ローマ在住者が伝授!バチカン市国「サン・ピエトロ大聖堂」の観光ガイドと見どころ

世界で最も小さい独立国バチカン。世界中に存在する12億人のカトリック信者たちの大本山です。そのバチカン市国のシンボルが、「サン・ピエトロ大聖堂」。世界で最も大きな教会です。歴代のローマ法王たちの権力を背景に、その威信のすべてをかけて建てられてきた「サン・ピエトロ大聖堂」は、外観だけではなく内部にも目をみはるような文化遺産が。

バチカン市国「サン・ピエトロ大聖堂」観光の前に知っておこう!

バチカン市国「サン・ピエトロ大聖堂」観光の前に知っておこう!

image by iStockphoto

世界で一番小さい、とはいえ「バチカン」は立派なひとつの国。
入国や見学のしかたをおさらいしてみましょう。

ローマから行くのに出国手続き、パスポートなど必要?

ローマから行くのに出国手続き、パスポートなど必要?

image by iStockphoto

ローマからバチカンに入るのに、パスポートは必要はありません。
ただし、イタリアを初めとするヨーロッパの国々では、身分証明書の提示を求められる可能性がありますので、パスポートのコピーは旅行中は携帯しているのがベター。

バチカンへのアクセスは、地下鉄A線の「オッタヴィアーノ駅」から徒歩、あるいは市内を走るバスを利用しましょう。
テルミニ駅からであれば、64番と40番が「サン・ピエトロ大聖堂」付近に停車します。
その他、19, 32, 34, 40, 62, 81, 87, 115, 590, 982, 990 のバスが、バチカン市国周辺に停車するバスの番号。

注意しなくてはいけないのは、「サン・ピエトロ大聖堂」と「バチカン美術館」入り口が別というところ。

「バチカン美術館」は、地下鉄オッタヴィアーノ駅あるいはチープロ駅から徒歩で5分ほどですが、「サン・ピエトロ大聖堂」の入口はもう少しテベレ川寄りのコンチリアツィオーネ大通りから入っていくことになります。

パスポートは必要ありませんが、昨今のテロの頻発で入口でのチェックが非常に厳しくなっています。

手荷物の検査からボディーチェックがあるため、入場希望者が列をなしているのが普通。
時間に余裕を見て「サン・ピエトロ大聖堂」を見学するのがおすすめ。

また、「サン・ピエトロ大聖堂」は観光地ではなくキリスト教信者の教会。
ミニスカートやタンクトップを着用していると、聖堂内に入ることはできません。
肌はなるべく隠した服装で向かいましょう。
肩を出した服装の観光客目当てに、肌を覆うストールなどを販売する人々もたむろしています。
法外な値段をふっかけられないようにくれぐれもご注意を!

バチカン市国を見て回るのに必要な時間は?

バチカン市国を見て回るのに必要な時間は?

image by iStockphoto

バチカン市国は小さな国とはいえ、見所が満載。

まず、「サン・ピエトロ大聖堂」と「バチカン美術館」を一日で制覇するのは時間的にも体力的にもキツい。
時間に余裕があるのならば、二つは日にちをずらしたほうがベター。

「バチカン美術館」は、著名な作品やシスティーナ礼拝堂を見学するだけでも3時間は見ておくのがよいでしょう。

「サン・ピエトロ大聖堂」は、朝の7時から入場可能。
これを利用し、なるべく朝早く「サン・ピエトロ大聖堂」に赴き、列に並ぶ時間を節約するのがお勧め。
内部の見学は、個人の興味の差もありますので1時間から2時間といったところ。

「サン・ピエトロ大聖堂」含むバチカン市国が世界遺産になった理由は?

「サン・ピエトロ大聖堂」含むバチカン市国が世界遺産になった理由は?

image by iStockphoto

ユネスコの世界遺産に登録をされるには、ユネスコが制定した基準があります。
詳しくは、下記のリンクをご覧ください。

これらの基準の中で、バチカンがクリアーした条件はこれです。

「・人類の創造的才能を表現する傑作であること

・ある期間を通じて、またはある文化圏において建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること

・人類の歴史上、重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例であること

・顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と、直接にまたは明白に関連するものであること」

具体的に言えば、8世紀の半ばからローマ法王が法王領を所有し、ローマ法王がカトリック教徒たちに対して神の代理人として君臨し、歴史的建造物、芸術品、書籍などを大量に所有するという歴史的事実に対して適用されたのでしょう。

