あらすじ――『源氏物語』

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五歳年上の女御・藤壺の宮。
義理の母に禁断の恋をした光源氏。
元服と同時に娶った正妻・葵の上は尊貴かつ堅苦しい女性。
藤壺の宮の面影を探して恋をあさる人生がはじまります。
たおやかでやさしい夕顔と恋に落ちますが、夕顔・葵の上ともに、愛人にしていた六条の御息所の生霊に祟られて亡くなってしまいます。
痛手を受けた光源氏の前にあらわれたのは、藤壺の宮そっくりの面影を宿した少女・紫の上。
のちに彼女は光源氏最愛の妻として一生をともにすることになります。
しかし光源氏は兄帝の寵妃・朧月夜と密通し、遠く須磨、そして明石に流離います。
そこで出会った運命の女人・明石の君。
身分が低いながらも美しく完璧な貴婦人の明石の君は、光源氏の姫君を産み落とします。
京の都へ戻った光源氏は夕顔の娘・玉鬘を養女にします。
かつてのやさしい夕顔の面影を見て、若々しい玉鬘に恋慕する光源氏。
藤壺の宮との不義の子・冷泉帝は帝位につき、息子・夕霧は結婚。
娘・明石の姫君は東宮(皇太子)に入内(じゅだい。
嫁入りすること)。
准太上天皇まで位を進めた光源氏は、すべてが成就して幸福この上ないかと思われました。
しかし身分相応の妻として娶った女三の宮の降嫁により紫の上は正妻の地位を追われ、それによって光源氏の苦悩も深まっていくのです……。
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あなたはどの人物に感情移入する?

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なぜってこの物語はとにかく登場人物が多い!光源氏と近しい主要人物な女性登場人物だけで17人います。
有名どころだと紫の上、藤壺の宮、夕顔、六条の御息所、明石の君……。
どの女性も魅力的ですが、あなたは誰に感情移入しますか?
代表格は、紫の上と明石の君。
明石の君は、神から定められた宿運により光源氏と結ばれ、現地妻で終わるはずだったのが子供まで宿した超強運の持ち主です。
身分は低いながらも、美貌才能心ばえ、すべてを兼ね備えたハイスペ女子。
結婚を夢見る女の子はまず明石の君に感情移入するはず。
そしてパートナーを見つけたあとは、紫の上の愛と苦しみに共感できる部分が多くなるのでは。
何があろうとこの人を自分の片割れとして愛し歩んでいく……そんなときに紫の上の姿を頭に思い浮かべると、勇気をもらえます。
完璧な女性でありながら「2番目」に甘んじなければならない六条の御息所には、たとえば不倫中の女性が感情移入しちゃうかもしれません。
「どうせキレイじゃないわたしなんて……」というあなたには、光源氏に忘れられても何年も待ちつづけ、その甲斐あって光源氏にふたたび愛されたブス女の代名詞・末摘花、そしてかならずしも見目麗しくないのに、やさしくなつかしい心を持ち、家事スキルパーフェクトゆえに生涯の伴侶と光源氏が選んだ1人・花散里にパワーをもらえますよ。
「光源氏サイアク男」説に反論!
しかし「光源氏」を免罪符に使う世の浮気男のみなさま、しばしお待ちを。
光源氏は歴史上まれに見るチートハイスペック男子。
皇子様でイケメン金持ち、やさしくて思いやりがあり、作中で何度も登場人物たちが語るとおり「光源氏がその場にいるだけで幸せになる」オーラを振りまくのです。
ましてや時代は一夫多妻の平安時代。
もう、しかたないですよ。
光源氏は35歳のころに〈六条院〉と呼ばれる邸を造ります。
そこにはなんと!これまで関係した女性をみーんな住まわせて、死ぬまで面倒見たのです。
お手つきになった女房も含めると相当数にのぼります。
そこまでの甲斐性がある男はなかなかいないもの。
光源氏、なかなかやってくれる男です。
浮気するなら、相手の女の一生を最後まで面倒見る覚悟でいたいものですね。
恋したい!結婚したい!ならばココを読むべし!
結婚に行き着くことができたのも『源氏物語』のおかげです。
まずは『帚木』の帖にある有名な「雨夜の品定め」。
結婚するならどんな女がいい?ということを若き貴公子たちがダベる男子会です。
やさしいだけの女はダメ、ほんのちょっと嫉妬してくれるくらいがちょうどいい。
家事はできなきゃダメだよね。
家に帰ったらちょっと薄化粧をして多少はおしゃれして、仕事の話をウンウンと話を聞いてくれる。
……そんな妻がほしい!と。
現代の男性にも通じるものがあるのでは?
次いで『藤のうら葉』において、息子・夕霧に語り聞かせる「男の幸せ結婚術」。
理想の人が見つからない?しかし高望みしてもチャンスを逃がすだけ。
「なんか違う!」と思う女性と結婚したとしても、妻の親への思いやりとして大切にあつかうことだ。
多少の我慢をしても、自分にも相手にもよいように添い遂げるべし、と光源氏は説くのです。
かなり役立つことを言ってると思いませんか?ほかにも『夕霧』の帖にある「女の嫉妬対処法」なども必見。
恋は「前世の因果」、ふしぎ極まりない力
そう、恋愛は前世からの因縁、ふしぎなご縁なのでしょう。
恋したことがある人なら承知のとおり、その引力には逆らえません。
しかしそれゆえに多くの苦しみや悲しみが生み出されます。
『若菜』の帖以降は日本文化のベースともなった「もののあはれ」全開です。
高貴な正妻として女三の宮を迎えた光源氏は、手痛い裏切りを体験します。
紫の上を苦しめた恋の因果。
そして両親、保護者、恋人など多くの大切な人を見送った生死の因果。
その大きな力の前に、みずからがしてきた選択に、光源氏は無力を痛感します。
自分をとりまく、大きな流れ。
恋に苦しみ、愛に生き、晩年には自らの片割れであった最愛の人を喪った光源氏は栄光の中で、一体何を見出すのでしょうか。
光源氏の人生を通じて私たちは、生きることの美しさ、尊さ、そして無力さを体験するのです。
1000年の時のかなたから、光源氏が伝えること
『源氏物語』には数多くの現代語訳が出ていますが、そのうちでも与謝野晶子訳は青空文庫やKindleにて無料で読むことができます。
谷崎潤一郎訳も著作権が切れたのでじきに無料配布されるでしょう。
訳によってまったく異なる文章・情緒のあるのを楽しむのも『源氏物語』の愉しさの1つです。
また入門書としては大和和紀の漫画『あさきゆめみし』がイチオシ。
ぜひともこの機会に日本の古典の最高傑作に触れてみてください。