インド観光前に知りたい、世界遺産の全36件を徹底解説

「インドは三角形だと思ってるでしょう?ホントはひし形をしてるんだよ。北にもたくさん名所があるんだから!」インド北部で生まれ育った友人が以前そんなことを言っていました。確かにインドは東西南北と実に広い国。強大な帝国が統治していた時代もあり、歴史的史跡も数多く存在します。今回はそんなインドの世界遺産36件(2017年7月時点・文化遺産28、自然遺産7、複合遺産1)を東西南北中央部と5カ所に分けて一挙解説!どんな歴史物語に出会えるか楽しみです!


インド北部の世界遺産

01)大迫力!「大ヒマラヤ国立公園保護地域」 (自然遺産・2014年登録)

01)大迫力!「大ヒマラヤ国立公園保護地域」 (自然遺産・2014年登録)

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インド北部といえばヒマラヤ山脈の西側にあたる地域。
雄大な景色や特異な地形、多種多様な生物生態系など、自然遺産が多く登録されています。
90,540haの広さを誇る国立公園領域に、海抜6000m以上もの山々と氷河、海抜2000m以下のエリアには河畔林、雪溶け水、豊かな流れを保つ川の数々など、険しい山岳地帯が育む自然全体が保護の対象に。
立ち入り制限がされているので、残念ながら自由に散策することはできません。
公園内の観光を希望するなら、トレッキングツアーなどに参加するのがよさそうです。

02)女神が住む山「ナンダ・デヴィ国立公園と花の谷国立公園」(自然遺産・1988年登録、2005年拡張)

02)女神が住む山「ナンダ・デヴィ国立公園と花の谷国立公園」(自然遺産・1988年登録、2005年拡張)

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標高7816m、ネパールとの国境付近に位置し、ヒマラヤ山系の一角を担う高峰ナンダ・デヴィ。
「祝福された女神」という意味を持つその山は、女神ナンダが住むヒンドゥー教の聖山として古くから崇められ守られてきました。
貴重な自然が残る場所として1988年に自然遺産となり、現在では保全のため入山は制限されています。

2005年に追加登録された「花の谷国立公園」はナンダ・デヴィの北西にる、標高3,000m以上の山肌に広がる国立公園。
雪解け水が600種類以上もの高山植物を育み、花の季節には山肌が青や黄色に染まり色鮮やか。
こちらは観光することが可能で、美しい花々を一目見ようと多くの登山客が訪れています。

03)圧巻!「ラージャスターンの丘陵城塞群」 (2013年)

03)圧巻!「ラージャスターンの丘陵城塞群」 (2013年)

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まるでロールプレイングゲームに登場する城塞のような、乾いた砂漠の丘陵地そびえたつ巨大な要塞の数々。
思わず「かっこいい!」と呟いてしまう人も多いのだとか。
インド北西部ラージャスターン州に残る城塞はどれも、敵を寄せ付けない荘厳で力強い雰囲気を今も醸し出しています。

これは8世紀から18世紀まで続いたラージプート諸王国(ヴァルダナ朝やチャンデーラ朝、ムガル帝国など北西インドで権勢を振るった国々)が築いたもの。
世界遺産に登録されたのはそのうちの6件(クンバルガル城、ジャイサルメール城、チットールガル城、アンベール城、ガングロン城、ランタンボール城)。
それぞれ、築城の時期や背景、国が異なり、建築様式や要塞としての機能にも違いが見られます。
全部を見てまわるのは大変かもしれませんが、可能であれば、何か所かまわって比較してみたいものです。

04)二つの宗教の融合「デリーのクトゥブ・ミナールとその建造物群」(1993年登録)

04)二つの宗教の融合「デリーのクトゥブ・ミナールとその建造物群」(1993年登録)

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ニューデリーの南に天高くそびえたつ褐色の塔があります。
高さ72.5m、上層階には白大理石が施された大変豪華な建築物です。
内部には378段の階段があり、以前は最上部まで上がることができたそうですが、現在は内部を見学することはできません。

この塔は12世紀後半、トルコ系の軍人、クトゥブ・アッディーン・アイバクがインド北部に侵攻し、その記念として建てられたもの。
ヒンドゥー様式とイスラーム様式が混在した希少な建物。
この塔を中心に、周辺に残されている中央モスクなどの遺構も世界遺産の範囲に含まれます。

