気温-70℃!世界で最も寒いロシアの街「オイミャコン」に人が住む理由

世界一寒い街、ロシアのオイミャコン。人が耐えられる限界を超え、世界で最も死に近いとも言えるこの場所に、なぜ人は住み続けるのでしょうか。極寒の地にこだわり、住み、生きる理由を探します。


食卓で感じられる寒さ

お弁当に入っているハンバーグやシュウマイ、コロッケなど、主婦の味方である冷凍食品は、食品に含まれるあらゆる組織を完全に凍らせることで、菌の動きを封じ、長期保存をするための技術です。

食品に含まれる水分は、0℃を下回ると凍り始めますが、肉や魚など、食品の表面だけが凍る0℃~-3℃での保存方法を“パーシャル”、食品の全組織が凍る-18℃以下を“冷凍保存”と、私たちは呼んでいます

食品は鮮度が命であることは言うまでもありませんが、特に新鮮さが味に大きく影響する魚は、獲った直後に-40℃以下に急速冷凍されることで、獲れたての鮮度を保ったまま、私たちの食卓へと運ばれています。

人はどこまで寒さに耐えられるか

-40℃の世界では、凍ったバナナで釘を打てたり、熱々のお茶が一瞬で氷に変わってしまったり、自分が吐き出す息でまゆ毛が凍ってしまったりと、数十分としてその場に居続けられるような環境ではありません。
ましてや、人が住むことが、どれだけ難しいことかは簡単に想像ができます。

人の体温は37℃程度が普通ですが、寒さによって35℃に下がると、C19ブルブルと震えが止まらなくなり、33℃になると鼓動が早くなると同時に、強い眠気に襲われるようになります。
幻覚が見えるのは30℃頃で、それを下回ると、顔や手先が火傷のように変色するなど体に変化が現れ始めます。
そして、28℃まで落ち込んだときには、意識はなくなってしまうと言われています

寒さの限界を超えた街

なんとなく温度の感覚がわかったところで、世界一寒い街、ロシアのオイミャコン(Oymyakon)の平均気温ですが、なんと-50℃。
1993年に「世界一寒い街」として認定されたときには、気温は-70℃を記録しました。

ロシアの北東部に位置し、北極圏が目と鼻の先にあるオイミャコンには四季がなく、一年の半分以上が冬。
一日のうち、21時間は太陽が顔を出すことはなく、一日のほとんどが寒さと暗闇に包まれています。
このような極限の寒さであっても、“街”と呼ばれるからには、もちろん住民がいて、子供200人と大人300人ほどがここで生活を送っています。

寒さでメガネがとれなくなる

寒さでメガネがとれなくなる
外に出て2,3分もすれば凍傷になってしまうほどの寒さのオイミャコンでは、外出をする際にはメガネをかけることは禁物です。
一度耳にかけようものなら、冷え切ったメガネの金属部分が皮膚に完全にくっつき、外すことができなくなります。
同じように、ドアのノブを素手で掴めば、一生そのノブを離すことはできませんし、写真におさめたい珍しい光景だからといって、カメラを顔につけたら最後です。

地面が凍りついているため、穴を掘ることは難しく、家の配管を設置することもできないので、トイレは家の外に置かれることがほとんです。
メモをとろうとするとペンのインクも凍り、外出に使った車のエンジンを切ってしまうと、二度とかからなくなるため、エンジンはかけっぱなしです。

ひどい寒さの中で大口を開けて友達と井戸端会議を始めようものなら、唾液が凍り、それが針のようになって唇に刺ささりそうになる経験をした人もいたそうです

なぜ寒さを耐えて、住み続けるのか

なぜこうした想像を超えた厳しい環境であっても、人が住み、生活を続けているのでしょうか。

1920年頃、この極寒を移動する手段はトナカイが引く雪車で、猛吹雪の中、長距離移動する旅行者や、飼育する民にとって、オイミャコンのような街は、砂漠のオアシスさながらの、なくてはならない安息地だったそうです

また、オイミャコンの固い氷に閉ざされた地面の下には、豊富な資源が多く眠っていると言われ、ちょうど世界最低気温を記録した1993年には、10トン以上もの金が採掘された場所でもあります。
オイミャコンの凍てつく寒さは、人が簡単に足を踏み入れることを許さない反面、貴重な資源を守り続けてきました。

寒さは、生きる理由になる

常に寒さと戦わなければいけない環境にも関わらず、いまもなおオイミャコンの人々がその地で生き続けることを止めないのは、死に直面するほどに自分を犠牲にしながらも、人を守り、資源を守ろうとしてきた先祖代々の歴史と、誇りがなせることなのかもしれません。

この地で1,200頭のトナカイを飼育する、ノストロイェフさんは、「寒さを愛しているよ。
寒いと言うことは、きれいだということだ。
水がきれい。
空気がきれい。
私たちは、冬が来るのを待ちきれないんだ。」と、語ります

想像も絶する寒さの中で、さぞ大変だろうという私たちの心配をよそに、街の教師であうレフィーナさんも教えてくれます。

「子供たちは、いつもエネルギーに満ちあふれているわ。
もちろん、太陽が輝きだしたときは特にね。」

世界一厳しい場所から、わかること

“世界一寒い場所”、“世界一暑い場所”、“世界一高い場所”などなど、No.1の地を目的にした旅行も様々です。
オイミャコンの人々のように、極限に生きる人たちから学べることは、決して少なくないはずです。
厳しい環境を経験したからこそ、日常のありがたみがわかった、そんな旅ができれば素晴らしいですね。
photo by iStock and so on.
Takashi Wada

Writer:

人はなぜ旅行をするのでしょうか。観光、食事、お土産・・・
その理由がなんであれ、私たちは、その土地に生きる人々から、多くのことを学べるはずです。
心理学専門、「人の心を読むライター」として、異なる環境に住む人々の文化、考え方、大切な価値観、生き様など、「 心 」をテーマにしたコラムを投稿していきます。

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