「ノートルダムの鐘」の舞台はここ!パリで850年「ノートルダム大聖堂」が見てきた歴史と物語

ゴシック建築の特徴

ゴシック建築の特徴

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もっと神を感じる教会を建てよう

ノートルダム大聖堂の正面入口が完成したここで、現在のノートルダム大聖堂を詳しくみていきましょう。

まずは名前の「ノートルダム」ですが、これは「私たちの貴婦人」という意味で、キリスト教の中での貴婦人と言えばただ1人、聖母マリアを意味します。
中世キリスト教の特徴としてイエスへの信仰に併せて聖母マリアに対する信仰が篤くなっていきます。
そのため「ノートルダム」という名前の教会が多く、それらは聖母マリアに捧げられた教会なのです。

もちろん、パリのノートルダム大聖堂も同じで、一般的に「ノートルダム大聖堂」といえば、このパリの大聖堂を指すと言われています。

この大聖堂は12世紀にフランスで生まれたゴシック様式で建てられました。

先に紹介したサン・ドニの寺院で、より神に近づき感じるとこができる教会を建てるべく考えられた建築様式です。

具体的には天井を高くするためにアーチ型の天井を採用し、天井の重みを受ける壁を飛び梁で支えることで重みを分散させて壁を薄くし、壁に大きな窓がはめ込めるようになりました。

「もっと高く上へ上へ。
もっと光を!」がコンセプトだったのでしょう。

また、聖堂建築様式として、この大聖堂は上から見ると十字架の形をしており、十字の下側の正面入口は必ず西を向いています。

天の神から見て神の家である教会だとわかるようにしたと言われています。
聖堂内に入るとき、人々は十字架のイエスの足元から入り、その体内で神を感じ祈る演出がされているのです。

ノートルダム大聖堂は1163年に着工され、正面の双塔は1250年に完成されましたが、全体的な完成は1345年。
おおよそ200年間かけて建てられたので、ゴシック様式の初期から最盛期までの技術がみられます。

ノートルダム大聖堂をひと周り

正面西側入口の前に立つとそのシンメトリーな双塔とびっしりとならぶ彫刻達に圧倒されます。

正面入口は3つありますが、それぞれの扉上部にある半円状のレリーフを見てみましょう。
左は聖母子像を、中央は最後の審判を、右は聖母マリアの母・聖アンナの姿があります。

そして、その半円状のレリーフの上、バラ窓の下には聖書ゆかりのユダヤの歴代王や聖人の彫刻がずらりと並んでいます。

北と南の入口にもバラ窓があり、東側の内陣のステンドグラスの間を縫って飛び梁が建物の外へ伸びています。
そのアーチは時に生き物のようにも、外に伸びていく木の枝の様にも見えてきます。
ぐるりと360度どこから見ても美しく見える様に設計されています。

正面から中に入ると背中からバラ窓の七色の光が降ってきます。
正面入口以外にも翼廊(南北に伸びる十字の横線にあたる側廊)には大小のバラ窓があり、レースのような大きなバラ窓のステンドグラスは初期ゴシック様式を残すとして貴重なものです。

正面の身廊と左右に2列になった側廊があり、約9000人という大人数を受け入れる事が出来きます。

側廊の柱や天井アーチは繊細で、高さ33メートルの堂内は中世ヨーロッパの森をイメージして作られており、側面の尖塔ステンドグラスと丸窓の光が堂内を優しく照らします。
ステンドグラスは聖書のイエスの一生など聖書の話が描かれています。

側面には二階にも側廊があり、高窓は丸窓と尖塔ステンドグラスが建てに並び、さらに下にも丸窓がある珍しい作りになっています。

聖堂内に光と影が交差し、とても静謐で美しい空間が広がります。
その中にいると、信者でなくとも神様を想像してしまいそうですね。

我らがノートルダム大聖堂のエッセンス

我らがノートルダム大聖堂のエッセンス

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ガーゴイルとシメール

大聖堂内の美しさに触れた後は、北側の側廊から双塔かの上に登ってみましょう。

双塔の高さは69メートル、階段は387段。
パリの街を360度見渡すことができる高さです。

階段の途中で「キマイラの回廊」または「シメールのギャラリー」と呼ばれる踊り場のような場所にでます。
高さは西側正面入口のバラ窓の上で、双塔の分かれる場所になります。

みなさんはディズニー映画の「ノートルダムの鐘」をご覧になったことはありますか?