少し珍しいものとしては、モスク内の広場に立てられている「チャンドラヴァルマンの柱」。
地上7mほどの細長い鉄柱です。
表面には4世紀頃のものと思われるサンスクリットの碑文が刻まれていて、1500年ほど経っているものと思われますが、雨ざらしにも関わらず高純度な鉄でできているためほとんど錆びることなく、今もきれいな状態でその場に立っています。
オーパーツ(時代や場所にそぐわない謎の品)ではないかと噂する人もいて、これ目当てでこの地を訪れる観光客もいるのだそうです。

05)驚くべき天体観測技術「ジャイプルのジャンタル・マンタル」(2010年登録)

05)驚くべき天体観測技術「ジャイプルのジャンタル・マンタル」(2010年登録)

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ラージャスターン州の州都でもあるジャイプルには、およそ300年前に建てられたとされる巨大な天文台があります。
ジャンタル・マンタルと呼ばれる、天体観測や占星術に使用する観測施設。
天体望遠鏡が使われるようになる前から、この地では高度な技術を用いた天体観測が行われており、その正確さは現代の技術にも引けをとらないほどなのだそうです。

建築主はムガル帝国のラージプート族カチワーハー家の当主、ジャイ・シング2世。
彼は優れた政治家であると同時に科学者でもあったのだそうです。
建設期間は1728年から1734年とされています。

敷地内には高さ27mもある巨大な日時計や、太陽や星々の位置を測定する観測器など、貴重な施設がたくさん。
広い敷地の中に不思議な形の観測機器が並び、まるで天体観測テーマパークのよう。
天文学に詳しくなくても十分楽しめる、見ごたえのある史跡となっています。

06)夫婦愛が生んだ美しき廟「デリーのフマーユーン廟」(1993年登録)

06)夫婦愛が生んだ美しき廟「デリーのフマーユーン廟」(1993年登録)

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首都デリーの中央部、ヤムナー川にほど近い場所に、16世紀に建てられた、ムガル帝国の第2代皇帝フマーユーンの墓廟があります。

最愛の妻を亡くした王がその妻のために建てたという「タージ・マハル」の話をご存知の方は多いかもしれません。
このフマーユーン廟はそれよりさらに100年も前に、フマーユーン皇帝の妃が亡き夫のために建てた廟。
廟とは死者を祀る宗教的な施設の総称です。

赤砂岩と白い大理石を巧みに組み合わせ、外壁には優美な幾何学模様を浮かび上がらせ、周囲には色とりどりの植物が植えられた美しい庭園が華を添えます。

妃がペルシア出身だったということもあってか、ペルシア文化とインドの伝統が融合した新しいタイプの建造物と言われ、これが後の「ムガル建築」の礎に。
フマーユーン皇帝は一時インドの地を追われ流浪の身となったこともあり、波乱万丈の人生を送った皇帝としても知られています。
そんな夫に対する強い思いが伝わってくる、愛に溢れた建造物なのです。

07)愛する妻のために「タージ・マハル」(1983年登録)

07)愛する妻のために「タージ・マハル」(1983年登録)

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インドの世界遺産と言えば、まずこれ!という人も多いのではないでしょうか。

北部の町アグラにある、ムガール帝国5代皇帝シャー・ジャハーンが亡き妻のために建てた、白い大理石に覆われた霊廟。
それが、世界でも指折りの知名度を誇る世界遺産にして、世界一美しい霊廟との呼び声も高いタージ・マハルです。

総大理石の白亜の建物は左右対称で、まっすぐ天に伸びた4本の塔に守られるように、中央部分にはドーム屋根の廟堂が気品高くそびえ立っています。
大理石の壁には一面、優美かつ精密なレリーフが施され、世界中から取り寄せたという宝石や鉱石が散りばめられていて、この世のものとは思えないほどの美しさ。
建設期間は20年以上とも言われ、2万人もの人々の労力が費やされたのだそうです。

シャー・ジャハーンは晩年、息子たちによって廃位させられ、アグラ城に幽閉されてしまいます。
川を挟んで対岸に自分の廟を黒大理石で建てようと考えていたというシャー・ジャハーン。
残念ながら夢は叶いませんでしたが、幽閉された部屋の窓からタージ・マハルを見てその生涯を終えたのだそうです。

08)皇帝の居城「赤い城の建造物群」(2007年登録)

08)皇帝の居城「赤い城の建造物群」(2007年登録)

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タージ・マハルを建てたことで知られるムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが、それより少し前の1639年から9年の歳月をかけて、自身の居城として築かせた、ムガル帝国の巨大城塞です。

別名「ラール・キラー」。
首都デリーにあり、「デリー城」と呼ばれることもあります。
赤砂岩で造られているところから、建物全体が燃えるように赤く、ペルシャやヒンドゥーの影響を受けたムガル建築の象徴とも言うべき荘厳な造り。
朝日や夕日を浴びて赤く輝くその姿は多くの人を魅了し続けています。
夜はライトアップすることもあるのだとか。

