かつてパリに次ぐ人口を誇った大都市!壮麗なギルドハウスが立ち並ぶベルギーヘントの歴史

wondertripでは世界の絶景を紹介していますが、歴史地区や古代都市などの絶景スポットは、その歴史を少しでも知ることでより観光が楽しめます。今にも残る世界遺産のストーリーは、知識欲も刺激されますね。本日はベルギー「ヘントの歴史」をご紹介します。

美しい「花の都市」ヘントってこんなところ

美しい「花の都市」ヘントってこんなところ

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ヘントはベルギー北西部にある東フランドル州の州都です。
スヘルデ川とレイエ川の合流点にある、ベルギーでも最も古い都市の一つとされています。
ブリュッセルとアントウェルペンに次ぐベルギー第3の都市で、中世の雰囲気が漂い、美しい花と建物の融合による美しい景観より「花の都市」と呼ばれています。
200年以上の古い歴史を誇る「ゲント・フロラリア」という花の祭典が5年に一度春に開催されています。
このイベントには毎年国内外から30万人以上の人々が訪れているんですよ。
イベントの中でヘントと姉妹都市となっている金沢市が、2016年に日本庭園を出典しています。

中世の趣を今に残し、聖ヴェーレ広場を中心に観光スポットが点在しています。
フランドル地方で唯一残っている中世の城フランドル伯の城や13世紀にギルドによって建てられた高さ91mの鐘楼と繊維ホールも必見です。
また、レイエ川両岸のコーレンレイ(西岸)・グラスレイ(東岸)には、ギルドハウスが並び夜になると街中がライトアップされ美しく幻想的な雰囲気に包まれます。
レイエ川クルーズに参加して美しい街並みを見るのも素敵ですね。
今回は、花の栽培が盛んな美しい都市ヘントの歴史について少しだけ触れてみたいと思います。

ローマ時代から重要視されていたヘント

ローマ時代から重要視されていたヘント

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運河化されたスヘルデ川とレイエ川の合流点にローマ時代から存在し、7世紀にはヘント周辺ではヨーロッパのキリスト教化が起こりました。
その波に乗り、シント・ピーテル修道院とシント・バーフ修道院の2つの修道院が建設されています。
シント・バーフ修道院周辺には9世紀末以降から商人や手工業の集落がいくつか建設されました。
これがヘントの町の起源となり、紀元1000年ごろにはそれらの小さな集落たちが集結してできたのがヘントの基礎となったんですよ。

11世紀ごろになるとフランドル(フランダース)地方において中心的存在となり、商工業が成長しています。
12~13世紀のフランドル地方は毛織物工業が急速に発展し、中世期におけるヨーロッパでの商業の中心となりました。
ヘントはフランドル地方で最大級の都市へと成長したんです。

ヘントの栄光を語る建築物

ヘントの栄光を語る建築物

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ヘントは都市が栄えると同時に建設ラッシュを迎えています。
1108年にはフランドル伯が居城を建てました。
中世の趣を感じられる城は現在博物館となっており、狭間胸壁、兵器庫、拷問用具なども展示されています。
この城にある見張り台からは街が一望でき、オペラハウスや18の博物館、100を超える教会など、400もの歴史的建造物を見ることができます。
城の完成以降ヘントは、中世を通じてブルッヘ(現在のブリュージュ)やイペールと共にフランドル地方の三大都市の一つとされたのです。

へント商人の富の象徴とされる聖ニコラス聖堂は、11世紀にロマネスク様式で建てられた後、2度の火事にあい13世紀に再建されました。
その後革命や戦争による破壊などで損傷し、現在は19世紀に大規模な修復作業がされた美しい姿を見ることができます。
この教会は、スヘルデ・ゴシック様式の最高峰とされる建造物で、青みがかったトゥルネー地方産の石が使われ荘厳かつその美しさに魅了された人々が後を絶ちません。
聖堂内には柱が乱立し壁が少なく、明かり取りの窓が多いのも特徴なんですよ。
観光には金曜か土曜日がおすすめで、日曜日のミサのためにパイプオルガンの練習をしていることが多く、運がよければ壮麗な音色を聴くことができます。

聖バーフ大聖堂

聖バーフ大聖堂

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ヘントの中心部にある聖バーフ大聖堂は、12世紀から建造が始まり16世紀に完成した、ロマネスクとゴシック様式を併せ持った大聖堂です。
壮麗な建物はもちろんのこと、ここで必見なのは、初期フランドル派の画家、フーベルト・ファン・エイクとヤン・ファン・エイク兄弟が1432年に描いた「神秘の羊」。
20枚のパネルで構成されており、中央下段の白い子羊はキリストを表しているといわれています。

