キプロスのゴーストタウン「バローシャ」の人たちだけが知る、折れない心の作り方

景色や食事、そしてレジャー。あなたが旅行をする目的はなんでしょうか?今回ご紹介するバローシャという街でできる経験は、あなたの心を強くさせ、成長するための新しい旅行スタイルをもたらしてくれるかもしれません。


恵まれている私たちが、忘れてしまったこと

スマートフォンを数回タップすればありとあらゆる情報が手に入り、家から数分歩けばコンビニで必要最低限のものは買うことができる現代の生活。

日本にいる限り、何の不自由もなく、恵まれた生活を送れるように思われますが、内閣府の調査によれば、今の生活がよい方向に向かっていくと感じている日本人は、たった15%程度しかいないそうです。

経済的にも恵まれ、簡単に多くを手に入れられる環境にも関わらず、私たちは、もっとたくさんのモノを求めて、いつも何かが足りていないような感覚を持ってしまいます。

今回紹介するキプロス共和国のバローシャで懸命に生きる人たちの様子は、私たちがいつの間にか忘れてしまった、生きるために必要なことや、人としてあるべき姿を教えてくれるはずです。

地中海に囲まれるリゾート地、キプロス

トルコの南、地中海に位置するキプロス共和国は、四国の半分程度の大きさの島ながら、多くの文化遺産と、地中海に囲まれた美しく豊富な自然に恵まれ、またトルコやギリシャに近いこともあって、年間240万人の観光客が訪れるヨーロッパ有数のリゾート地です。

国名の由来とも言われる銅鉱業が、5,000年以上も前から国の基幹産業として重要な役割を担い、ヨーロッパを代表する共和国として繁栄したキプロスですが、第2次世界大戦をきっかけに1974年に国家が分裂し、現在は南北2つの地区で成り立っています。

楽園を失った街、バローシャ

南北の境界線の近くにある街、バローシャは、戦火の影響を直に受けた場所の一つです。

ピーク時の住民は25,000人、ホテル室数は12,000室に昇り、ハリウッドのセレブ御用達の一大リゾートとしても知られたバローシャでしたが、40年前の内紛により、住民たちは他地区への亡命を余儀なくされました。

現在、誰も入ることもないゴーストタウンとして知られるバローシャの街の時計は、40年前の混乱時のまま止まっています。

住宅のテーブルには朝食のお皿が置かれ、カーディーラーには当時の新車が並び、ブティックには1970年代のファッションが陳列されたままになっています。

「過去を水に流す」という生き方

こうした悲惨な歴史を抱えながら、40年経った今、バローシャから亡命した元市民などが立ち上がり進められているのが、限られた資源のみを使って、街の再建を目指すエコ・シティ・プロジェクトです。

「平和で、持続性があり、永久に続く文化」を目指して進められているこのプロジェクトについて、彼らを支援するベイシア・マルキデス氏は、「絶望的な状況であったものの、いま彼らは、一緒に未来を作るために、過去のことを水に流そうと努力している」と言います

このプロジェクトには多くの専門家も参加して、その一人、サウス・フロリダ大学の建築学教授ジャン・ウォンプラー氏は、「何か手を施さなければなりません。
この地球上には、ゴーストタウンと呼ばれるような場所はあってはならないのです。」と、再建への意気込みを語ります。

元市民から始まったこうした想いは、いまやキプロス大統領にも共有され、一大プロジェクトとして、徐々に観光地としての再建の目処が立ち始めています。

強い心を手に入れるために

バローシャの再建はまだ始まったばかりで、いますぐに観光地としての魅力はないのかもしれません。

ですが、この場所に唯一ある、日常を突然奪われた人たちが立ち上がろうとする心は、贅沢な生活で慣れてしまった私たちの鈍った感覚をリセットし、生きることの本当の価値を教えてくれるような気がします。

旅行の楽しみは、美しい景色を見て、おいしい食事に舌鼓をうち、レジャーを満喫し、非日常的な体験をすることもひとつなのかもしれません。

ですが、バローシャのような場所を訪れ、避けることができない現実を目の当たりにし、それでも立ち上がろうとする人々の想いを感じることも、意義のある目的の一つのように感じます。

第6感を刺激する旅をしよう

せっかく旅行に行くのであれば、自分の人生を変えてくれる体験をしたいと思うのは当然ですよね。
絶景、食事といった5感だけで体験できるプランではなく、心の第6感を刺激して、自分を成長させられることが、これからの旅行のあり方なのかもしれません。

 

Takashi Wada

Writer:

人はなぜ旅行をするのでしょうか。観光、食事、お土産・・・
その理由がなんであれ、私たちは、その土地に生きる人々から、多くのことを学べるはずです。
心理学専門、「人の心を読むライター」として、異なる環境に住む人々の文化、考え方、大切な価値観、生き様など、「 心 」をテーマにしたコラムを投稿していきます。

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