世界遺産・知床半島!洋上から見る秘境と野生動物たち

札幌在住のネイチャー系文筆家・写真家の吉田匡和です。今回は、日本有数の自然を有する「知床半島」を旅してきました。知床の雄大さを感じるためには、海洋に出るのが一番。

さあ、野生の動物たちを求めてネイチャークルーズに出発しましょう!

自然保護と観光客

98942:自然保護と観光客

撮影/吉田匡和

知床半島は、道東の斜里町と羅臼町にまたがる長さ約70㎞の半島です。
以前は秘境や最果てといったイメージでしたが、2005年に世界遺産への登録が決定すると、その豊かな自然が注目されました。

そのため観光客が増加。
「集客」と「自然保護」の両立や、危険防止の対策として、カムイワッカの滝(温泉が流れる滝)や、知床五胡に立ち入り規制を設けるなど、対策が取られています。

知床半島最初のスポット

98943:知床半島最初のスポット

撮影/吉田匡和

北側の斜里町から、半島を横切ってネイチャークルーズの発着地となる羅臼町を目指します。
青空にそびえるのは、標高1547mの斜里岳。
「斜里(しゃり)」とは、アイヌ語で「葦の生えた湿地」という意味です。
優雅なシルエットが美しいですね。

オシンコシンの滝

98944:オシンコシンの滝

撮影/吉田匡和

国道が内陸から海へと変わると、知床半島突入です。

標高70mから豪快に水を落とす「オシンコシンの滝」が見えてきました。
アイヌ語の「川下にエゾマツが群生するところ」という意味を持つ、「オ・シュンク・ウシ」から転じているそうです。

ブニウ岬

98945:ブニウ岬

撮影/吉田匡和

さらに進むと、温泉ホテルが立ち並び、知床五胡やカムイワッカの滝にも近く、観光船もたくさん出港する「ウトロ」という街に出ます。

ブニウ岬の美しさに、バイクを止めて、しばし見入ってしまいました。

ライダー憧れの「知床横断道路」

98946:ライダー憧れの「知床横断道路」

撮影/吉田匡和

ツーリング雑誌の、「一度は走ってみたい道路」や「絶景道路」などの特集で必ず上位にランクインするのが、ウトロと羅臼を結ぶ「知床横断道路」です。
まずはエゾシカに迎えられました。

ここは彼らのホーム

98947:ここは彼らのホーム

撮影/吉田匡和

車が通っても逃げる様子はありません。
それもそのはず、ここは彼らにとってホームなのですから。
人間のほうが遠慮しなくてはなりませんね。

この道には大自然を横切る高揚感がある

98948:この道には大自然を横切る高揚感がある

撮影/吉田匡和

徐々に標高が増し、高さ1661mの羅臼岳が近づいてきます。
見渡す限りの絶景、大自然を横切る高揚感、心地よいワインディング、どれをとっても走る者に喜びを与えることは、間違いありません。

「ライダーハウスお気軽屋」に宿泊

98949:「ライダーハウスお気軽屋」に宿泊

撮影/吉田匡和

この日は、羅臼市街地に近いライダーハウス「お気軽屋」に宿泊。
一般向けの旅行サイトで、ライダーハウスを紹介することはないと思いますので、そのシステムを紹介します。

バイクや自転車で旅をする人のための簡易宿

98972:バイクや自転車で旅をする人のための簡易宿

撮影/吉田匡和

基本的に、バイクや自転車で旅をする人のための簡易宿です。
飲食店や個人が、空室を安価で開放し、「よろしかったら、食堂でご飯を食べてね」という、WIN-WINな関係に基づき経営されています。

また料金を少し高く設定して、純粋に宿として経営しているところもあります。

大部屋に雑魚寝が基本

98950:大部屋に雑魚寝が基本

撮影/吉田匡和

1980年代にバイクブームが起き、北海道を旅行する若者のために開設されたのがライダーハウスの始まりです。
大部屋に雑魚寝が基本ですが、個室や女性専用室を設けるなど、その形態は多種多様。

今や時代は流れ、バイクに乗るのは中高年ばかり。
盆栽のごとく枯れた趣味になってしまいました(涙)

旅に乾杯!

98951:旅に乾杯!

撮影/吉田匡和

この日の宿泊者は、私と東京から50ccのスーパーカブで旅行するライダーのふたり。
「これまで務めた会社を辞めて、飲食店を開業するためにスリランカに渡って修行する予定なのだとか。

知らない者同士がバイクを通じて交流し、お酒を飲みながらこんな話ができるのが、ライダーハウスの良さだと思います。

野生動物を求めて海洋へ

98952:野生動物を求めて海洋へ

撮影/吉田匡和

本日も晴天!旅立つスーパーカブを見送り、クルージングの手続きに向かいます。

今回利用するのは、知床ネイチャークルーズ。
もとはイカ釣り船の漁師だった方が心機一転、2006年に創業した会社です。
最初は「漁師が何をやっているんだ」といわれたそうですが、今は「いい時に漁師を辞めたな」といわれるのだとか。
時代を読む感覚の賜物ですね。

98953:

撮影/吉田匡和

たくさんの人を乗せて、9時に出航!