1857年のインド大反乱のときには城内にイギリス軍の駐屯施設が造られるなど、歴史に翻弄された城でもありました。
現在では歴史を語る史跡として、多くの観光客を迎え入れるスポットとなっています。
毎年8月15日、インドの独立記念日には、ここで首相演説が行われるのだそうです。

09)鳥たちの楽園「ケオラデオ国立公園」(自然遺産・1985年登録)

09)鳥たちの楽園「ケオラデオ国立公園」(自然遺産・1985年登録)

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ラージャスターン州にある国立公園。
かつてはバラトプル鳥類保護区と呼ばれていました。
230種類を超える鳥類が生息する豊かな湿地が広がっており、ソデグロヅルを始めとする希少種や絶滅危惧種が冬を越すために訪れる場所でもあります。

この地域一帯は、かつては乾燥した不毛の土地だったのだそうです。
18世紀に入って、当時の領主(マハラジャ)スーラジ・マルが堤防を築き、あたりは水で満たされ、湿地が造られていきました。
そして多くの鳥たちが集まるようになり、集まって来た鳥たちをマハラジャが狩猟する、ということが、20世紀後半まで続いていたのだそうです。

園内は広く、一年中散策を楽しむことができますが、おススメは渡り鳥が数多く飛来する10月~2月なんだとか。
少し長めに時間をとって、鳥たちの様子を眺めながらのんびり時間を過ごすのもよさそうです。

10)皇帝の思いが詰まった都「ファテープル・シークリー」(1986年登録)

10)皇帝の思いが詰まった都「ファテープル・シークリー」(1986年登録)

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「勝利の都」という意味を持つ、ムガル帝国の第3代皇帝アクバルによって造られた都市。
アグラの南西37kmに位置しています。

アクバルは長いこと後継ぎができずにいたのだそうです。
当時このあたりに住んでいたイスラム教の聖者サリーム・チシュティーのもとを訪れ相談したところ、5年以内に子供を授かるだろうとの予言を受け、その後実際に王子が誕生しました。
それを記念して、サリームが住んでいたこの地に新たな都を作ったのだそうです。
一説にはアクバルがそれまでの都であったアグラの暑さに参っていたため遷都しただけでは、という話もありますが、とにかく皇帝は王子の誕生を心から喜びました。

しかしファテープル・シークリーも決して、住みやすい場所ではありません。
水不足や猛暑の影響で、建設後わずか14年、たいして使うこともなく廃墟となってしまいました。

敷地内は宮廷地区とモスク地区に分かれており、当時の建築技術の粋を集めて造られた勇壮な建物の数々を見学することができます。

11)もうひとつの”赤い城”「アグラ城塞」(1983年登録)

11)もうひとつの”赤い城”「アグラ城塞」(1983年登録)

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インドの都市アグラにある、ムガル帝国時代の城塞。
赤砂岩で築かれた城壁は燃えるように赤く輝き、歴代皇帝が居城としていた巨大な城です。
通常、「赤い城(ラール・キラー)」といえばデリー城のことを指しますが、こちらをそう呼ぶことも。
赤は皇帝の権力の象徴でもあったのだそうです。

着工は1565年。
第3代皇帝アクバルがデリーからアグラに都を移し、築いたアグラ城。
後にファテープル・シークリーを築いた皇帝として、先ほどご紹介したアクバルですが、領土を次々広げてインドほぼ全域を掌握するなど、ムガル帝国随一の大帝として名を馳せた人物でもありました。
広がった領地を治めるべく、人種や宗教に捉われず、優秀な人材なら誰でも起用したのだそうです。

アクバルが作ったアグラ城は城塞としての機能を重視したばかりに、暑くて住み心地が悪かったといいます。
彼の孫にあたる5代皇帝シャー・ジャハーンが住みやすい城に作り替え、6代皇帝アウラングゼーブが死去する1707年頃まで、アグラ城はムガル帝国の富と権力を象徴する存在として、帝国の頂点に君臨し続けました。

Writer:

歴史と歴史小説と遺跡を愛してやまない東京都在住の主婦。子供のころからの大の時代劇ファン。国内外問わず歴史小説を読むようになり、NHK人形劇「三国志」を見て中国史にはまって大学では東洋史学を専攻。愛猫とじゃれながら歴史小説を読み漁る毎日を送っている。趣味は古地図を眺めることとカメラ片手の街散策。

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