音楽の名所を見に行こう。悲しすきるブルース誕生秘話

「なんだか元気が出ない」「もっとテンションを上げたい」、そんなときにまずやってみるのは好きな音楽を聴くことという人も少なくなさそうです。音楽はいつも、私たちの心を強く揺さぶり、元気づけてくれます。音楽のルーツを探り、誕生の地を訪れれば、きっと日常では得ることができない、大きなパワーを得ることができるはずです。


切り離すことができない、音楽の存在

朝の眠気を吹き飛ばすような軽快な音楽で一日がスタート、通勤や通学にはテンションを上げるためにイヤホンでお気に入りの曲を楽しみ、ランチで入ったカフェではおしゃれなBGMがかかっているといったように、音楽は私たちの体の一部といっても言い過ぎではなく、もはや生活と切り離すことはできないほど大きな存在になっています。

ウィーン交響楽団など世界トップレベルの楽団が籍をおくオーストリアのウィーンや、モーツァルトをはじめ多くの作曲家を排出した音楽の聖地ドイツのミュンヘンなど、音楽の都として知られる街には、クラシックの歴史が溢れていることはよく耳にします。

ですが、私たちにもっと身近なポップスやロックのルーツとなった地は、あまり知られていないのかもしれません。
アメリカ、ミシシッピ川付近にあるデルタという地域を訪れると、音楽がどれほど私たちにとって大切なものかを、改めて感じることができます。

アメリカで生まれたロックのルーツ、「ブルース」

ローリング・ストーンズやエリック・クラプトンなど、今もなおロックやポップス界に君臨する世界的アーティストの多くは、ブルース・ミュージックに強い影響を受けているそうです。
ロックミュージックのルーツであるブルースは、アメリカの南部、大河ミシシッピ川下流にあるデルタという地域で誕生したと言われています。

ルイジアナ州やテネシー州などいくつかの州にまたがるデルタ地帯では、ミシシッピ川の恵みを受けた豊かな自然、そこで育った食材を活かした食事にありつけることはもちろん、カジノやゴルフ場など多くの娯楽施設もあり、たくさんのツアーが組まれる場所の一つです。

ミシシッピ、デルタ地帯。悲しみの歴史。

「ブルースはこうした豊かで、朗らかな環境で生まれた音楽・・・」、と考えるのは少し早計です。
ブルースの誕生裏には、とても残酷で、目を背けたくもなる物語が存在しています。

1861年に勃発したアメリカ南北戦争。
当時、白人の植民地として、数千という黒人たちが奴隷として働かされていたのが、このデルタ地帯です。
アフリカにいた奴隷達がここに移され、彼らが持っていた音楽に白人のフォークやポップスの要素が入り込み、塗り替え、次第に広がっていったのがブルースの始まりだとされています。

 

「いつか自由になる」。

ブルースを英語で表すと「blues(ブルーな気分。
憂鬱)」ということからもわかるとおり、奴隷たちの労働歌として歌われてきたのがブルースでした。
当時を代表するブルース・シンガー、フィルド・ハラーの曲『Rosie』は、恋人Rosieに対しての思いを歌った曲ですが、その中の歌詞には、

「結婚しよう。
約束じゃないか、いつか自由になれたらって。
僕は自由になる。
自由になるんだ。

という一節があります。

今でこそ多くの人に楽しまれるブルースですが、当時の歌には、奴隷たちの自由になりたいという願いや、絶望、悲しみ、怒りが多くつづられています。

音楽のパワーを感じることができる場所

ブルースが一つのジャンルとして確固たる地位を気付くことができたのは、音楽自体の素晴らしさはもちろんですが、こうした悲しい歴史の存在と、戦争や植民地といった誤った行いに反省し、共感する大勢の人たちがいたこと、そして、その辛い経験を乗り越えようとする奴隷たちのパワーが成し遂げさせたことは、言うまでもありません。

ITが普及した現代では、ポップス、ロック、ジャズなど世界中のジャンルの曲をダウンロードし、手元で聴くことができます。
何気なく耳に入っては、出て行ってしまう音のつながりは、いまの私たちにとってそれほど価値のあるものではないのかもしれません。

深く、悲しい歴史を持つデルタのような場所を訪れた人にこそ、音楽が私たちに与えてくれる力を知ることができるのではないでしょうか。

心で楽しむ旅をしよう。

海外でしか見ることができない大物アーティストのライブに行ったり、日本では聞くことができない曲を聞きに行くなど、音楽をテーマにした旅行プランを作る人も多いと思います。
音楽を、目や耳で感じることも大きな楽しみですが、デルタのような、その曲が生まれた場所や、歴史を追いかける旅は、あなたにより大きな力を感じさせ、心を強くし、勇気を与えてくれるはずです。
Takashi Wada

Writer:

人はなぜ旅行をするのでしょうか。観光、食事、お土産・・・
その理由がなんであれ、私たちは、その土地に生きる人々から、多くのことを学べるはずです。
心理学専門、「人の心を読むライター」として、異なる環境に住む人々の文化、考え方、大切な価値観、生き様など、「 心 」をテーマにしたコラムを投稿していきます。

この記事のカテゴリ

コラム
文化

関連記事を見る

コラムの記事を見る

なぜ「天動説」でなく「地動説」なのか?文系でもわかる天文学の歴史
時差ぼけの症状や原因は?対策はあるの?時差ボケを撃退する15の方法
北朝鮮を旅行して感じたこと…地元の人に出会ってびっくり!
私の見たイギリス…いまは斜陽の国イギリスが、新たな道を拓くには
青で彩られたシャウエンの街。その美しい光景は息を呑むよう!
人生最高の旅行をするために、持って行くべき、たったひとつのもの。
砂に埋もれた廃墟。ナミビアで見つけたゴーストタウンで、かつて栄えた町の現在の姿を撮影
仕事を辞めて旅に出たくなるような世界の絶景写真37枚
実写版「ウォーリーをさがせ!」…誰かのふざけたinstagramかと思ったら、がんに苦しむ子供たちに向けたキャンペーンだった
「世界一危険な海」を行く。写真が捉えた南極の絶景を見よ
絵のように美しい!フィルムカメラを通して見たニュージーランドの絶景
知らないほうが良い?海外ホテルで過ごすための20の知恵