玉泉院丸庭園で江戸時代の金沢城へタイムスリップ

公開日:2019/2/12 更新日:2019/5/17

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出身地は石川県。縁あって、奈良・京都・大阪・石川・静岡と住んでいたため、関西と北陸と静岡東部を中心に紹介できます。主に、史跡・城郭・神社仏閣ときどきグルメと温泉と・・・いうバランスで旅行プランを組むのが好き。動物と触れ合えるスポットにも出没します。旅行者目線で、実際に体験したことを伝えていけたら嬉しいです。
お抹茶を頂きながら楽しみ味わう日本庭園の美

北陸地方最大都市の石川県金沢市。時代劇ファンご存知の戦国武将 前田利家が礎となって築いた、加賀百万石の地にふさわしい華やかな街です。そして歴史を受け継いだ藩主が、それぞれのこだわりを持って手を入れた庭こそ玉泉院丸庭園。今、歴史の彼方から平成の世によみがえりました。

発掘調査を基に再現された江戸時代の庭園

玉泉院丸庭園ってどんな所なのか

ここにはかつて、織田信長の四女で加賀藩2代目藩主 前田利長の妻となった永姫が邸宅を構えていました。利長と永姫の間には子供がいなかったため、養子となっていた弟の利常が利長の死後に3代目藩主を継ぎます。そして永姫自らも剃髪して玉泉院と称したのです。1623年に玉泉院は亡くなり邸宅は撤去されましたが、この地は彼女にちなみ玉泉院丸と呼ばれるようになります。

その後、3代目藩主となった利常によって庭園の造成が開始され、5代目藩主 綱紀など歴代藩主によって手を加えられました。明治時代に廃藩となるまで大名庭園として存在しましたが、時代を経て平成の世に大規模な発掘や整備事業が行われ、現在に至っています。

要人をもてなす饗応の場として豪華に造られた兼六園とはちがい、こちらは建物に囲まれた静かな内庭。前田利常の命によって整備された辰巳用水が引かれるなど高度な技術がいたる所に採用され、池泉回遊式庭園の優雅なたたずまいが味わえるでしょう。入場無料で自由に散策できます。

歴代藩主も喜ぶであろう庭園復活

2008年から5年間の発掘調査だけでなく現在に伝えられる絵図や文献など多くの資料から、江戸時代当時の姿を復元するための綿密な設計が行われました。これをもとに2013年には貴重な遺構を後世に伝える整備工事が着工されます。そして2015年3月には歴代加賀藩主やその家族も鑑賞したであろう、美しい庭園の姿として復活したのです。

玉泉院丸庭園として新しく復元されても、江戸時代当時にあった実際の遺構は一切傷つけられることなく庭園の下で静かに眠っています。詳細は園内休憩所内のパネルで紹介されている他、常駐しているボランティアガイドの説明を聴いてみるのもいいでしょう。

よみがえった江戸時代の庭園美

段落ちの滝は小さいながらも迫力あり

この滝は発掘調査の際に確認された計4段からなる滝で、江戸時代の遺構を守るため盛り土をした上に石組と滝を復元したのです。小規模ながらも大きな飛沫を上げて落ちる滝は、あたかも山間を流れ落ちてくるかのように感じられ、巧みな石の配置が景観を引き立たせるでしょう。

文芸に優れた歴代藩主のこだわり

造園を指揮した3代目藩主の前田利常は加賀ルネサンスと呼ばれる金沢文化の礎を築いた人物。利常の教育を受けた5代目藩主の前田綱紀は文芸分野に優れた才能を発揮し、江戸幕府の重職を担った新井白石から加賀藩は天下の書府と讃えられました。文化に秀でた両藩主がどのように庭園を整備したのか、想像すれば新たな歴史への関心がおきるでしょう。

色紙短冊積み石垣

ここは金沢市東部の山で採取された戸室石を、細長く切り段違いに組み合わせた色紙短冊積み石垣で、園内で最も目立つ場所です。同じく市内坪野町で採取された坪野石でV字型の石樋が作られ江戸時代には滝がありました。しかし現在は水はなく石垣そのものが存分に鑑賞できるでしょう。

金沢城は石垣の大学と呼ばれるほど、各時代の形式が残されたさまざまな石垣を見られることで有名。とりわけ玉泉院丸庭園の石垣は鑑賞を前提としているため、他の石垣とは異なる趣の設計が施されています。形や色合いがちがう石材を使用しているのもまた興味深いでしょう。

石垣が夜空に映えるビッグイベント

ライトアップと音楽で庭園は昼間とちがう世界に

玉泉院丸庭園では毎週金曜日と土日祝日の前日・イベント開催日の日没から21時までの間にライトアップが行われます。設定されているのは夕焼けから宵さらに月見となる庭の変化と、それぞれの季節を表現する2通りのテーマ。これとともにライトのカラーが変化してゆくという演出なのです。