実際、バチカンに行けば見るものばかりでどこから手をつけていいのかわからない、という状況に陥ります。
「バチカン美術館」には、レオナルド、ミケランジェロ、ラッファエッロといった世界史の教科書にも登場する偉大な芸術家の作品が所有されているだけではなく、歴代の法王たちが収集してきた古代ローマのコレクション、膨大な量の貴重な書籍を有するバチカン図書館などが含まれていて、その歴史的価値は天井知らず。

「サン・ピエトロ大聖堂」には、名高きミケランジェロの「ピエタ」を初めとする芸術品はもとより、イエス・キリストからキリスト教会を任された聖ピエトロの墓、ミケランジェロを初めとする数々の芸術家によって建設されたクーポラなど、歴史的文化遺産がこれでもかと詰まっているのです。

観光の前に知っておきたい「サン・ピエトロ大聖堂」の歴史

観光の前に知っておきたい「サン・ピエトロ大聖堂」の歴史

image by iStockphoto / 93758683

歴史上初めて「サン・ピエトロ大聖堂」が建てられたのは4世紀、キリスト教を後任したコンスタンティヌス大帝によってと伝えられています。
イエス・キリストの愛弟子であったペトロ(イタリア語ではピエトロ)の墓所があり、歴代の法王たちに深く信奉されてきた大聖堂。
数々の神聖ローマ皇帝の戴冠が行われた場所でもあります。
ちなみに、ローマの街の守護聖人はこのペテロとパウロ(イタリア語ではパオロ)。

古い「サン・ピエトロ大聖堂」が壊され、現在の「サン・ピエトロ大聖堂」の建築がはじまったのは1506年。
大聖堂前の広場を含めて完成したのは、161年後の1667年でした。

1506年に新聖堂建築の音頭をとったのは、ミケランジェロのパトロンでもあったローマ法王ユリウス二世。
けんかっ早いことで有名であったユリウス二世とミケランジェロは、しじゅう大げんかをしていたというエピソードもあります。

クーポラの高さ133メートル、横幅218メートル、総面積2万3千平方メートルを誇る大聖堂は、2万人あまりの信者を収容できると言われており、その建造に関わった芸術家にはミケランジェロ、ブラマンテ、ラッファエッロ、サンガッロ兄弟、ドメニコ・フォンターナ、ピッロ・リゴーリオ、ジャコモ・デッラ・ポルタ、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニといった天才たちがズラリ。

建築上の問題や物理学上の問題、果ては財政難もあり、大聖堂の建築は試行錯誤と紆余曲折を経て成し遂げられたといっても過言ではありません。

「サン・ピエトロ大聖堂」に行くのは昼と夜どちらがいい?治安は?

「サン・ピエトロ大聖堂」に行くのは昼と夜どちらがいい?治安は?

image by iStockphoto

「サン・ピエトロ大聖堂」の見学可能時間は、朝の7時からです。

季節によって閉館時間が異なります。

10月1日から3月30日 18:30 見学終了

4月1日から9月30日  19:00 見学終了

しかし、毎週日曜日にはローマ法王によるミサが10:00から開催され、また平日にもローマ法王による謁見が行われることがあります。
その場合には、観光客の入場や見学が禁止されますので、オフィシャルサイトなどでチェックをしましょう。
また、現法王フランシスコは南米の出身らしく、サプライズのパフォーマンスが大好き。
神出鬼没でイベントが行われることもあり、「サン・ピエトロ大聖堂」が突然入館禁止になる可能性もゼロではありません。
「サン・ピエトロ大聖堂」は、あくまでキリスト教信者の聖なる場所であることを熟慮して、その場合には潔く諦めましょう。

また、イタリアは3月の最終日曜日夜半から夏時間がはじまり、1時間ずれが生じます。
夏時間が終わるのは、10月の最終日曜日の夜中。
その期間にご旅行される方も、見学時間にご注意を。

「サン・ピエトロ大聖堂」を見学するのには、厳しいセキュリティーチェックがあります。
大聖堂見学は無料ですので、当然美術館のように予約などは不可能。
なるべく短い列に並んですませたいのならば、開館の朝7時を待つのがベスト。
一概に、欧米からの観光客は朝寝坊が多いので、7時にバチカンに並ぶ人は少ないからです。

