大貴族が愛したイタリア・ルネサンスの美しい町並みを誇るポーランドの理想都市ザモシチの歴史

wondertripでは世界の絶景を紹介していますが、歴史地区や古代都市などの絶景スポットは、その歴史を少しでも知ることでより観光が楽しめます。今にも残る世界遺産のストーリーは、知識欲も刺激されますね。本日はポーランド「ザモシチの歴史」をご紹介します。


「ルネサンスの真珠」との異名を持つザモシチってどんな街?

「ルネサンスの真珠」との異名を持つザモシチってどんな街?

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イタリアトスカーナ州にあるローマ教皇ピウス二世がルネッサンスの理想都市を造ったとして有名な「ピエンツァ」に似た理想都市がポーランドにもあります。
それがこのザモシチです。
ヤン・ザモイスキ公という大貴族のアイデアと熱い思いにより、何もないところに一から造られた町です。
「こんなことができるなんて!」とかつてのポーランドが絶大な力を持っていたことを証明するような町並を見ることができます。

「理想都市」を具現化したものとして世界的にも他に類を見ないものであり、1992年にユネスコ世界遺産に登録されています。
ワルシャワやクラクフ、トルンなどのようなポーランドの中世の街並みとは全く違い、世界遺産の中でも異彩を放ち可憐という言葉が似合う町です。
一人の大貴族の夢と野望が花開いたイタリア・ルネサンスの美しい町、ザモシチの歴史について少しだけ触れてみたいと思います。

ザモシチ市の建設者ヤン・ザモイスキってどんな人?

ザモシチ市の建設者ヤン・ザモイスキってどんな人?

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1542年3月19日に、ポーランドのスコクフカで生まれました。
13歳から国外留学し、ヨーロッパ最古の一つといわれるパドヴァ大学に留学しています。
彼は留学時代に法学の博士号を取得し、カルヴァン派のプロテスタントからローマカトリックに改宗し、1565年に祖国に帰りました。
この留学時代の思いが、ザモシチ市建設に繋がります。

祖国に戻ってすぐの1566年から宮廷秘書(宮内庁長官)となり、1576年には副首相、1578年からは首相を務めた敏腕の持ち主です。
様々な市の代官を経た後、王を支え顧問となり時には強力な反対者として君臨した、当時のポーランド・リトアニア共和国の重鎮とされた人物です。
ジグムント2世アウグスト王およびステファン・バートリ王支えとなり、ポーランド・リトアニア共和国の黄金時代を気づいた立役者といっても過言ではないほどの人物です。

わずか20年で作られた桃源郷ザモシチの始まり

わずか20年で作られた桃源郷ザモシチの始まり

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ザモシチはポーランドの南東部、ウクライナとの国境からわずか130kmに位置しています。
このザモシチの建設が始まったのは1580年。
自由貿易により栄えローマに続く「富裕の街」と呼ばれたバドヴァに、ヤン・ザモイスキは留学しました。
ザモシチはバドヴァの美しい町並みに感動したザモイスキが、「祖国にイタリアのパドヴァのような町を作ろう」と思い立ち、わずか20年で作り上げた桃源郷です。

彼の夢の実現には、1569年にイタリアから建築家としてポーランドに移住していた、イタリアバドヴァ出身の建築家で都市計画家のベルナルド・モランドが選ばれました。
当時、ポーランド・リトアニア共和国の宰相かつ陸軍の最高司令官だったザモイスキとモランドは要塞理想都市プロジェクトの契約を交わしました。
これがザモシチの始まりです。
ザモイスキの思いを活かした、都市計画や建築、デザイン面でもベルナルド・モランドの才能が開花し魅力的な町を造りだしました。

流行をド返しした美しい街づくり

流行をド返しした美しい街づくり

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1580年当時はヨーロッパ各地で、建物だけでなく彫刻や絵画などで総合芸術を表したバロック建築が流行していました。
その時代にありながら1520年代に始まった古典古代を理想とするルネサンス様式をあえて使った桃源郷は現在でも完璧な姿で残されています。
ただ昔の建築様式を使っているだけでなく、ザモシチでは大砲が使われ始めた時代でもあり、当時の最新技術が取り入れられているのも魅力です。