羅臼の海は、国後島が正面にあるため比較的穏やかといわれていますが、今日はまったく波はなし。
最高の凪です。

波がないということは、動物たちの存在が発見しやすいということ。
ネイチャーガイドが早速発見してくれましたよ。

イシイルカ

98954:イシイルカ

撮影/吉田匡和

背中が黒く、おなかが白いので一見シャチのようですが、これはイシイルカです。
まず水族館ではお目にかかれないですし、ジャンプもしません。
ネズミイルカ科の中では大きく、全長は2~3mほどになります。

ハシボソミズナギドリ

98955:ハシボソミズナギドリ

撮影/吉田匡和

沖合に出ると、無数の鳥の群れに出くわしました。
陸上から見ることはまず不可能。
超レアな鳥たちです。

この群れはハシボソミズナギドリといい、オーストラリアのタスマニア島周辺で繁殖。
4月から7月くらいまで羅臼で過ごします。

助走をつけないと飛べません!

98958:助走をつけないと飛べません!

撮影/吉田匡和

沖合の鳥たちは水の上を滑走して飛び立ちます。
カラスやスズメがヘリコプターなら、彼らはまるで飛行機のよう。
98973:

撮影/吉田匡和

凄まじい羽音を立てて、一斉に逃げるハシボソミズナギドリの足跡が、水面に黒く残ります。

コアホウドリ

98957:コアホウドリ

撮影/吉田匡和

これも超レア。
コアホウドリです。
絶滅危惧種IB類で、なかなか見ることができないそうですよ。
アホウドリという名は、すぐに飛び立てず、簡単につかまってしまうことからネーミングされました。

「フンコロガシ」や「ナマケモノ」並みに侮辱された名前ですが、英語でいうと「Albatross」なんかカッコよくないですか?

ここには国境がある

98960:ここには国境がある

撮影/吉田匡和

海上保安庁の巡視艇の後ろにロシアの漁船が操業中。

背後に横たわるのは、沖縄本土より大きな国後島です。
日本は「北方領土は日本固有の領土である」と主張していますが、実質的には日ロ境界線が敷かれ、それを超えるとロシアに拿捕されます。

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撮影/吉田匡和

知床連山がきれいに見えます。
この光景は陸上では絶対に見ることができないですね。
冬の流氷ツアーも評判がよく、アザラシやオオワシが群がる姿を見ることができるのは、世界中で羅臼だけ。
ぜひ冬も訪れたいです。

ミンククジラ

98962:ミンククジラ

撮影/吉田匡和

大きな体をくゆらして、ミンククジラが現れました。
ヒョイと曲がった背びれが特徴で、体長は平均7mくらい。
調査捕鯨の対象になっていて、札幌市内のスーパーでも売っていますよ。
98963:

撮影/吉田匡和

これはミンククジラのヒゲです。
乾燥しているので、ちょっと固いですね。

シャチは現れず

98964:シャチは現れず

撮影/吉田匡和

午前中、2時間30分のクルージングが終了。
いろんな野生動物を見ましたが、一番見たかったシャチには出会えず。
シャチは絶対に見たかった!前日は船に寄ってきたと聞き、地団太を踏みました。

ランチタイムは時鮭

98965:ランチタイムは時鮭

撮影/吉田匡和

ランチは、この時期限定の時鮭定食を味わいました。

時鮭とは、5~7月にかけて捕れるシロザケのこと。
若い個体で栄養やアブラが蓄積され、大変美味ということでしたが、この店の定食の時鮭は、正直それほどのものでは…

普通に焼き鮭ですね。
価格から考えると、ちょっと残念な感じでした。

再チャレンジ

98966:再チャレンジ

撮影/吉田匡和

断腸の思いで午後便に乗船するもシャチはおろか、水鳥にも出会えず。
ムキになってギャンブルに突っ込んだものの、ボロ負けした気分でした。

野生動物は、必ず会えるとは限りませんね。
絶対に、いつかこの目でシャチを見ることを誓いました。

知床雑貨カフェ cho-e-maru

98967:知床雑貨カフェ cho-e-maru

撮影/吉田匡和

知床ネイチャークルーズのオフィス正面には、シャチを中心とするグッズを販売しています。
シャチ好きな人は、お金がいくらあっても足りないでしょうね。
シャチを見れなかった悔しさを感じつつ、散財しました。

行き止まり

98968:行き止まり

撮影/吉田匡和

車やバイクで行ける知床半島の突端は、羅臼から約24㎞離れた「相泊」が限界です。
あとは自力で知床岬を目指します。

「立ち入り禁止」ではなく、道なき道を超えられる技術がある人限定です。
岩に張り付いて進むなど、ありえないくらいスリリングですので、実力者はどうぞ!

満潮になると水没する「瀬石温泉」

98969:満潮になると水没する「瀬石温泉」

撮影/吉田匡和

一日の最後を締めるのは、行き止まりに近い「瀬石温泉」です。
ドラマ「北の国から」の舞台にもなり、満潮には水没します。
脱衣所がないので、海に向かってスッポンポン。
道路から丸見え。
つまり「自信のある者」のみ、入浴が許されています(笑)

もの好きにおススメ

98970:もの好きにおススメ

撮影/吉田匡和

国後島を眺める最高のロケーション。

岩場から源泉が湧き出ているので、場所によっては「アチー」と飛び上がります。
足場は海藻でヌルヌル、お湯はほとんど海水なので、髪の毛もゴワゴワ。
だから人には勧めません。
これを見て「面白そう」と思った変わり者だけ行ってみてください。

水族館とはちがう野生の魅力がある

98975:水族館とはちがう野生の魅力がある

撮影/吉田匡和

水族館のように飼い慣らされた動物ではなく、羅臼に暮らす動物たちは自然そのもの。
会えればラッキーくらいの確立です。
でも、それが自然なんですね。

そんな自然のシャチにほれ込んで、大阪から知床ネイチャークルーズに実習に来ている専門学校生や、札幌出身の女性もいました。
羅臼は動物たちの宝庫。
何度も訪れてその息吹を感じてみてください。