大聖堂の内部見学は、18:30まで、あるいは19:00までで終了ですが、日没後には「サン・ピエトロ大聖堂」のクーポラがライトアップされます。
漆黒の闇に浮かび上がる美しいクーポラとテベレ川の美しさは、また格別。

「サン・ピエトロ大聖堂」周辺は、とくに治安が悪いと言うことはありません。
ただし、ローマやイタリアの他の都市と同様、観光客目当てのスリや置き引きなどには油断なくご注意ください。

いざ「サン・ピエトロ大聖堂」へ出発

いざ「サン・ピエトロ大聖堂」へ出発

image by iStockphoto

それでは、実際に「サン・ピエトロ大聖堂」を訪れてみることにしましょう!バチカン市国の入口っていったいどこ?

ローマ主要地からの移動時間は?

ローマ主要地からの移動時間は?

image by iStockphoto

ローマ市内は観光名所だらけ。
移動は観光客には頭が痛い問題ですね。

「サン・ピエトロ大聖堂」に行くには、どのような交通手段があるのでしょうか。

まず地下鉄です。
ローマ市内には現在、3本の地下鉄A線B線C線が通っています。
C線はまだ完成しておりません。
完成すれば、「サン・ピエトロ駅」が登場する予定なのですが。

現在は、A線の「オッタヴィアーノ」という駅で降りて歩くのが通常です。
駅からは、歩道にサン・ピエトロ方面への矢印がありますし、観光客が皆同じ方向に向かいますからご心配は無用。
テルミニ駅からオッタヴィアーノ駅までは、およそ20分。
オッタヴィアーノ駅から「サン・ピエトロ大聖堂」までは、徒歩でおよそ10分。
リソルジメント広場にたどり着くと、バチカン市国の城壁が見えてきます。
アンジェリカ門をくぐり抜けて、大聖堂方面へ。

このリソルジメント広場には、トラムが停車します。
テルミニ駅の東側、ローマ・ラ・サピエンツァ大学辺りに宿泊している人は、トラムの19番に乗ればリソルジメント広場が終点なので間違いなし。

ローマ市内を縦横無尽に走るバスは、かなりの本数がバチカン周辺に停車します。
先にも述べましたが、テルミニ駅からは40番と64番が有名。
ピア門周辺からならば62番が直接「サン・ピエトロ大聖堂」へ。

コロッセオ周辺にいる場合には、ヴェネツィア広場まで出てくれば40番、64番、62番はすべてここに止まります。

「真実の口」を見学したあとにバチカンに向かいたい人は、23番か280番に。

バスの場合はいずれも、市内の交通状況により所要時間が変わってきます。

変わったところでは電車を利用する方法もあり。

実はテルミニ駅からイタリア国鉄 ( Trenitalia ) の「サン・ピエトロ駅」には、30分おきに電車が走っています。
渋滞もなく、電車は空いているためスリの心配も軽減。
テルミニ駅からサン・ピエトロ駅までは所要時間19分。

また、ローマ近郊に宿泊している人にも電車の利用はおすすめ。
国鉄サン・ピエトロ駅は、バチカンの南側に位置していますので、市内にいる観光客にもみくちゃにされる心配もなし!歩いて15分ほどです。

入場料は?

入場料は?

image by iStockphoto

「サン・ピエトロ大聖堂」に入場するのには、入場料がいるのでしょうか。

答えはノー。

教会は、すべての人に開かれていますから無料で見学ができます。

しかし、教会といえども数々の文化遺産を抱えて財政難の教会も多々あり。
ゆえに、保存や修復を要する文化遺産弥施設に限り有料ということもあります。

「サン・ピエトロ大聖堂」で有料のもの、それは「クーポラ」。

ローマの街が一望できるにとどまらず、バチカン市国の美しい庭園も上から眺められるとあって大人気の観光コース。

入場料は二種類あります。

・エレベーターを使い、さらに320段の階段を上るコース 8ユーロ

・下から徒歩で551段の階段を上るコース 6ユーロ

クーポラ見学は、朝の8時から可能。
冬期(10月1日-3月31日)は17時に閉館。
夏期(4月1日-9月30日)は18時まで。

クーポラを見学する場合には、歩きやすい靴が必須です。

また、「サン・ピエトロ大聖堂」の音声ガイドをレンタルするのに18,5ユーロかかります。

ガイドブックもなく大聖堂についてはまったく知識なし、という人には良いかもしれませんが、少し割高ですね。

お得なクーポンはある?


