あえて修復せずに、内戦の傷跡伝える…クロアチアにある「聖ヤコブ大聖堂」

wondertripでは世界の絶景を紹介していますが、歴史地区や古代都市などの絶景スポットは、その歴史を少しでも知ることでより観光が楽しめます。今にも残る世界遺産のストーリーは、知識欲も刺激されますね。本日はクロアチアの「シベニクの聖ヤコブ大聖堂」をご紹介します。

シベニクの聖ヤコブ大聖堂ってこんなところ

聖ヤコブ大聖堂の住所・アクセスや営業時間など

名称 聖ヤコブ大聖堂
住所 Trg Republike Hrvatske, 22000, Šibenik,
営業時間・開場時間 現地時間9:30-19:30
利用料金や入場料 15クーナ
参考サイト https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%99%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%81%AE%E8%81%96%E3%83%A4%E3%82%B3%E3%83%96%E5%A4%A7%E8%81%96%E5%A0%82
最新情報は必ずリンク先をご確認ください。

シベニクとその歴史

クロアチア南西部、アドリア海に注ぐクルカ川の河口に位置する街シベニクは、ダルマチア地方と呼ばれるアドリア海東沿岸地方で最も古い都市です。
同時に交通や貿易の拠点でもありました。

1066年にシベニクという名前が歴史に登場し、その後はヴェネツィア、ハプスブルク帝国の支配下を経てユーゴスラヴィアの一部となり、クロアチアの独立と共にその一都市となりました。
16~17世紀にかけて要塞化が進み、今もそれが残されています。

約1000年に及ぶ長い歴史を誇り、中世の街並みを色濃く残すこの街にはたくさんの教会があります。
その中でも16世紀に完成した聖ヤコブ大聖堂は、世界遺産に登録されています。

シベニクの聖ヤコブ大聖堂

シベニク旧市街の広場にあり、市庁舎と向かい合っている聖ヤコブ大聖堂。
その建設が始まったのは1431年のことです。
完成までには約100年を要しましたが、これは戦争や建築家の交代などの要因が重なったためでもありました。
白い石灰岩の建物は、レンガと木の補助材をいっさい使わず建てられた石造建築の教会として世界一大きなものです。

建設に関わる人々の出身が様々であったため、大聖堂の建築様式も北イタリア地方やダルマチア地方、トスカーナ地方などの雰囲気をそれぞれ残しつつ調和を見せています。
ドーム部分はフィレンツェの大聖堂の雰囲気があるルネサンス様式で、洗礼堂天井部分の彫刻の見事さは最も有名です。

建築家「ダルマチアのジョルジョ・オルシーニ」

大聖堂の建築家として最も有名なのが、1475年まで建設を担当したダルマチアのジョルジョ・オルシーニです。
別名ユーライ・ダルマティナツとも呼ばれます。

当時、イタリアですでに活躍していたオルシーニはこの大聖堂の建設を請け負いました。
彼は彫刻家としての技もふるい、洗礼堂の天井や大聖堂北側のドアの両端を守るライオン像、その上のアダムとイヴの像も手掛けています。

また、彼は大聖堂の壁に市民71人の顔を彫りつけました。
これは大聖堂建設に貢献した人々の顔だと言われており、実に個性豊かな表情をしています。

しかし彼は大聖堂の完成を見ずに亡くなり、建設はフィレンツェのニッコロに受け継がれたのです。

内戦の中で

旧ユーゴスラヴィア領で現在はクロアチア領となったシベニクは、20世紀後半のユーゴスラヴィア内戦に巻き込まれてしまいました。
被害を受けた街の建物の中には、大聖堂も含まれていたのです。

ドーム部分は砲撃にさらされ、破壊されてしまいました。
しかし現在は修復されています。
中から見上げてみると、少し色の違う部分があるので、そこが修復箇所だとわかります。

また、ライオン像とアダムとイヴ像がある北側の「楽園の入口」には、銃弾の痕が生々しく残されています。
これはあえて修復せず、当時の内戦の爪痕を残しておくのだそうです。
今の平和な街の様子を見ると、それがどんなに辛い歴史の上に築かれてきたか実感します。

シベニクの街を歩けば

シベニクの街中には、聖ヤコブ大聖堂の他にも多くの教会が建てられています。
15世紀に建てられた鐘楼のある聖イヴァン教会や、24時間時計が壁に設置された聖バルバラ教会など、見学ポイントがいくつもあります。

また、小高い丘の上から街を見下ろす聖ミカエル要塞に登ってみれば、真っ青なアドリア海の美しさを一望できるでしょう。

ところで、旧市街の狭い道には、とても低い位置に石のお皿が設置されています。
これは犬や猫たちの水飲み場だそうですよ。
実際、シベニクをはじめクロアチアの街では猫をたくさん見かけます。
ちなみに、ダルマチア地方の「ダルマチア」、これは犬のダルメシアンの語源となっています。

壮大な歴史を感じて旅をしよう

いかがでしたか。
ただ息を呑む絶景に心焦がすだけではなく、その背景にある歴史を簡単にでも理解することで、世界遺産巡りはより楽しくなります。
「シベニクの聖ヤコブ大聖堂」への渡航をぜひご検討ください。
photo by iStock