西芳寺には苔寺とも呼ばれる特別名勝の庭園がある。読経や写経で心を静めてから散策しよう

公開日:2019/1/4 更新日:2019/3/26

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東京出身。住んだことのある北海道や栃木の記事を中心に、ライティングしています。写真が好きで、絶景を求めて日本各地を旅しています。

京都の西にある臨済宗の寺院 西芳寺。別名「苔寺」と呼ばれる特別名勝の庭園をもつお寺です。京都といえば秋の紅葉が有名ですが、西芳寺の庭園一杯に広がった苔と紅葉のコントラストの美しさは他では見られないもの。有名な金閣寺、銀閣寺のモデルとなったといわれるともいわれるだけに、見比べてみるのもおすすめです。そんな静寂の中の美を持つ西芳寺 苔寺を紹介します。

世界文化遺産にも登録された

京都市西京区にある臨済宗の寺院 西芳寺。一般的には、美しい苔の庭園が有名で、苔寺(こけでら)と呼ばれています。この西芳寺庭園は、国の特別名勝、史跡に指定され、古都京都の文化財として世界遺産登録がされています。開山は1300年前の奈良時代、行基菩薩によるもの。それ以前には聖徳太子の別荘があったといわれています。

その西芳寺の庭園が、現在の形となったのは、1339年作庭の名手であった高僧夢窓礎石(むそうそせき)が禅寺として再興してから。この庭は後の金閣寺、銀閣寺の建立に大きな影響を与えたといわれています。ただし、庭園に苔が生えたのは江戸時代末期です。

拝観は完全予約制

拝観は完全予約制で、往復はがきでの申し込みのみ。書き方はホームページで詳しい案内がされていますから、拝観希望日の2ヶ月から最低1週間前までに届くよう申し込みましょう。ゴールデンウィークや紅葉シーズンなど、混雑が予想される時期はより早めに送ること。7月から9月は10時より、それ以外の月は13時から、返信ハガキに指定された時間に拝観できます。所要時間は約60分から90分。拝観料は当日に納める形です。

まずは本堂で読経や写経を体験

予約当日、訪れると本堂に案内されます。時間になると、読経、写経、護摩木に願いごとを書く体験ができます。写経は足を崩して行うのも可能ですから、正座に自信がない人でも大丈夫。真夏や真冬など本堂の環境によっては、写経が省略される時期もあります。京都は交通渋滞が起こりやすい観光地。拝観当日は時間に遅れないよう、余裕をもって出掛けましょう。

じっくりと美しい苔の庭を散策

鎌倉時代末期から室町時代初期の禅僧、夢窓礎石が作庭した特別名勝となっている庭園。上段に作庭当時の面影を残す枯山水庭園、下段は木立に囲まれた黄金池(おうごんち)を中心とした、池泉廻遊式庭園です。

苔寺の庭園は広大な敷地

3500平方メートルの広さをもつ西芳寺の庭園。石畳が整備されているため、雨でなければ足下を気にせず散策が可能です。上段の枯山水庭園の石組は、作庭の跡を残しているといわれています。下段の池泉廻遊式庭園の黄金地の周囲にある120種類以上の苔は、夢窓礎石作庭当時にはなかったもの。江戸時代に洪水に見舞われ荒廃したことが苔の庭園を生んだといわれています。

苔の種類は120種。緑の織りなす絶景の庭

一番の見どころは、小さな杉の木のようなスギゴケ、ホソバオキナゴケなど約120種類といわれる苔。ふわふわとした緑のじゅうたんのような苔が広がる景観は、どこを見ても美しく感じます。とくに梅雨時や雨上がりは、緑が映えてひと際、苔の美しさが感じられます。

庭の中心は大きな黄金池

現在見られる二段の庭園となったのは、それまでの浄土式の庭園を夢窓礎石が改修し、禅の理想を表現したもの。その庭園の下段、池泉廻遊式庭園の中心にある黄金池は心字池ともいわれ、少し離れたところから見ると、池が草書体の心の文字をかたどっていることがわかるでしょう。池にある3つの中島には、作庭当初白砂が敷かれ、松の木が植えられていたと伝わっていますが、現在は苔に覆われています。

日本最古の枯山水

庭園上段には、日本最古といわれる枯山水があります。夢窓礎石が、生前の墓を造形化したものともいわれています。当時の庭園は池を中心としたものでしたが、石組を庭の主役とし禅の精神性を取り入れた、当時としては革新的な庭だったそうです。この枯山水庭園の最高峰といわれる庭は、その後作庭の原点にもなり、室町文化に影響を与えたといわれています。