この祭壇画は宗教革命の時、プロテスタントによる聖像破壊運動から奇跡的に逃れることができ、ナポレオン支配時代や第二次世界大戦ではナチスドイツの手に渡るなど紆余曲折の時代を経てばらばらになっていました。
ヘントの歴史と共に苦しい時代を過ごしたといっても過言ではありません。
1945年にやっと教会にパネルたちが戻されています。
しかし、「正義の裁判者たち」という1枚のパネルだけが複製画なんです。
1934年に盗難に遭い現在も行方知れずとなっています。
教会の中央部にある、デルボー作の「心理の説教壇」も見る価値ありです。
地下室にもお宝がたくさん展示されているんですよ。
ぜひ、訪れてみてくださいね。







繁栄の頂点を迎えるヘント

繁栄の頂点を迎えるヘント

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東フランドルの中心都市となっていたヘントは、スヘルデ河の上流から運ばれた穀物の取り引き市場としても有名になっていたんです。
イングランドからの羊毛を加工する毛織物産業でも群を抜いており、13世紀には繁栄の頂点を迎えていました。
この頃になると、商人をはじめとする、都市有力市民層による支配も始まっていました。
もちろん、人口の6割を占めていた毛織物の手工業者の代表者も、14世紀ごろから政治に参加しています。
実は14世紀半ばでは驚くことにアルプス以北でパリに次ぐ大都市になっていたんです。
パリは20万人でヘントは6万人を超えるほど。
数字で見ると格段の差でしたが…。

この頃フランドルの権力は恐れられるほどだったんです。
驚くことにイングランド王と手を組み、フランドル伯やフランス王に対抗していました。
よくよく考えればヘントはフランドル諸都市の代表でしたから、当たり前かもしれませんが…。
その中でも記憶に残る反乱は、14世紀にヘントで起こった市内手工業者たちの反乱です。
大規模な反乱となり武力衝突も起こっています。
フランス王やブルゴーニュ公も肝を冷やしていたようです。
ヤーコブとフィリップ親子は商工業者のリーダーとして名を広め、現在この反乱の英雄として父のヤーコブ・ヴァン・アルテヴィルデの像は金曜日広場の中央に置かれています。

商工業は衰退するも花開く芸術

商工業は衰退するも花開く芸術

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フランドル地方は、英仏百年戦争に巻き込まれたことや毛織物工業における独占的地位を喪失したことにより国産商業の中心としての地位を失っていくのです。
ヘントもいつしか当時の輝きは消え始めていました。
しかし、15世紀からはヘントの文化が開花し始めたのです。
初期ネーデルラント派の画家たちを始め音楽家たちがどんどん活躍する事態へと変化していきます。
街中には多くの芸術家たちの工房が開かれました。
先程、ご紹介した、聖バーフ大聖堂の「神秘の羊」が描かれたのもこの時代です。

1477年にはシャルル突進公の娘マリー・ド・ブルゴーニュがオーストリアの名門、ハプスブルク家の皇太子と結婚し、ここから18世紀末まで、ヘントを含む南ネーデルラントはハプスブルク家の領有となりました。
1500年には神聖ローマ皇帝のカール5世がヘントの町で誕生したことは有名な話です。
彼は1540年にヘントと対立した結果、武力でヘントを脅かしギルドが保持していた政治や経済の特権を奪い捨て去りました。
多くの革命なども起こり衰退を続けます。

再び復活するヘント

再び復活するヘント

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マリー・アントワネットの母として有名なマリア・テレジアの統治下において繁栄を取り戻しています。
本当の意味での復活は19世紀に入ってから。
亜麻布や木綿を始め繊維産業が発展し、ヨーロッパにおける初の産業革命が起こったのです。
産業革命はフランドル地方の経済構造を一新し、労働運動も盛んとなりました。
フランスの社会主義思想の影響を受けたサンディカリスム(労働組合主義)の拠点となったのもヘントです。

1830年にはヘント大学が設立されるも、始めはフランス語のみの授業でしたが、1930年以降は全てオランダ語に。
この言語問題はベルギー独立後から続く大きな課題となっています。
現在もフランドル地方の中心的存在のヘントですが、優れた芸術とかつてアルプス以北でパリに次ぐ第二の人口を誇った素敵な都市です。
ぜひ訪れてかつての栄光を体感してくださいね。

次のページでは『中世の趣を残す美しい町ヘントを旅してみませんか?』を掲載!
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Writer:

世界遺産ブームをきっかけに歴史に目覚めてから、国や城、庭園などの成り立ちに魅了された主婦です。何だろう?と思ったことを調べて、皆さんにお伝えすることで気持ちを共有できたら幸せだな~と感じながら仕事をしています。ちょっとマニアックな歴史記事ですが、軽い気持ちで触れてみてくださいね!

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