イタリアの各都市には、著名な観光施設や歴史的建造物、美術館の入場券をセットにしたフリーパスが存在します。

もちろん、バチカン市国にもフリーパスがあり、その名は「オムニア・カード」。

ただしこのオムニア・カード、非常に高額です。

・24時間有効の「オムニア・カード」 金額 55ユーロ

バチカン美術館の入場券(優先的に入場できます)

「サン・ピエトロ大聖堂」の音声ガイドが無料(通常は10ユーロで貸出。
日本語あり)

ローマ市内を走る観光用循環バス「クリスティアーナ」の無制限利用

・72時間有効の「オムニア・カード」 金額 113ユーロ

バチカン美術館の入場券(優先的に入場できます)

「サン・ピエトロ大聖堂」の音声ガイドが無料(通常は10ユーロで貸出。
日本語あり)

ローマ市内を走る観光用循環バス「クリスティアーナ」の無制限利用

・サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂の音声ガイドと中庭回廊見学

・「コロッセオ」「ボルゲーゼ美術館」「ローマ近代美術館」「サンタンジェロ城」「ローマ現代アート美術館」「ローマ国立近代美術館」「イタリア国立21世紀美術館」「カピトリーニ美術館」のうち、2館の入場が無料

・ローマ市内のバス・地下鉄無制限利用

・各観光名所への優先的な入場

・「マメルティヌス牢獄」入場無料

というわけで、大変高額のうえ時間制限が厳しい!

72ユーロの「オムニア・カード」を購入する場合には、無料で入場できる美術館の2館を「ボルゲーゼ美術館」「コロッセオ」「カピトリーニ美術館」から選ばなければ損をしますよ!

バチカン美術館やその他の美術館もインターネットで事前予約ができ優先的入場は可能ですし、ローマ市内のバスや地下鉄のフリーパスも個別に購入したほうがお得感あり。

ついでに、ローマの地下鉄・バスのフリーパスもご紹介しましょう。

その名は「ローマ・パス」

・48時間有効券 28ユーロ

ローマ市内の美術館1館入場無料

ローマ市内の地下鉄・バス・トラム無料

ローマ市内で開催中の展覧会、観光施設の割引あり

・72時間有効券 38.5ユーロ

ローマ市内の美術館2館が入場無料

以下は48時間券と同じ条件

結論としては、バチカン市国発行の「オムニア・カード」を購入するより、見学したい美術館や観光施設の入場券を個別に購入したほうが安価にすみそう。

ただし、「オムニア・カード」を購入した場合は、「サン・ピエトロ大聖堂」への入場が優先的にできるという特典はあります!

「サン・ピエトロ大聖堂」の見どころ

「サン・ピエトロ大聖堂」の見どころ

image by iStockphoto

世界で一番大きな教会、それが「サン・ピエトロ大聖堂」。
広すぎる大聖堂内でいったいなにを見るべき?

まずは「サン・ピエトロ広場」!

まずは「サン・ピエトロ広場」!

image by iStockphoto

「サン・ピエトロ大寺院」の前に広がる広大な広場。
「サン・ピエトロ広場」と呼ばれるこの空間が完成したのは1667年。
バロックの天才ジャン・ロレンツォ・ベルニーニの設計で、10年をかけて建設されました。

横幅240メートル、4列に建つ柱の数372本、左右の回廊の上にはに70体ずつの聖人が並んでいます。

信者たちを腕に抱くように楕円形に建てられた広場の美しさは、「サン・ピエトロ大聖堂」の玄関口として愛されてきました。

広場の真ん中には、オベリスクが建っています。
古代エジプト時代に作られたこのオベリスクは、古代ローマ時代にイタリア半島に運ばれて、やり手で有名であった法王シクトゥス五世によってバチカンに設置。
1586年からこの場所に建っているのです。

聖人と認められる人物の列聖式やローマ法王の謁見がこの広場で行われる際には、5万人の信者が広場を埋めることに。

1981年5月13日、「サン・ピエトロ広場」で謁見を行おうと入場してきた法王ヨハネ・パオロ二世は、トルコ人に銃で撃たれ重傷を負う、という事件もありました。
現在、その場所にはヨハネ・パオロ二世の紋章と「1981年5月13日」という文字がラテン語で記された碑文が埋まっています。

