志賀直哉旧居は和洋折衷モダン邸宅。文豪の生活に思いを馳せよう

公開日:2019/3/25 更新日:2019/8/15

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静岡県出身、歴史好きが高じて奈良県に移住しました。奈良県の記事をメインで書いています。旅行は家族で出かけることが多いです。神社仏閣の紹介が得意です。散歩や食べ歩きが趣味で、カメラを片手に日々新たな撮影スポットやおいしいお店を探しています。
別名「高畑サロン」こんなハイカラでかっこいい家住んでみたいわ~

志賀直哉旧居は奈良県奈良市高畑町にある文学館で、白樺派の小説家・志賀直哉の旧居です。彼自身が設計した数奇屋造りと西洋建築を融合した建物は、和洋折衷のモダンな造りを随所に散りばめた建築としても見どころの多い場所。

純文学に興味がある人はもちろん、建築ファンや昭和初期のモダン文化に興味がある人にもおすすめしたいスポットです。

志賀直哉旧居とは


春日山の原始林や飛火野に近い奈良市内の高畑エリアにあり、風光明媚で静かな屋敷町に建つ志賀直哉旧居。文豪、志賀直哉が家族と共に昭和4年から9年間過ごした邸宅で、志賀直哉自身が設計しました。ならまちや有名な神社仏閣とも近いので、奈良中心部の観光時にあわせて立ち寄りたい場所です。

伝統的な数奇屋造りと西洋建築を融合した造りの建物は昭和初期には最先端であった和洋折衷のモダン住宅。志賀直哉の住まいですが、白樺派の文化人が多く集い当時高畑サロンと呼ばれていました。ここは奈良における文人文化を今に伝える貴重な場所となっています。

志賀直哉旧居の見どころ

高畑サロンのシンボル、サンルーム


昭和初期の最先端デザイン住宅であった志賀直哉旧居。高畑サロンのシンボルだった約7.45坪のサンルームは建物内で一番の見どころです。天井が高く大きく明るいガラス張りの天窓がありとてもモダンで明るい雰囲気です。

サンルームに敷き詰められているのはタイルのように見えますが、実は特注の瓦。置かれているデザイン性の高いイスに腰かければ、当時の文化人が芸術や文化を論じ、談笑する華やかな様子が容易に想像できるでしょう。

プールのある最先端の庭園


サンルームと家族の部屋にある広縁から出られる庭園には、思わず走りたくなる広々とした芝生が広がっています。その端の方には、志賀直哉が子供のために造った細長いプールが。こちらは当時はとても珍しいものだったようです。

西洋文化を取り入れた昭和初期のモダンな意匠が随所に見られるこちらの洋風庭園。芝生にテーブルとイスが置かれているので、ぜひ座って美しい建物全体を見渡してみてくださいね。

モダンな食堂は団らんの場


サンルームに隣接した食堂はかなり広く、10人掛けの大きなテーブルにイスとオシャレな革張りのソファが置かれています。自由に腰かける事ができるので、ぜひ座って写真撮影を楽しんでくださいね。

サンルームから光が入る明るい部屋を、志賀直哉は単なる食堂ではなく団らんの場となるようにと設計。中央が球面になった洋風な漆喰の天井に和風の行灯型照明を吊すという斬新な造りはサンルーム同様和洋折衷の美しさが魅力です。今見てもレトロモダンでおしゃれですよ。

復元された当時の台所


台所のすぐ横には女中部屋があり、多くの女中が働く様子を写真で展示。当時の上流階級の暮らしぶりがうかがえます台所と食堂の間には食膳をやりとりする棚が設けられており、こちらは合理性に優れた設計となっています。

台所は志賀直哉の退去後、床、壁、天井すべてが造り替えられてしまいました。しかし平成の修復工事の際、志賀直哉が暮らしていた当時の様子がを復元。再現された氷冷式冷蔵庫も見物です。

純和風の中庭と廊下


飛び石と苔が印象的な中庭は純和風の庭園。茶室から食堂まで飛び石を渡って移動する事ができるので、中庭散策も楽しんでみましょう。その中庭をぐるりと囲む廊下は縁側としても楽しめ移動もしやすく、とても機能的な造り。

純和風な中庭に対し廊下の室内側の壁は薄いブルーの浅葱色(あさぎいろ)で仕上げられており、モダンでおしゃれな雰囲気になっているのでこちらも要チェックです。

庭園から眺めても絵になる2階部分


志賀直哉が設計したこの邸宅は和洋折衷ですが基本は伝統的な数奇屋造りです。客間と志賀直哉の書斎のある2階部分は、障子や畳が美しい純日本的な建築。庭園の池のあたりから眺めても美しいですよ。建具など細部も美しいので注目してみてください。