当時コサックやモンゴル軍、スウェーデン軍などの攻撃からザモシチを守るため、このような堅固な城壁が必要だったのです。
彼らは日本の函館にある五稜郭に似た万全の体制を整えた要塞都市を作り上げました。
最高司令官の任も担ったザモイスキだからこそ、このような町を造り上げることができたのだと改めて感じます。
これには祖国ポーランドに、王都クラクフを圧倒するような町造りをしたいというザモイスキの思いもあったようです。
ルネサンス様式の美しさはもちろんですが、旧市街地全体を守るように7つの稜堡、3つの門、堀や湖が取り囲んだ防御システムが造られました。
1866年にほとんどが老朽化により取り壊されています。
東側には今でも2つの稜堡が残されています。

大貴族の思いが詰まったボルシチの魅力

大貴族の思いが詰まったボルシチの魅力

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この街の名前ボルシチは、もう皆さんお気づきの通り大貴族のヤン・ザモイスキの名前を取って付けられました。
理想的な美とされる都市は、「ルネサンスの真珠」、「北のバドヴァ」との異名を持つほど素晴らしい町です。
1580年に造り始め1600年には完成しました。
20年間で夢の桃源郷を作り上げたザモイスキの実力にも感動を覚えます。

モランドは都市を設計するにあたって人体をモデルにして造ったといわれています。
旧市街地の西側にあるザモイスキ広場を頭と例え、広場からヴァヴェル城へと続くグロツカ通りを背骨と位置し、そこから通りや広場、バスティオンを配置するという形がとられています。
この考え抜かれた景観は現在も変わることなく旧市街地で見ることができます。

ザモシチの歴史的価値を持つ建築作品群

ザモシチの歴史的価値を持つ建築作品群

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この美しい町並みを形成する代表的な建築物は、要塞跡だけではありません。
ザモイスキ宮殿や大市場広場、ビザンチン様式のレデエメル修道院、オルデナツカ礼拝堂、聖トマス大聖堂などこの町に残る建築物は保存状態が良く、現在も美しい姿を見せています。
大市場広場にはカラフルな建物が軒を連ね、とても華やかな景観を誇っています。
考えられて造られただけあり均衡の取れた美しさは、ルネサンスが花開いた当時にタイムトリップしたような気持にさせてくれます。

真っ先に目を引くのは、広場の北にはシンボル的存在のすらりとした塔が聳える旧市庁舎があります。
18世紀後半にバロックとルネッサンスが融合した現在の形に再建されました。
花の季節には広場の花壇が花々に彩られ一段と旧市庁舎を美しく引き立てます。
旧市庁舎の隣には、ザモシチの歴史を学べるザモシチ郷土博物館もあります。
ここを中心にイタリア建築特有のアーケードを持つ石造りの回廊が、1辺100mの正方形をした大広場を囲んでいます。
このアーケードに施されている、オリエント風の装飾彫刻も見どころです。

1585年に移り住んだアルメニア商人の華やかな邸宅が目を引きます。
全てが同じ高さで統一され、調和のとれた色とデザインの美しさには感動します。

その他の見どころと現在のザモシチ

その他の見どころと現在のザモシチ

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ザモイスキによって1598年に建てられた大聖堂も、1826年に改築されていますが見どころはたくさんあります。
設計はもちろんモランドで、見事な内部装飾はまるで16世紀のポーランドの大繁栄を象徴しているようです。
カテドラルには、ザモイスキの遺骨が眠っています。
付属の小塔から見る旧市街を見下ろす絶景は言葉を失うほどです。
ザモシチを五角形に取り囲む城壁の姿を見ることもできます。

1831年に町を守るために造られたロトゥンダは、1939年まで弾薬庫として使われました。
このロトゥンダは辛い歴史の証人で、ナチスドイツがユダヤ人やポーランド人、ソビエト兵を処刑した場所です。
現在は戦時中のポーランドについて展示がされています。

18世紀のポーランド分割ではザモシチはオーストリアの支配を受け、その後ロシアの所有となりました。
第二次世界大戦ではドイツに占領されましたが、運に恵まれ現在の姿を残しています。
現在のザモシチの市長は、この町を造った、ヤン・ザモイスキの直系の子孫。
17代目で名前はマルチン・ザモイスキです。

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