新法王誕生の告知が行われる「ファサード」

新法王誕生の告知が行われる「ファサード」

image by iStockphoto

「サン・ピエトロ大聖堂」の巨大な玄関部分を見てみましょう。

大聖堂の両脇に建つ聖人は、ローマの守護聖人「聖ペトロ(イタリア語ではピエトロ)」と「聖パウロ(パオロ)」。
鍵を握っているのが、「聖ペトロ」です。
これは、聖ペトロがイエス・キリストより「天国の鍵」を預けられたという言伝えに基づくもので、「鍵」は聖ペトロのシンボル。
「聖パウロ」は「剣」を持っていますね。

教会の玄関部分は、建築用語で「ファサード」と呼びます。
「サン・ピエトロ大聖堂」のファサードは、横幅が115メートル近くあり、高さは45メートル。
1607年から7年の歳月を費やして建設されました。

ファサードの上にいる銅像は、イエス・キリストと洗礼者ヨハネ、そして聖ペトロをのぞく十二使徒のうちの11人です。
下から眺めてもぴんと来ませんが、銅像の高さだけで5,7メートルもあるのですよ。

ファサードの中心にある紋章は、ボルゲーゼ家出身のパウルス五世のもの。
ドラゴンと鷲のボルゲーゼ家の紋章は、ローマ市内のあちこちで目にしますね。
その紋章の下にあるバルコニー、ここでコンクラーベで選出された新ローマ法王の告知が行われるのです。

ルネサンス時代のシンボル的作品、ミケランジェロの「ピエタ」

ルネサンス時代のシンボル的作品、ミケランジェロの「ピエタ」

image by iStockphoto

日本人であれば、教科書でミケランジェロの「ピエタ」を見た、というかたが大半でしょう。

その本物が、「サン・ピエトロ大聖堂」に安置されています。
入口から入って、右に向かってみてください。
ガラスの向こう側に「ピエタ」が置かれています。

ルネサンス美術の最高峰とも称えられる「ピエタ」は、なんとミケランジェロが22才から24才の若き時代に制作したもの。

注文を受けたミケランジェロは、大理石の選定から入念に行い、2年をかけて完成。

この「ピエタ」の特徴は、死せるイエスを抱く聖母マリアが若すぎるということ。
制作当時から、このテーマは話題になったそうです。
しかしミケランジェロは、「劣情など抱いたこともない聖母マリアが年をとるわけがない」と言い張っていたのだとか。
気が強くケンカばかりしていたことで有名なミケランジェロの面目躍如といったところでしょうか。

この「ピエタ」にはもう一つ伝説が。

「ピエタ」のあまりのすばらしいデキに、20代の若者の作品とは信じられない人々が「この作品の真の作者は別にいる」という噂を流しました。
怒ったミケランジェロは、深夜に聖母のたすきの部分に自らの名前を彫り込んだのですが、怒りのあまり「ミケランジェロ」の綴りの一文字を彫り忘れたのだとか。

また1972年には、「ピエタ」はあるオーストラリア人によって甚大な被害を被りました。
左手や鼻がかけた「ピエタ」はその後、無事に修復され、現在は銃弾も跳ね返すガラスの向こうに置かれているのです。

そんなエピソードを思い出しつつ、至高の美を満喫してみてください。

その大きさを見よ!

その大きさを見よ!

image by iStockphoto

世界一大きいといわれる教会「サン・ピエトロ大聖堂」。
入ってみれば、その大きさを実感できます。

ここでひとつ、数字を並べてその巨大さを実感してみませんか。

まず、「サン・ピエトロ大聖堂」の奥行きは218メートル。

正面玄関から祭壇に向かう中央の身廊の幅26メートル、天井までの高さは46メートル。

教会は普通、十字架の形をしていますが、その横棒に当たる部分を翼廊といいます。
その長さ154メートル。

クーポラ部分の直径、42メートル。
総面積は2万3千平方メートル!

内部には46に及ぶ祭壇があり、窓の数はなんと233個!

