新大陸発見以前のスペインを知っていますか?レコンキスタの足跡を巡るスペイン7つの街

ヨーロッパの中でもちょっと異国情緒を感じる国スペイン。旅行でも人気の国ですよね。
フラメンコやパエリアなど文化的にも楽しいものがたくさんありますが、意外とスペインの歴史は知られていないことがあります。アメリカ大陸発見から始まる大航海時代は有名。ですが、その前の中世の頃の歴史をご存知ですが?
大航海時代からがスペインが最も羽ばたいた時代だとしたら、その前の中世の時代は羽ばたく土台を整えて力を溜め込んでいるような時代でした。イベリア半島がゲルマンの西ゴート族に襲われた後、イスラム教徒の勢力に取り込まれた8世紀。半島の北の地域生まれた小さなキリスト教の国からアイデンティティをかけた戦いが繰り広げられたのです。歴史用語ではレコンキスタまたは国土回復運動と言われる活動がイベリア半島を覆った時代。
今回はそのレコンキスタにゆかりのある街を7つご紹介していきます。


ナバーラ王国の栄華を残すパンプローナ

ナバーラ王国の栄華を残すパンプローナ

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8世紀のイベリア半島をほぼ支配したのがイスラム教のウマイヤ朝。

その勢いはスペインとフランスの国境になっているピレネー山脈を越えたほどです。

その時にはすでにパンプローナはローマ時代から整えられた要塞都市の機能を発揮していたと言われています。

シャルルマーニュが亡くなった後フランク王国の力が弱まり、ウマイヤ朝も内紛でもめている隙に、パンプローナを中心としたキリスト教徒のナバーラ王国が誕生します。
10世紀の頃です。

以降、カスティーリャ王国やレオン王国とともにキリスト教国としてフランス王家との縁戚関係を深めながら発展していきます。

フランス国王アンリ4世はナバーラ王も兼ねていたことから縁が深かったことがわかります。

パンプローナは世界遺産でもあるサン・ティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路の一部でもあり、古来からピレネーを越えてきたフランスからの巡礼を受け入れていた街でした。

そして、この辺りはバスク地方とも呼ばれ、現在でもスペインの南の方とは異なる言語や文化を大切にしています。

この街は毎年7月になると時折ニュースにも流れる「牛追い祭り」が有名です。

このお祭りは「サン・フェルミン祭」が正式名称で、聖人となった初代司教のお祭。
ヘミングウェイの小説で世界に知られるようになりました。

闘牛場まで赤いスカーフを身につけて牛を追い込むことから祭りは始まります。
闘牛は単なるイベントではなく、キリスト教が布教されるより前に信仰されていた牛を神聖視する原宗教と融合したのだと考えられます。

旧市街地にはローマ時代のモザイクやゴヤの「サン・ドリアン侯爵」の名画を展示している美術館やサン・フェルミン祭の開始宣言がされるバロック建築の市庁舎があります。

そして、ナバーラ王カルロス3世と王妃の墓があるカテドラルはロマネスクやゴシックなどの様々な様式で建てられおり、この街の歴史を感じられます。

ここからレコンキスタは始まった オビエド

ここからレコンキスタは始まった オビエド

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オビエドの場所はスペインの大西洋側の北、海とカンタブリア山脈の間にあるアストゥリアス地方。

イスラム勢力がイベリア半島を覆った8世紀にキリスト教徒が建国したアストゥリアス王国の首都でした。

この小国が後に首都をレオンに移し、さらにマドリッドへ移り、カスティーリャ王国へと変わっていきます。

カスティーリャ王国はその後アラゴン王国と統一し、スペイン王国となって最後のアラブ系王朝をイベリア半島から撤退させたのです。

そのため、ここがレコンキスタが始まったという説もあります。

オビエドにはこの時代に建てられた教会が残っており、11世紀のロマネスク様式と同じ石造りの骨組みであることからプレ・ロマネスク、またはアストゥリアス様式とも言われています。

