「今年のハロウィンのコスプレ、どうする?」その前に、考えて欲しいこと。

ハロウィンやクリスマス、キリスト教式の結婚式など、日本には多文化国と言ってよいほど、諸外国のモノやサービス、イベントなどが輸入されています。ところが、いつの間にやら原型を留めないほどに日本流に変わってしまったものがあることも実際です。よく言えば「日本人向けのカスタマイズ」ですが、私たち日本人は、自分たちの文化や心意気といったものに、もっと自信を持つべきなのかもしれません。


多国文化の国、日本。

多国文化の国、日本。

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日本に訪れる外国人の数は、年間約1,500万人、国の数でいうと約40ヵ国の方が、観光や労働を目的にこの島国へとやってきます。

四方を海に囲まれた環境にも関わらず、日本は多くの国の文化を積極的に取り入れることで成長してきました。
自動車や家電製品、アニメーションなど、これらは元々は海外を源流とするものを日本に持ち帰り、より効率的に、より高品質なものに作りかえたことで、いまや日本のお家産業とも言われます。

しかし、そこに至るまで日本の製造業は、多くの海外メーカーから「パクリ産業」という酷評にされされ、当時の最大手メーカーは「マネシタ(松下)電器」と揶揄される時期もあったそうです。

「ハロウィン=仮装パーティ」、という発想

「ハロウィン=仮装パーティ」、という発想

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お家芸と呼べるほどにまで成長を遂げられるならまだしも、海外の文化でありながら、摩訶不思議な形で日本で浸透しているものがあることも事実です。

例えばハロウィンは、日本でのイメージと言えば、「アメリカ発キリスト教の祭事で、老若男女がコスプレをして、お菓子をプレゼントする秋のイベント」といったところで、2015年、渋谷のスクランブル交差点には、100万人近くの仮装した人々が集まるほどの盛り上がり様ですが、本来のハロウィンには、こうした華やかなイメージとは異なる、祭事としての役割が与えられていました。

もともとハロウィンは、ケルト(いまのアイルランド)人の司祭が10月31日を「死者の日」と定めたことに由来し、死者を追い払うための魔除けを行うことが目的だったそうです。
生前に悪事を働いた人間が、地獄から追い返され、生き返った姿が、あの恐ろしい顔のカボチャ「ジャック・ランタン」だそうですが、アメリカのハロウィン・パーティでの仮装が、ゾンビや幽霊など死者をイメージしたものがほとんどで、お菓子によってそれを追い払おうとするのは、こうした源流が比較的正しく受け継がれている証拠にも思えます。
ただ、ハロウィンはケルト人の祭事のため、キリスト教の信者は参加してはいけないとされることもあるようです。

「ピザ=具だくさん」、という自信

「ピザ=具だくさん」、という自信

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食べ物にも不思議なことがおきているようで、例えばピザはイタリア生まれのカジュアル料理の一つだと思ってしまいますが、これも少し違うようです。

様々な説があるものの、ピザはイタリアで生まれる以前に、エジプトに原型があったとする説が有力で、ピザの特徴である円形の小麦粉の生地は、もともとはお皿代わりだったと推測されていて、それがイタリアへ渡り、「フォカッチャ」と名前を変え、イタリア人料理家によって「ピッツァ」に生まれ変わったと考えられています。

日本ではピザの上に様々な具材が乗っていることが当たり前で、ある宅配ピザでは30種類以上のピザが開発されていますが、イタリア人にとってのピザは、あくまでチーズを楽しむもので、生地の上にトマトソースとモッツァレラチーズを乗せ、それをフォークとナイフを使って食することも珍しくないそうです。

日本のピザは世界的に見ても珍しい変貌ぶりで、イタリア的な考え方を受け継ぐアメリカにはこんなジョークがあるほどです。

「コーンとマヨネーズのピザが好きになった?きみは日本に長くいすぎたね。」

「クリスマス=ケンタッキー」、という誤解

「クリスマス=ケンタッキー」、という誤解

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アメリカのファストフード・チェーン「ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)」といえば、クリスマスのお楽しみであることは言うまでもありませんが、昨年のクリスマス前の3日間でKFCのチキンを食べた家庭は370万世帯にのぼり、金額にして60億円分ものチキンが販売されたそうです。

ですが、この習慣、実は世界中でも日本でしか見られない習慣だということはあまり知られていません。

イギリスの英メトロ紙はその記事の中で、「日本の奇妙な現象」としてKFCに並ぶ日本人を取り上げ、「イギリスで言う七面鳥は、日本ではカーネル・サンダースを意味する」と、面白おかしく伝えました。
アメリカでは確かに七面鳥(ターキー)を囲んでディナーを取ることはありますが、それは11月にやってくる感謝祭の日のことで、収穫感謝祭とも呼ばれるこの日は、日々食事を得られることを神に感謝し、ご馳走をいただくことが習慣になっています。
アメリカのクリスマスで食されるのは、KFCのチキンではなく、ローストビーフやハムなどが多いそうです。

形を変えすぎた、日本。

形を変えすぎた、日本。

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海外発祥のものは、そのままの形を保つ決まりなどはありませんし、自分たちの文化に合わせた形にカスタマイズすることも間違っではいません。
ですが、元々の由来を知り、それに対する敬意をもって形を変えるか、それとも、輸入されたものを思ったように好き勝手に変えてしまうか、そこには大きな違いがあるように思います。

日本経済新聞が行った外国人観光客に対するアンケートでは、日本に来る目的のトップは「日本食」であるものの、その次は「ショッピング」や「繁華街の街歩き」といった新しい文化への期待が多く、「歴史・伝統文化体験」などの日本ならでは経験を求める旅行者は、比較的少ない傾向にあります。

私たち日本人は、多くの文化を取り入れることになれすぎた結果、本来の意味を考えないまま、新しいものに飛びつくだけでなく、自分たちの文化を犠牲にしてしまっていることに早く気付くべきなのかもしれません。

旅に必要な「温故知新」

海外に出て、いままでなかった体験をし、新しい価値観を得る、こうしたことが今では簡単に行えるようになりました。
その一方で、もともと大切にされてきた物事やイベント、考え方すらもが簡単に流出し、だれも意図しないところで形が変えられてしまうことも事実です。
「故きを温ねて、新しきを知る。」旅行者として私たちができることは、新しいモノを獲得することだけではありません。
延々と続く多くの伝統を引き継いでいくことも、旅行者にできる大切な役割のひとつではないでしょうか。

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Takashi Wada

Writer:

人はなぜ旅行をするのでしょうか。観光、食事、お土産・・・ その理由がなんであれ、私たちは、その土地に生きる人々から、多くのことを学べるはずです。 心理学専門、「人の心を読むライター」として、異なる環境に住む人々の文化、考え方、大切な価値観、生き様など、「 心 」をテーマにしたコラムを投稿していきます。

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