電気がなかった時代、この広大な空間を照らすために松明やランプが5300個も使用されたという記録もあります。

聖ペテロの墓所を飾る「天蓋」

聖ペテロの墓所を飾る「天蓋」

image by iStockphoto / 93758683

「サン・ピエトロ大聖堂」の奥に向かうと、祭壇前に巨大なブロンズ製の屋根のようなものがあります。
この「天蓋」の下に、聖ペテロの墓所があるわけですね。
高さはなんと28メートル。

この「天蓋」を制作したのは、バロックの巨匠ジャン・ロレンツォ・ベルニーニとフランチェスコ・ボッロミーニ。
1624年から1633年にかけて作られたバロックの傑作です。
しかし、これだけ大量のブロンズの調達にさすがのローマ法王も苦慮し、ローマ市内にあるパンテオンに残っていた古代の彫像を溶かして使用したという伝説が。

聖ペテロの「玉座」

聖ペテロの「玉座」

image by iStockphoto / 31720754

「サン・ピエトロ大聖堂」の中心に置かれているもの、それが「聖ペテロの玉座」。
椅子自体は木製の簡素なもので、その上を飾るこれまたベルニーニのギンギラギンの彫刻に目がいきます。

伝説によれば「聖ペテロの玉座」と呼ばれる椅子は、聖ペテロがローマの司教であったときに使用したものであったのだとか。
そのため、長い間「サン・ピエトロ大聖堂」の聖遺物として保管されてきた歴史が。

実際には、875年に西フランク王シャルル二世が法王ヨハネス八世に贈ったものとのこと。
それでも大変古いものであるのがわかりますね。

ベルニーニによるブロンズの装飾が制作されたのは、1656年から1665年。

金色の天使たちに囲まれたステンドグラスの中には、白い鳩が翼を広げています。
遠くからではよく分かりませんが、翼を広げた鳩の大きさは1メートル62センチもあるのだとか。
鳩は「聖霊」のシンボルであり、キリスト教会では重要な役割を果たす動物。
旧約聖書の「ノアの箱船」の物語でも、「鳩」はオリーブの枝を加えて登場するのをご存じの方も多いでしょう。

毎年2月22日には、この「聖ペテロの玉座」のための特別なミサが捧げられます。

なでられ続けて足がすり減っている「聖ペトロ像」

なでられ続けて足がすり減っている「聖ペトロ像」

image by iStockphoto

大聖堂内には、ブロンズ製のかわいらしい「聖ペテロ」の銅像があります。
バチカンでは長らく、5世紀に制作されたものと信じられてきましたが、最近の研究では13世紀の作品とのこと。

右手は信者を祝福するポーズ、左手には「聖ペテロ」のシンボルである鍵を持つこの銅像、バチカンを訪れる信者たちにその足をなで慣れたりキスされたりしてすべすべにすり減っています。

6月29日は、ローマの守護聖人「聖ペテロ」と「聖パウロ」の祝日。
その日には、この「聖ペテロ」像に法王冠と豪華な式服が着せつけられるのです。

ミケランジェロが死ぬまで、その実現に執念を燃やした「クーポラ」に登る!

ミケランジェロが死ぬまで、その実現に執念を燃やした「クーポラ」に登る!

image by iStockphoto

「サン・ピエトロ大聖堂」のシンボル、それは遠方からも認められるクーポラ!

クーポラ部分の重さは、およそ14000トン。
高さは133メートル。
内部の階段の段数537段。

観光客の息を切らせる階段の設計はベルニーニ、実際の建設の指揮はカルロ・マデルノ、しかしなんと言っても、このクーポラの実現にミケランジェロの名を外すわけにはいきません。
現在我々が目にする「サン・ピエトロ大聖堂」のクーポラの原型は、ミケランジェロ案であるからです。

ミケランジェロは、死の年の1564年まで、クーポラ建設の実現のために執念をもやしたのだとか。
クーポラが湾曲している部分の壁の厚さ、なんと2メートル!力学的にも、非常に難しい建設であったことでしょう。

同僚たちとのいざこざを乗り越えてミケランジェロが設計したこのクーポラ、現在でもローマのどこからも目に入るまさにバチカンのシンボルです。
ローマっ子たちがこのクーポラに与えたあだ名は「クポローネ(大きなクーポラの意)」。

ちょうど、地下にある「聖ペテロ」の上にクーポラは建てられています。

そのクーポラからローマの街の全貌が望めるほか、大聖堂内も上から見学可能。

ただし、クーポラに登るには入場料がかかりますのでご注意を!

「サン・ピエトロ大聖堂」の地下にある古代を見る!