現在では4つの教会が残っており、オビエドの旧市街と合わせて世界遺産に登録されています。

4つのうち1つはオビエドの北側ナランコ山にありるサンタ・マリア・デル・ナランコ教会。

アストゥリアス王ラミーロ1世の離宮で842年に建てられました。

2階には謁見の間や浴室の跡があり、当時の生活を知ることができます。

丘の上にあるので見晴台からオビエドの街を一望することもできます。

ナランコ教会のほど近くにはサン・ミゲル・デ・リーリョ教会があり、ここは離宮の教会でした。

細身の建物で、印象的な石の格子窓と一見柱のない細長い身廊の姿からプレ・ロマネスクの様式を見ることができます。

銀の道の中継地 サラマンカ

古代ローマ時代に作られたイベリア半島を縦断する交易路「銀の道」の中継地として栄えたサラマンカ。

この道は北のカンタブリア海の港町ヒホンからアンダルシア地方のセビーリャまで続き、ロー軍隊と物資はセビーリャから川を下ってローマへ運ばれました。

この道はその後も西ゴート族やイスラム教徒たちも利用し、レコンキスタ後も物資を運ぶ交易路として栄えました。

特に北の地域でとれる銀が輸送されてたことから「銀の道」と呼ばれ、街道沿いの街は交易の恩恵にあずかり発展していきました。

その中のひとつがサラマンカです。

この街には1218年に創設されたスペイン最古のサラマンカ大学があります。

サラマンカは当時のボローニャ・パリ・オックスフォードなどと並ぶヨーロッパで有数の大学都市でした。

16世紀に作られた大学の正面入り口は銀細工のように繊細な銀細工のような浮彫彫刻が特徴のプラテレスコ様式の傑作と言われています。

三段の彫刻の下段にカトリック両王のレリーフ、中段にはカルロス5世と王家の紋章、上段にはローマ法王と僧侶のレリーフに囲まれたヴィーナスとヘラクレスの像があります。

サラマンカにはスペイン美術史の見本とも言える新旧のカテドラルがあります。

旧カテドラルは12世紀のロマネスク様式で作られ、イタリア人画家によるフレスコ画や祭壇画が美しい教会です。

新カテドラルは16世紀から2世紀かけて作られたゴシック様式で、正面ファサードはプラテレスコ様式が施されています。

その他にもこの街には「貝の家」と呼ばれる400個以上の帆立て貝で外壁を装飾したゴシック様式の家があります。

この家はサンティアゴへの巡礼者を守る騎士団の家でした。

中世の時代に巡礼や商人など、さまざまな人々がこの街を通り過ぎたようです。

レコンキスタの英雄ゆかりの街ブルゴス

レコンキスタの英雄ゆかりの街ブルゴス

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ブルゴスはマドリッドから約250キロ北にある中世スペインの城下町です。

ここはスペインを統括していくことになるカスティーリャ王国の前身とも言える場所で、10世紀半ばにカスティーリャ伯がレオン王国から独立した街。

この街の見どころは世界遺産でもあるブルゴス大聖堂。

1221年に着工し、途中で200年の中断期間を経て、1567年に完成しました。

正式名称は「サンタ・マリア・デ・ブルゴス大聖堂」で、聖母マリアに捧げられた教会です。

スペイン三大カテドラルのひとつで、セビリア大聖堂やトレド大聖堂と並んでスペインゴシック建築の最高峰とも言われています。

初期の建築にはフランス人やドイツ人が加わり、15世紀にはドイツ人のファン・デ・コロニアが正面の塔を担当し、燃え上がる炎の形のような装飾が特徴的なフランボワイヤン様式が取り入れられました。

この大聖堂にゆかりのあるレコンキスタの英雄が2人。

1人は11世紀後半に活躍したスペインの英雄エル・シドの墓があり、1492年にグラナダを奪回したベラスコ元帥を記念した礼拝堂があります。
この元帥の礼拝堂では天井のステンドグラスの美観と、イスラムの銀細工のようなプラテレスコ様式の傑作を見ることができます。

そして、大聖堂の天井はとても高く、星型の透し模様のドームにどこか異国の香りを感じます。

中世で最大だった商業の街・バレンシア

スペインの地中海側に面したバレンシアは、古代ローマ時代に植民地として作られた町が発展した古い街です。

8世紀に後期ウマイヤ朝に支配されたときにイスラーム文化が街に根付き、10世紀には紙や絹・革・セラミック・ガラスといった工業製品が交易品として多く流通し街が発展していきました。

その後はキリスト教との英雄エル・シドによる建国があり、再びイスラム教徒のムラービト朝に支配され、再度アラゴン王国などのキリスト教との国が奪還といったようにさまざまな権力の支配を受け入れた街でもあります。

