【書評】考古学学会では無視される壮大なロマン「神々の指紋」/グラハム・ハンコック著

エジプトのギザのピラミッド群やナスカの地上絵の謎についての真相ならば、考古学好きでなくても興味があるのではないでしょうか。
「神々の指紋」は、古代文明の謎についての、大胆な仮説の本です。考古学者ではなくジャーナリストのグラハム・ハンコックが、世界中の遺跡や文献を調査研究して書き上げました。
その仮説とは、ピラミッドなどの古代文明は、私達が思っているよりもずっと古く、超古代文明が存在していた、というものです。

失われた超古代文明が存在していた証拠をあぶりだす

失われた超古代文明が存在していた証拠をあぶりだす

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 この本は、日本では1996年に出版されベストセラーになりました。
当時は、「ふしぎ発見」などのテレビ番組にも取り上げられブームのようにもなりました。

 エジプトのギザのピラミッド群やナスカの地上絵は、いつ、誰が作ったのか、いまだに謎が多く残っています。
その謎に、ハンコックは鮮やかに答えを出しているのです。

 最新のコンピュータ天文ソフトや地質学など、考古学とは関係が薄かった分野の知識も取り込み、とても大胆な仮説を発表しました。

 しかし、グラハム・ハンコックは、考古学者ではありません。
イギリスのエジンバラ生まれ。
タイムズ、ガーディアンなどの高級紙にて記事を執筆。
エコノミスト誌の東アフリカ特派員も勤めたジャーナリストです。


 「神々の指紋」を読むと、ジャーナリストが書いた本だということが、すぐに実感できるかもしれません。
まるで新聞を読んでいるように、事実を積み上げながら自論が展開されていくからです。
 

 グラハム・ハンコックは、世界には失われた超古代文明が存在すると考え、その証拠を遺跡や文献、研究結果からあぶりだしています。

考古学学会からは一笑されたトンデモ本?


 では、「神々の指紋」の説は、正しいのでしょうか。
太古には、古代文明が存在していたのでしょうか。
ギザのピラミッド群は、本当に1万年以上前の古代文明の遺跡なのでしょうか。

 「神々の指紋」は、出版さえれた当時からすぐに、賛否両論がありました。
H・ユウム、S・ヨコヤ、K・シミズ著の 『「神々の指紋」超真相』 という検証本も出版されています。

  『「神々の指紋」超真相』 によると、グラハム・ハンコックの書いている内容は、都合の良い文章のみ抜き出したり、誤りとされた説が引用されていたり、年代をごまかしていたりするという。
いわゆるトンデモ本である、と糾弾しています。

 では、やはり 『「神々の指紋」超真相』の指摘どおりの、トンデモ本でしょうか。

 私は、どちらの本も読みましたが、読んだだけではどちらが正しいのか分からない、というのが正直な気持ちでした。
間違いと言われる箇所が、本当に間違いなのか、古代史の知識のない私には判断ができなかったためです。
元の文献や資料を自分で調べなければ、どちらが真実で、どちらが間違いなのか、判断を下すことはできそうにありません。

真実を見分けるのは難しい


 しかし、「神々の指紋」は、読んでいてとても面白い本なのです。
古代のロマンが目の前でどんどん解明されていく様は、小気味よく、真実に満ち溢れているようにも、感じられました。

 ジャーナリストならではのハンコックの論の展開には、人名や資料、実験などの科学的と思われる濃密な証拠が詰め込まれています。

 どちらにしろ異端の説であろうということは、すぐに分かりましたが、考古学に詳しくない読者をも引き込んでいく魅力を持つ本なのです。

 しかし、ハンコックが事実を書いているのかどうかは、素人には分からない。
誤りの指摘が正しいのかどうかも分からない。
真実を見分けるのは、本当に難しいものです。

 「神々の指紋」が出版されてから、20年近くの時間がたちました。
考古学の専門家の間では、現在どんな評価をされているのでしょうか。

「ギョペックリ・テペ遺跡」 の発見

「ギョペックリ・テペ遺跡」 の発見

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 「神々の指紋」の本は多くの読者を魅了しましたが、真実なのか曖昧模糊とした状態のまま20年近くが過ぎます。
そしてゆっくりと忘れられていきそうになった2016年に、グラハム・ハンコックの「神々の魔術 失われた古代文明の叡智」という新刊が出版されました。

 この本は、1995年にトルコで発見され、2014年まで発掘が続けられていたギョベックリ・テぺの遺跡についての考察本になっています。
そしてこの本もまた、失われた超古代文明についての本なのです。

 しかし、今回は「神々の指紋」の時とは、少し状況が違うのかもしれません。
何しろこの遺跡の建造物の年代は、いくつかの放射性炭素年代測定で1万年以上近く前のものであることが、もう明らかになっているためです。

 しかし、その遺跡は石器時代の遺跡にも関わらず、ライオンや人の彫刻、神殿らしき建物もあるという考古学の常識を覆すような遺跡でした。
人類は今考えられているよりも、ずっと昔から文明を持っていたかもしれないことを示す遺跡かもしれないと言われています。

 考古学的には大変重要な遺跡であり、この年代測定が正しければ、いままでの人類史を何もかも変えてしまうかもしれない、とも考えられています。

古代のロマンに浸ってみてはいかが

古代のロマンに浸ってみてはいかが

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 このギョベックリ・テぺの遺跡は、「神々の指紋」やグラハム・ハンコックには、追い風になっています。
グラハム・ハンコックの記述内にいろいろ突っ込みどころがあるのだとしても、メインテーマは間違っていない可能性が出てきたのです。

 ギョベックリ・テぺの遺跡は、まだまだほんの一部しか調査されておらず、今後どの様な展開を見せるかは、まったく分かりません。
けれども、コンピュータが発達して世界をつなぎ、衛星で地球表面をくまなく調べられる現代でも、実は人類史については、まだまだ沢山の謎があるのだということを感じられる遺跡でした。

 もし、人類がもっと早くから文明をもっていたのだとしたら、いったいどうして忘れられてしまう文明があるのでしょうか。
オーパーツと言われる古代文明の遺品といわれるものは、どこまでが本物なのでしょうか。

 謎が謎を呼ぶ古代のロマンに浸りたい方には、「神々の指紋」はきっと楽しい時間を与えてくれることでしょう。

日本にも巨石文明がある

日本にも巨石文明がある

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 エジプトのピラミッドやマヤ文明、ナスカにある地上絵やモアイなど、世界には古代のロマンを感じられる遺跡が散らばっている。
いつか旅行をして、自分の目で見たいと思う方も多いのではないでしょうか。

 ところがこの日本にも、古代のロマンを感じられる遺跡が、沢山あることはあまり知られていません。
日本の巨石文明は、巨石ではあってもエジプトのピラミッドなどと比較すると小さいため、地味に見えます。
しかし、日本のピラミッドと言われる建造物や、秋田のストーンサークルに似通った環状列石など、興味深い遺跡が多く残っているのです。

 また、巨石にはシュメール語のような古代文字も、刻まれているという。
未だ解明を待つ状態で、解読されていないが、日本にも古代ロマンは眠っています。

 グラハム・ハンコックが、宮古島の巨石神殿と言われる遺跡に、ダイビングで調査を行い他の書籍で紹介しているものもあります。

 人類の謎を探る旅に、本を読んで漕ぎ出してみませんか。

 
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