「サン・ピエトロ大聖堂」の地下には、古代ローマ時代の墓所「ネクロポリス」があります。
古代ローマ時代には、バチカンがある辺りは郊外でした。
ネロ帝が建設した競技場も近くにあったといわれるこの墓所、現代の「サン・ピエトロ大聖堂」の地下を10メートルほど下がったところで見ることができます。

また、大聖堂の名前の由来となった「聖ペテロ」の墓に加えて、キリスト教会初期の時代の11人の法王の墓所も。

「ネクロポリス」と呼ばれるこの古代ローマ時代の墓所の上には、「グロッタ」と呼ばれる歴代法王の棺が安置された部屋があります。
「グロッタ」は棺が並ぶ独特の空気が流れていますが、「ネクロポリス」のほうは古代ローマの墓はモザイクやフレスコのオリジナルを見ることができ、考古学好きには必見。

ただし、「ネクローポリ」見学は予約が必須。
入場料は13ユーロです。

また、一日限定250人、ガイド付見学になります。
(日本語のガイドはなし)。

詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

「サン・ピエトロ大聖堂」と一緒に見て回れる周辺観光スポットは?

「サン・ピエトロ大聖堂」と一緒に見て回れる周辺観光スポットは?

image by iStockphoto

「サン・ピエトロ大聖堂」周辺には、見逃せない観光スポットが盛りだくさん!ぜひ足を伸ばしてみましょう。

テヴェレ川沿いに建つ法王たちの要塞「サンタンジェロ城」

テヴェレ川沿いに建つ法王たちの要塞「サンタンジェロ城」

image by iStockphoto / 81152475

「サン・ピエトロ大聖堂」から歩いて10分ほどのところに建つ「サンタンジェロ城」。

頂上に立つ大天使が雄々しいこの要塞は、もとは墳墓であったことをご存じですか。

建築がはじまったのは西暦125年。
ローマ帝国の五賢帝のひとりハドリアヌスは、有能な政治家であるだけではなく建築が大好きな皇帝でした。
その彼が、生前に自らの墓のために作ったのが現在は「城」と呼ばれている建物なのです。

中世になると、「ハドリアヌス帝の墳墓」は要塞として使用されるようになり、ローマ貴族やローマ法王たちの軍事的な拠点に。

「サンタンジェロ(大天使」の名前には、こんな由来があります。

6世紀の終わり頃、ローマでペストが流行した際、ローマ法王グレゴリウスはペストの退散を願いローマの街で宗教行列を行いました。
行列が要塞に近づいたとき、法王はそのてっぺんで大天使ミカエルが刀を鞘に収めている姿を目にします。
法王はそれをペスト流行の終焉と解釈し、実際にそうなったという伝説から、「大天使城」すなわち「サンタンジェロ城」と呼ばれるようになったのだとか。

1527年にローマはドイツ兵に略奪されますが、そのときにローマ法王クレメンス七世が避難したのもこの城です。

場内は博物館になっていますが、それよりも頂上付近でパノラマを眺め、バールでオレンジジュースなどを飲みローマの風を感じるのも一興。
2000年前の皇帝の巨大な墓で、南欧の空気をお楽しみください。

「サンタンジェロ城」の前を流れるテヴェレ川に架かる橋、その名も「サンタンジェロ橋」もぜひ見学を。

この橋も、オリジナルはハドリアヌス帝の創建。
1535年には、クレメンス七世が橋の欄干に聖ペテロ、聖パウロ、アダム、モーゼ、ノエ、アブラハムの銅像が置かれました。
美しい天使たちが橋の欄干に建つ現在の姿になったのは、17世紀になってから。
当時の芸術家たちが、さまざまな道具を持つ天使を一体ずつ彫ったというエピソードがあり。

表情が違うそれぞれの銅像から好みのものを見つけてみてください。

サンタンジェロ城の入場料は10ユーロ。

開館時間は、9:00-19:30。
ただし、切符の購入は18:30で終了します。

世界史の教科書に登場したお宝がズラリ「バチカン美術館」

世界史の教科書に登場したお宝がズラリ「バチカン美術館」

image by iStockphoto

世界中を見ても最大級のコレクションを誇る「バチカン美術館」。
すべてを見て回るには、体力を要します。

しかしここには、世界史の教科書に載った作品がずらり。

ローマに来て「バチカン美術館」を見ないのは、美術に興味がない人でも惜しいことです。

世界に名だたる「システィーナ礼拝堂」も、バチカン美術館から見学可能。

古代ローマのコレクションでは「ラオコーンの群像」「アウグストゥス帝の大理石像」などは、私たちにもなじみがあるものですね。
アウグストゥス帝は、古代三代美男のひとり、それも納得の美しさを堪能できます。