この街には世界遺産に登録されているラ・ロンハ・デ・ラ・セダがあります。

これは15世紀にイスラムの王宮跡に商品取引所として建てられたもので、当時としては最大の規模を誇りました。

特にこの建物はフランボワイヤン・ゴシック様式の透かし彫りの窓や飴細工のように緩やかな螺旋を描いた柱が印象的で、独特な異国情緒のあるゴシック建築が見どころです。

またここは商品取引所と合わせて、海事と商事の問題を取り仕切っていたスペイン初の商事裁判所もありました。

そして支払いができなかった者などを投獄する牢獄もあり、壮麗な装飾だけでなく施設の大きさからも当時のバレンシアの発展ぶりを感じさせます。

レコンキスタ最前線 ユダヤとイスラムとキリスト教との万華鏡の街トレド

レコンキスタ最前線 ユダヤとイスラムとキリスト教との万華鏡の街トレド

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トレドは首都マドリッドの南方にあり、タホ川のほとりにある街です。

ここは711年からイスラム教徒の支配下にあり、1085年にカスティーリャ王国のアルフォンソ6世による長期の包囲により奪回されました。

翌年の1086年にムラービト朝のイスラム軍の攻撃に耐え抜いたことがレコンキスタの大きな節目となり、ここからさらにキリスト教の国としてのイベリア半島奪回の動向が強まっていきました。

キリスト教の伝来は早く、400年には公会議が開かれています。
トレドには司教座がおかれ、イベリア半島の首座大司教座のある街になります。

古くから文化的にも発展し、イスラム教徒・ユダヤ教徒・キリスト教徒によってそれぞれの知識が交換されました。

古代ギリシャ・ローマの哲学や神学・科学がアラビア語からラテン語に訳されその後のルネサンスに影響を与えました。

1561年にカスティーリャ王国の首都がマドリッドとなるまで政治と経済の重要な拠点として栄えたトレド。

しかし、首都が移ってからは緩やかに衰退し、16世紀の街が歩みを止めて現在に残りました。

「古都トレド」として街全体が世界遺産に登録されています。

見どころとしてはまずはスペイン・ゴシック建築の代表・トレド大聖堂。

大聖堂にはコロンブスがアメリカから持ち帰った金が使われている聖体顕示台があり、美術館にも引けをとらないエル・グレコの宗教がやゴヤ・ティツィアーノ・ヴァン・ダイクの作品も飾られていて、この建物一つにスペインの芸術が集まっています。

そして、最古のユダヤ教会であるサンタ・マリア・ラ・ブランカ教会。

1492年に追放されるまでトレドの経済を握っていたユダヤ人のための教会は、かつては10以上あったと言われています。

しかし、現存しているのは博物館になっているトランシト教会とこの教会だけ。

教会の内装には建物の壁面に幾何学文様の装飾が施すムデハル様式が使われています。

キリスト教徒とイスラム教徒の文化が融合した様式とユダヤ教徒の経済力を感じることができる教会です。

その他にも16世紀までに建てられた建築物にはイスラムとキリスト教文化が入り混じったムデハル様式を随所に観ることができます。

トレドはスペイン独特といえる、文化が融合した万華鏡のような街です。

レコンキスタ最後の砦グラナダ

レコンキスタ最後の砦グラナダ

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グラナダはイベリア半島の南、アンダルシア地方にあります。

ローマ時代からある街で、1236年にコルドバがキリスト教徒に奪回されてからナスル朝グラナダ王国の首都になり、イスラム教国最後の砦としてレコンキスタと戦いながら発展していきました。

この街で最大の見どころは世界遺産にも登録されているアルハンブラ宮殿です。

グラナダの街を見下ろす丘の上には、イスラム芸術の最高傑作とも言える宮殿が7つあり、中でもナスル宮殿の内観は幻想的で美しいと言われています。

アルハンブラ宮殿には2000人以上が住み、市場やモスクや住宅街もありました。

ナスル宮殿では、行政を行っていたメスアール宮のレースのような白大理石のファサードや二姉妹の間にある宮殿内一精密で美しい鍾乳石飾りの天井などその繊細で見事な芸術美に目が奪われます。

その他にも水を湛えた池のある中庭や庭園と融合した噴水など、砂漠の国らしい建築様式とその技術の高さに驚きます。

この優雅な空間の中を散策すると、いつの時代のどこの国にいるのかわからなくなるほど。

この宮殿を訪問した印象を表現した「アルハンブラの思い出」という切なくも懐かしい旋律のギター曲とともに訪れたい場所です。

そしてこのイスラムの国は1492年に最後の王・ボアブディルが無血開城し、終焉を迎えます。

同時にそれはキリスト教徒にとっては、レコンキスタが完了したということでもありました。

Writer:

旨いものとヨーロッパが大好きなアラフォー女子。背中に羽の生えたペガサスのようにジャンルを問わず様々なことに興味を持ってはアレコレと調べるクセがあります。
1人でも多くの方が、今まで見たことのない景色や面白さを感じていただけるような記事を書けるよう、精進の日々です。

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