時期が3月から5月であれば春と桜、6月から8月であれば夏と祭り、9月から11月であれば秋と名月、12月から2月であれば冬と新年など、季節ごとのテーマに沿い和楽器演奏のBGMが盛り上げてくれるでしょう。石垣のスクリーンに映える夜のビッグイベント、幻想的な雰囲気の庭園はおすすめの光景です。



訪れたくなる金沢の四季の移ろい

春はアセビやシャクナゲの白に桜のピンクが満開となり、金沢城公園や兼六園のような華やかこそ少ないものの、落ち着いた庭園の風情がそこにあります。夏はモミジをはじめとする木々の青葉と芝生の緑に、菖蒲の紫と白が加わってさらに生き生きとした風景が広がるでしょう。

秋はあふれてくるかのような紅葉と石垣との対照が美しく映え、冬は何といっても一面の雪景色と、金沢名物の雪吊りが施された松が見事でしょう。他の季節は木々の葉で隠されていた石垣部分も姿を現し、重要文化財に指定される三十間長屋の眺めに寒椿や梅の花が彩りを添えて、一段と金沢城らしい景色になります。

お茶と菓子とトイレも雅

茶室で抹茶を頂ける数少ない機会

こちらは庭園内にある玉泉庵。こけら葺き屋根の木造平屋建築内には休憩所と茶室とが別個に設けられており、中央部分には案内所が設置されています。こちらにはボランティアガイドが常駐しており、庭園や順路について尋ねることもできるでしょう。ここは江戸時代に庭園を整備管理する露地役所があった場所、そのためか非常に眺めがよく特等席のような気分になれます。

玉泉庵茶室では年末年始(12月29日から1月31日)の休館日を除き、庭園を眺めながら有料で抹茶と和菓子が頂けます。時間帯は9時00分から12時00分と13時00分から16時30分(受付は16時00分まで)で、ご希望であれば受付にて手続きをすませましょう。

出される和菓子や茶器にも注目

茶室のお座敷から眺める庭園は、立って眺める景色とはまたちがった風情があるでしょう。味わい深い抹茶とともに出されるのは、金沢の和菓子名店 金沢うら田が、ここ玉泉庵だけのオリジナルとして提供する特製和菓子です。季節を巧みに表現した繊細で美しい和菓子はどれも逸品。

金沢うら田の店舗は、ここから程近い大型デパート、香林坊大和の地下1階など市内に数ヶ所ありますが、玉泉庵オリジナルという和菓子のためなかなかお目にかかれないでしょう。しかし金沢のおみやげには、金沢うら田のお菓子はぜひおすすめです。また受付の際に希望すれば、石川県観光PRゆるキャラのひゃくまんさんがデザインされた特性茶碗で、抹茶を頂くこともできますよ。

Address 〒921-8021 石川県金沢市御影町21-14
Hours 9:00-18:00(日曜日のみ17:00)
Closed 元日と1月2日
Tel 076-243-1719
Web https://www.urata-k.co.jp

金沢伝統工芸に彩られた名トイレ

玉泉庵の正面には自動販売機と簡易休憩所、そして公衆トイレが隣接されており、男性用・女性用・多目的用の3つがありますが、このトイレも玉泉院丸庭園らしく風情があります。何と内壁タイルには金沢伝統工芸の九谷焼が使用されており、5色によるあざやかな九谷五彩がトイレ内だけでなく、案内板にまでデザインされているのです。これだけ趣のあるトイレは全国でも珍しいでしょう。

玉泉院丸庭園へのアクセス

バスでの行き方

バスを利用ならば、金沢駅前東口乗り場から北陸鉄道バスの兼六園・金沢城・金沢大学方面行きに乗車し、約5分の南町・尾山神社(徒歩約800m)、約10分の香林坊(徒歩約520m)、約12分の広坂・21世紀美術館(徒歩約400m)の各バス停で下車。徒歩はいずれも金沢城玉泉院丸口までの距離です。

車での行き方

車を利用ならば、北陸自動車道の金沢森本インターチェンジから国道159号線と157号線を経由し約20分。同じく金沢西インターチェンジから県道25号線と国道157号線を経由し約30分の距離ですが、駐車場は障害者専用駐車場以外になく、近隣の兼六園または周辺の有料駐車場を利用することになります。

Address 〒920-0937 石川県金沢市丸の内3
Hours 9:00-18:00(ライトアップやイベント時は変更)
Closed 年中無休
Tel 076-234-3800
Web https://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/kanazawajou/gyokusen-in/index.html

まとめ

綿密な研究と計画によって行われた発掘調査と復元工事で、平成の世によみがえった玉泉院丸庭園。金沢を訪れる多くの人の目は兼六園に向けられがちですが、ここは静かで穏やかな空気が流れる癒しの世界。ライトアップされた華やかな石垣も忘れられない、何度も足を運んでみたくなる庭園でしょう。