廊下や部屋の窓越しから見る庭園も美しくなるよう計算して設計されています。その構造からも当時の建築技術の高さをうかがい知る事ができます。



2階部分の客間で客人気分を味わおう


客をもてなすのに適した落ち着いた場所にある2階の客室は、低い位置に窓があるので桟に腰かけて外を眺める事ができます。その窓から見える庭園の池は最高の眺望をもたらし、客人たちに癒しをもたらしました。ぜひ桟に腰かけて、風流人の気分を味わってください。こちらで写真撮影もおすすめですよ。

客間には谷崎潤一郎が購入し志賀直哉に譲ったとされる観音像が置かれていましたが、現在、観音像はなく写真が置かれています。

多くの名作が生まれた書斎


1階と2階にそれぞれ書斎があり、1階は板張りの部屋に重厚なテーブルとモケットのイスのあるレトロモダンな洋風な造りで、2階は純和室の造り。この書斎で「暗夜行路」や「晩秋」など多くの作品をここで書き上げました。特に一階の洋風の書斎は今見てもおしゃれな造りなので、必見です。

書斎にある大きな窓から見える美しい庭の眺めが、志賀直哉の創作活動に大きな影響を与えたのではないかと感じる事ができますよ。

本格的な造りの茶室


志賀直哉はお茶をたしなんではおらず、将棋を指したりごろごろするための日本間を希望。しかし裏千家関係の大工、下嶋松之助の熱望で本格的な茶室が造られました。のちに興福寺の僧侶を師匠に、奥さんと3人の娘がお茶の稽古をする茶室としてしっかり使われたようです。

茶室からは食堂などにつながる中庭がよく見え、直接庭に出る事もできます。茶室は天井が低いのであまり広い空間ではありませんが、中庭とのつながりや志賀直哉自身が選んだ茶花と掛け軸などの効果で広く感じます。畳に座って茶室空間と庭園を眺め、志賀直哉と同じ目線を楽しんでくださいね。

風呂と洗面所


風呂の横にはタイル張りの大きな洗面所と畳の脱衣室が。広々としていて、台所同様当時の裕福な家庭の雰囲気が伝わってきます。湯船は五右衛門風呂ですが、上部が木製で角型なので豪華な檜風呂のようにも見えます。水の出るシャワーも設置されていますよ。当時としては豪華で大変珍しい造りなのでお見逃しなく。

風呂や洗面所周辺は台所と同じく志賀直哉退去後に改装されていたものを平成の修復工事の際、資料や子孫の話を元に復元したものです。

家族と過ごした大広間と子供部屋


食堂の横にある畳張りの広間は襖で仕切れるようになっており、家族のための居間として使われていました。この居間は子供の寝室や勉強部屋とも隣接していることからも、志賀直哉が子供にとりわけ目をかけていたことがわかります。

子供部屋に取り付けられている窓は志賀直哉の窓といわれ、光を入れるためではなく開けると子供の顔が見えるという親子の交流のための窓で、心の窓ともいわれています。こちらからも志賀直哉の子煩悩ぶりがうかがえますね。

石畳の道と庭園


サンルーム側の芝生の庭園から入口側にある庭園までは美しい石畳でつながっていて歩く事ができます。石畳沿いには中庭と同じくきれいな苔が生え、四季折々の草花が楽しみながら散策可能。石畳を進んだ先にある池では初夏になると水蓮の花が咲き、池の周りを散歩するときの楽しみの1つとなっています。

志賀直哉旧居へのアクセス



電車・バスでのアクセス

電車での最寄り駅は近鉄奈良駅またはJR奈良駅になります。そこから市内循環バスに約10分乗車し、破石町バス停にて下車。東に約6分ほど歩くと志賀直哉旧居です。バス停からは数分ですが、住宅街の中を歩くので迷わないように注意しましょう。

車でのアクセス

大阪方面からの場合、第二阪奈有料道路宝来ICを下車し、国道308号線から阪奈道路に進み奈良公園に入ります。京都方面からの場合は、京奈和自動車道木津ICを下車し、奈良バイパス(国道24号線)を進み奈良公園に入ります。

専用駐車場はないので、周辺の有料駐車場を利用しましょう。県営高畑駐車場が最寄の駐車場となります。

Address 〒630-8301 奈良県奈良市高畑町1237-2
Hours AM9:30~PM5:00(11~3月)、AM9:30~PM5:30(4~10月)
Closed なし、年末年始は休み
Tel 0742-26-6490
Web http://www.naragakuen.jp/sgnoy/

まとめ

志賀直哉自身が設計し細部にまでこだわった旧居は、平成の修復工事で当時の様子が復元されました。ここでは「暗夜行路」をはじめとする名作が生まれた文化的な一面と、子供たちに対する父親としての愛情あふれる一面が垣間見られます。

当時の文化人が集った華やかな高畑サロンとしての雰囲気も感じる事もできるでしょう。近代的でモダンな建物と自然と調和し静かな趣を醸し出す庭園などから、文人、志賀直哉の人間性にふれることができる場所となっています。