この映画はフランスの作家ヴィクトル・ユゴーの「ノートルダム・ド・パリ(邦題:ノートルダムのせむし男」を原作にノートルダム大聖堂を舞台にしたお話です。

ノートルダム大聖堂の塔に鐘つき男として暮らす、異形の青年カジモドには「ガーゴイル」という石像たちの友人たちがいます。
彼を励ましたり慰めたりする石像のキャラクターのモデルはこのギャラリーに点在する翼をもった怪獣たちなのです。

この怪獣たちは映画の中では「ガーゴイル」と呼ばれていますが、これらはキマイラまたはシメールという空想上の怪獣で、ノートルダム大聖堂を悪霊から守っていると言われています。

ちなみに、「ガーゴイル」は壁面から細く突き出している雨どいの怪獣たちのこと。

ノートルダムにはたくさんの雨どいがあり360度配置されたガーゴイルがパリの街に水とともに邪気を吐き出しています。

これらは中世ゴシックの時代ではなく、後年19世紀になってから付け足されたもので比較的新しい彫刻たちです。
それでも今ではこのキマイラ越しの街並みがパリの街並みらしいと言われるほど、親しまれています。

「エマニュエル」「マリー」って誰?

シメールのギャラリーからさらに塔を登っていくと鐘が複数かかっているのがみえます。

映画「ノートルダムの鐘」では主人公のカジモドが初恋の人エスメラルダにたくさんある鐘にはひつとひとつ名前があると、それぞれ紹介しているシーンがあります。

そのシーンはディズニーの創作ではなく、本当にノートルダムの鐘にはそれぞれに愛称がついています。

南塔の大鐘の名前は「エマニュエル」。
1681年に作られ、フランス革命を潜り抜け、特別な式典などの時のみに鳴らされていました。

2013年にノートルダム大聖堂着工850年を記念して、19世紀に付け替えられた質が悪く劣化した鐘4つを付け替えが行われました。

新しい鐘は北塔に8つと南塔に大鐘1つ。
南塔はエマニュエルと合わせて大鐘が2つ並んでいます。

大きな鐘の名前は「マリー」。
聖母マリアの名前がつけられています。
その他の8つの鐘にもそれぞれ名前があり、「ガブリエル(聖母マリアに受胎告知した大天使)」「アンヌ・ジュヌヴィエーヴ(聖母マリアの母とパリの守護聖人)」といった聖母とパリにゆかりのある方の名前が付いています。

調音の専門家によると付け替え前の鐘は劣化によってハーモニーがずれていたため不協和音になっていたそうです。
17世紀の時代と同じハーモニーを再現するため、新しくされたのですが、この付け替えプロジェクトの費用は寄付によってまかなわれました。

パリの方々がノートルダム大聖堂をとても大事にしていることが伝わるエピソードですね。

大受難に襲われるパリ、宗教改革

大受難に襲われるパリ、宗教改革

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宗教改革の波がやってくる

映画「ノートルダムの鐘」はちょうど15世紀のパリが舞台でした。
フランス王家のイスをめぐって長い戦いをしていた百年戦争が終盤に向かっていた時代です。

宗教はカトリックの全盛でパリのカトリック信者たちの心の支えで民衆を導く存在だったのがノートルダム大聖堂でした。

百年戦争を終結へ導き、王太子シャルルを戴冠させた立役者のジャンヌ・ダルクが魔女として火刑にされた後、フランスでは政治的な理由から彼女の復権を試みます。

ジャンヌ・ダルクの復権裁判が行われたのは、このノートルダム大聖堂でした。
カトリック教会の権威として大聖堂の司祭が彼女を魔女ではなく敬虔なキリスト教信者であったことを認めています。

このように政治と宗教が密接な関係にあった時代に16世紀にドイツで起こった宗教改革の波が押し寄せてきます。

フランス全土はカトリックとユグノー(新教徒またはプロテスタント)に分かれていきます。
おもにユグノーは南の地域で宗派を広げていきましたが、パリにももちろんユグノーの信者は増えてきます。

そんな中、ヴァロア朝の後継男子が絶えたことで、遠縁にあたるスペイン近くのナヴァール公国のアンリが大変有力な王位継承権を持つようになります。
このアンリはユグノー信者でしたが、フランス王家は代々カトリックであり、カトリックの神より認められた存在とされていますので、ユグノーのままでは王位につけない問題が持ち上がります。

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