンナム)の本社ビルであり、パンナムビルと呼ばれていました。

1958年着工、1963年完成。
最頂部の高さは246m、59階建て。
向かい側のビルを映し出す鏡のような全面ガラス張りの巨大な建造物で、建物の最頂部が黒くなっていて、「MetLife(パンナム時代にはPANAM)」と大きな文字が入っているところが大きな特徴となっています。

1980年代に入る頃、パンナムの経営は傾きはじめ、本社ビルはメットライフに売却。
1991年には象徴的だった最頂部のPANAMのロゴマークをメットライフに置き換え、ビル名も変更します。
主は変わりましたが、お馴染みの社名入りデザインは健在です。

このビルを堪能するなら、やはりあの社名ロゴマークをしっかり見たいところ。
オススメはエンパイアステートビルの展望台からの眺望です。
ここからなら、メットライフビルの全容を確認することができ、「MetLife」のロゴマークも見ることができます。
エンパイアステートビルの展望台に上がる機会があったら、是非、メットライフビルもチェックしてみてください。

”世界一高い高層ビル”の舞台はニューヨークからアジア・中東へ

”世界一高い高層ビル”の舞台はニューヨークからアジア・中東へ

image by iStockphoto

1972年にWTC(完成当時の高さ:417m)が完成した後も、ニューヨークの高層ビルの建設ラッシュは続きますが、、ニューヨークの「世界一の高さ競争」は一段落。
1974年にシカゴのシアーズ・タワー(現在の名称はウィリス・タワー)に世界一の座を明け渡すと、世界一の高さの競い合いの舞台はアメリカからアジア・中東へと移っていきます。
1998年にはマレーシアのクアラルンプールに高さ452m、88階建ての「ペトロナスツインタワー」が完成。
2004年には台北に高さ509m、101階建ての「台北101」が、そして2010年にドバイのブルジュ・ハリファが誕生し、高さは一気に828mに引き上げられました。

ニューヨークでも、シティスパイア・センター(1987年完成:248m)やワン・ワールドワイド・プラザ(1989年完成:237m)を始め、200mを超える高層ビルが数十棟建てられていて、ビル建設の勢いは衰えていません。
しかし、”世界一の高さ”となると、アジアや中東に大きく水をあけられているのが現状のようです。

現在、サウジアラビアに建設中のビルは、完成すれば高さが1,007mに達するのだとか。
それに続けと中国や韓国、ロシアでも500mを超えるビルの建設が進められていて、「世界の高層ビルランキング」は今後も、アジアと中東が席巻する時代が続きそうです。

新しい歴史を刻む「1 ワールドトレードセンター」

新しい歴史を刻む「1 ワールドトレードセンター」

image by iStockphoto

2001年に発生したアメリカ同時多発テロ事件で崩壊したWTC(ワールドトレードセンター)。
白く輝く巨大な直方体のツインタワーは1972年完成後から長らく、ニューヨークのシンボルとして多くの人々に親しまれてきました。

その跡地となったグラウンド・ゼロでは、高層ビルや商業施設、慰霊場、バスターミナルなどの施設が次々に建設されています。
2014年には、最頂部541m、最上階の高さ415m、104階建ての超高層ビルが完成。
「1 ワールドトレードセンター(ワンワールドトレードセンター)」と名付けられました。
このほかにあと5棟、全部で6棟の高層ビルが建つ予定で、それぞれ「番号 + ワールドトレードセンター」という名称になるそうです。

当初は、復興の推進力にするべく、世界一の高さにする予定だったそうですが、計画が遅れ、ドバイのブルジュ・ハリファが先に完成してしまいます。
世界一の高さにはなりませんでしたが、平和のシンボルとして、ニューヨークの新しいランドマークとして、多くの人々がこの地を訪れることでしょう。

外観は全面ガラス張りで、日の光を反射して鏡のように輝いています。
直方体ではなく、角が斜めにそぎ落とされたような独特の形状をしていて、オフィスビルというよりモニュメントのような出で立ち。
複雑な形状の外壁が青空を映して大変印象的です。

100階から102階までは展望デッキとして一般に開放されているため、連日多くの観光客で賑わっています。
100階部分のメイン展望台は地上から381m。
360度のパノラマビューで、他の高層ビルの展望台ではなかなか見ることのできない、海を行く船の様子も見ることができます。
夜景も絶品。
時間が許せば、日中と夜、両方の景色を堪能したいところです。

100年以上の歴史を誇る「ニューヨークの摩天楼たち」

高層ビルがあれば街の魅力が増す、というわけではありませんが、それでもやはり、高い建物は魅力的です。
ニューヨークの高層ビル建設の歴史は100年以上にもなり、今回ご紹介したビル以外にも、マンハッタン島には歴史ある古い高層ビルがたくさん建っています。
アールデコ調あり、ゴシック調あり、風格漂うニューヨークの歴史ある高層ビル巡りの旅、是非お楽しみください!
photo by iStock