国の重要文化財 湘南亭

国の重要文化財にも指定されているお茶室で、千利休の女婿千少庵(せんのしょうあん)によって建立された湘南亭。千利休が豊臣秀吉から切腹を命じられたとき、隠れ家にしたと伝わる建物です。幕末動乱の際には、岩倉具視もここへ身を隠し、難を逃れたたといわれています。

秋の紅葉シーズンも美しい苔庭

苔の緑と赤や黄色に染まる葉のコントラストが美しい秋、西芳寺は当然紅葉のシーズンも人気となっています。それでなくても京都の紅葉は有名で、どのスポットも混みあいますが、西芳寺は完全予約制。ゆっくりと静寂の中、禅の雰囲気に浸り庭園を散策することができます。紅葉シーズンの秋完全予約制だからこそ、おすすめできる場所です。

1300年の悠久の歴史に思いを馳せる

飛鳥時代には聖徳太子が別荘を置き、自作の阿弥陀如来像が祀られていたというこの地。奈良時代に法相宗の寺院 西芳寺となってから、1300年余り。名を変え、宗派も変わり、洪水や焼失しても何度となく再建され続けた西芳寺。目に見える建物や庭の景観だけでなく、何か人を惹きつけてやまない魅力が、この土地にあったのでしょう。それが今につながっているのです。



時代を超えて大切にされてきた西芳寺

真言宗の開祖空海が一時居住し、その後浄土宗、そして禅宗と宗派を変え、時代が流れても、改修、再建されるなど守り続けられた西芳寺。人々の心のよりどころであり続けた歴史を伝える意味で、自然が偶然造り出した苔の庭が重要な役割を果たしているように見えます。

お手本にされてきた西芳寺の庭園

室町幕府3代将軍足利義満、8代将軍義政も、西芳寺を訪れ座禅を組んでいたといわれています。その後義満が創建した金閣寺、それにならって義政が建立した銀閣寺の庭園は、西芳寺を模したものです。現代では、禅の精神性と庭園の美しさに惹かれ、アップルの創業者故スティーブ・ジョブズもお忍びで家族と来ていたことで知られています。今も昔も変わらない、人を引き寄せる魅力があるのでしょう。

苔が創り出した禅の理想郷

鎌倉時代末期に、夢窓礎石によって作庭された当時の庭は、白砂で覆われていたと伝わっています。その後の戦乱や天災で庭が荒廃したことから、苔が生え始めたといわれています。水害やすぐそばに川が流れている影響だとも考えられていますが、なぜ庭園が今の姿になったのかは、完全に解き明かされていません。ただ、結果的に庭が苔に覆われたことで、禅の目指した静寂の世界を体現するものになりました。夢窓礎石が思いを込めて描き、作り、自然が完成させた傑作といえるでしょう。

西芳寺の人気の御朱印

数年前から火が付き、神社、寺院へ行く際に御朱印帖を持っていく人たちが増えてきました。そんなマニアの人たち垂涎の御朱印が西芳寺のもの。見開きに禅宗を広めた達磨大師の絵が入る、大胆で迫力のある御朱印。拝観料を支払うときにお願いすれば、庭の散策前に受け取ることができます。ただ、この御朱印の墨絵を書ける人は少ないようで、不在の場合は文字のみとなります。もし受け取った御朱印が文字だけだったとしても、それもまた縁だと思うことにしましょう。

西芳寺へのアクセス

車での行き方

京都駅から車で約30分です。西芳寺には駐車場がありませんので、周辺のコインパーキングを利用してください。

バスでの行き方

・京都駅から、京都バス73系統で約60分ほど苔寺・すず虫寺で下車してから徒歩3分。タクシー利用の場合の乗車時間は約30分です。
・嵐山方面からは、京都バス73系統もしくは63系統で約15分ほど苔寺・すず虫寺で下車してから徒歩3分。タクシー利用の場合の乗車時間は約10分です。
・大阪方面からは、阪急電鉄京都線で桂駅で下車、タクシー利用の場合の乗車時間は約12分です。

Address 〒615-8286 京都府京都市西京区松尾神ヶ谷町56
Hours AM10:00~ ※事前申し込みにより拝観時間指定
Closed なし
Tel 075-391-3631
Web http://saihoji-kokedera.com/top.html

まとめ

西芳寺の庭園を見るには、読経、写経という行事に参加しなければなりません。それは禅の教えを受け、心に静けさを宿した後で見てこそ、苔寺の美しい庭園の意味がわかるからなのでしょう。ただ単にきれいなだけではなく、深い意味を持つ庭園。禅の静寂の中で、じっくり味わってみてください。