ラッファエッロ作「アテネの学堂」「キリストの変容」、ミケランジェロが「システィーナ礼拝堂」に描いた「創世記」「最後の審判」、そのほかにもフィリッポ・リッピ、ボッティチェッリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ペルジーノといったルネサンスの天才たちの作品が次々に目に入ってきます。

内部は20ほどのギャラリーに別れていますが、見学コースは全長7キロ!体力をしっかりつけて訪問してください。

年間600万人の訪問者数を誇る「バチカン美術館」は、事前のチケット購入が断然有利です。

バチカン美術館の開館時間

月曜日-土曜日 9:00-18:00(ただしチケット購入は16:30まで)

毎月最終日曜日 9:00-14:00(入館は12:30まで)

チケットは、当日券が16ユーロ。
オンライン予約の場合は、20ユーロです。
その質と量を考えれば、20ユーロは格安といっても間違いなし!ぜひ、列に並ぶ時間を割けるためにオンラインでのご予約を!

また毎月最終日曜日の開館日は、入場料が無料。
そのぶん、訪問者数は増え入館を待つ列はとんでもなく長くなります。
できれば、日曜日は避けたほうが見学はゆっくりできそう。

バチカン市国の庭園をオープンバスで見学!

バチカン市国の庭園をオープンバスで見学!

image by iStockphoto

バチカン市国は、小さいながらも美しい庭園で有名。
ここまで来る観光客も少ないので、静かなバチカンを見ることができる庭園ツアーもおすすめです。
噂によると、学究肌の前法王もこの静かな環境をこよなく愛していたのだとか。

ただし、ツアーには6才以下のお子さんは参加できませんのでご注意を。

そして、このツアーはオンラインでの予約が必須。
音声ガイドと地図、説明書付で36ユーロです。

開園日は、「バチカン美術館」に同じ。

開園時間は8:15-12:45

ツアーはおよそ45分です。

音声ガイドは、イタリア語、英語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、ロシア語のみ。
日本語はありません。

詳しくはサイトをご覧ください。

5月6月の花咲く季節は、とくにおすすめのツアーです。

永遠の都ローマのシンボルとして君臨する「サン・ピエトロ大聖堂」

永遠の都ローマのシンボルとして君臨する「サン・ピエトロ大聖堂」

image by iStockphoto

昨今のイタリアでは若者の宗教離れが著しいと言われています。

それでもローマを土壌にして花開いたキリスト教とその文化は、良くも悪くもイタリア社会に大きな影響を及ぼしてきました。

ローマっ子が「クポローネ」という愛称で呼ぶ「サン・ピエトロ大聖堂」。
ローマのどこからもそのクーポラが望めることは、ローマ市民のアイデンティティでもあります。

巨大な「サン・ピエトロ大聖堂」の建設にどれだけの芸術家や法王たちが執念を燃やしたのか、思いを馳せながら見学してみてください!
photo by iStock

cucciola

Writer:

ローマ在住十数年。かつてはコロッセオを横目に見ながら通勤し、現在はローマの街を見下ろす山暮らし。歴史と美術と書籍に耽溺中。 ブログ「ルネサンスのセレブたち」 (http://blog.livedoor.jp/cucciola1007/) 連載「ダ・ヴィンチの食堂」 (https://goo.gl/9xnp9W)

この記事のカテゴリ

イタリア
ヨーロッパ

イタリアの記事を見る

ローマ在住者が伝授!観光者に行ってほしいレストラン・グルメスポット25選
政府公認ガイドが伝授!イタリア旅行でいきたい「ヴェローナ」観光まるわかりガイド
ローマ在住者が伝授!「スペイン広場」の観光ガイドと見どころ
ローマ在住者が伝授!「トレヴィの泉」の観光ガイドと見どころ
ローマ在住者が伝授!「コロッセオ」の観光ガイドと見どころ
政府公認ガイドが伝授するナポリ観光ガイド!モデルコースから治安・グルメまで
政府公認ガイドが伝授、ミラノ観光これで完璧!モデルコースからおすすめホテルまで
なぜ「天動説」でなく「地動説」なのか?文系でもわかる天文学の歴史
ヨーロッパ旅行に行きたい!女子旅におすすめの美しい都市30選
イタリアのお土産ならこれ!ぴったりのお土産が絶対見つかる10選
政府公認ガイドが教える!フィレンツェ観光完璧ガイド
政府公認ガイドが伝授!ヴェネツィア観光これで完璧ガイド