イギリスの飯はマズイ!そうシェアする前に、考えてみたいこと。

世界中の旅行者に不評なイギリスの食事。「見た目も、味もいまいちで…」、仮にそれが本当だとしても、特に私たち日本人は、なぜイギリスでその「マズイ」形が今も保たれているのかを考え、見習うべきところがあるのかもしません。


変わる私たちの朝食

変わる私たちの朝食
一昔前の日本人の朝食といえば、焼き魚にお味噌汁、白いご飯には焼きのりを添えて、といったものが定番でした。
ですが、パンやシリアル、ソーセージにヨーグルトなど、海外の食品や文化が次々と輸入されていることはもちろん、住まいの形が一軒家からマンションへ変わることによって、モクモクと煙を出すわけにもいかず、昔懐かしい和朝食は珍しいものになってきました。

江戸時代の頃からその流れを引く「和食」が2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されたのは、「食品の持ち味の尊重」「季節の移ろいの表現」などが認められてのことでした。

旬の食材を使用し、最低限の味付けで、素材そのままの味を楽しむことが、私たち日本人が何より大切にしてきた食に対しての心の表れだったように思います。

姿を消した焼き魚

姿を消した焼き魚
朝食で食べるメニューを複数回答してもらったあるアンケートによれば、朝食に白いご飯を食べるという人は約50%程いたものの、パンはそれを上回る70%の人に選ばれ、白米に代わる朝食の定番になっています。

そのほかにも、ヨーグルトは50%、エッグ料理は40%、フルーツは30%の人の食卓にならんでいる一方、お味噌汁はそれ以下、焼き魚にいたっては、日本人の10%にしか食べられていないそうです。

こうした朝食の欧米化は、若い人ほど傾向が強い、というわけではなく、白米を選んだ人は10~20代の人に多かったそうです。
また、フルーツ派は健康志向を理由に、50代以上の女性で目立つようになり、コーヒーは年齢が上がるほど飲まれやすいることがわかっています

意外にも食の欧米化は、日本の文化に長く付き合ってきた高齢層が歓迎していることで、欧米文化が当たり前の環境で生まれた若い世代にこそ、昔ながらの日本の姿を大切にしようという心が芽生えている、と捉えることもできそうです。

イギリスの朝食は本当にマズイのか?

イギリスの朝食は本当にマズイのか?
海外旅行では、どこで、何を食べるかということは大切なプランの一つで、本場の料理を味わえることは何よりの楽しみです。
世界で一番おいしい朝食は?と考え始めるとキリがありませんが、世界一「マズイ」朝食について、イギリスを他において語ることはできそうにありません。

旅行者の多くが口をそろえて「This is nasty!(マズイ!)」と言ってしまう、「イングリッシュ・ブレックファースト」のメニューは、ベーコン、ソーセージ、トマト、マッシュルーム、目玉焼き、豆、これらがフライパンの上で同じように焼かれ、トーストと伴にワンプレートで提供されるもので、日本食のような色彩は皆無で、焦げかけの茶色一色、味付けも簡素で、四季を感じる要素もほぼない、といっても言い過ぎではなさそうです。

朝食に隠された意味

朝食に隠された意味
何の工夫もなく、即席でつくったと思われても仕方ないイギリス流の朝食ですが、実はその歴史は、1300年頃にさかのぼるほど深みのあるものでした。

特に決まった形のなかったイギリスの朝食に、新たな格式をもたらしたのは、かのヴィクトリア女王でした。
国を統治し、多くの富と財産を手に入れたヴィクトリア女王は、客人と伴にする朝食の場で、当時庶民が手に入れることは到底無理だったベーコンや卵などを一つのお皿に贅沢に乗せることで、巨万の富と権力を相手に示していたと言われています。

また、フライパンに引いた油で揚げるように調理することから、イギリスの朝食は〝Fry-up(フライ・アップ)”とも呼ばれ、ワンプレートが食材で満たされた〝Full Fry-up”という状態は、上流階級のみにできることで、まさに当時のイギリスの富と繁栄を象徴するものでした。

いまでこそイングリッシュ・ブレックファーストは、一般家庭やホテル、パブやカフェなど、多くの場所で庶民に楽しまれる朝食の形となっています。

誇り高き、イングリッシュ・ブレックファースト

誇り高き、イングリッシュ・ブレックファースト
確かに見た目や味だけをみれば、世界中のおいしく、美しい食材にによって肥えた舌を身に付けた私たちにとっては、満足のいくものではないかもしれません。

ですが、700年にも渡り、親から子へと当時のままの形を保ち、何代も受け継がれていることは、イギリス人の歴史に対する敬意や、誇り高いプライド、それを守ろうとする気持ちがなせる業であることは言うまでもありません。

世界遺産に登録されるほど歴史ある食文化をもつ、私たち日本人は、またもや新しいものを取り入れては、自分たちがいままで積み重ねてきた歴史の伝承を諦めようとしています。

海外の食事を「見た目が悪い」「まずい」だとかと批評を重ねる前に、私たちは、食事に隠れて消えた歴史や、それを作ってきた人の心と、真剣に向き合い直すべきだと感じます。
「マズさ世界一がイギリスの食事だとすれば、プライドのなさ世界一は日本人の食事だ」と言われないよう、私たちは自分たちの心でこの遺産を守っていかなければいけません。

食事の楽しみは、味だけじゃない

お味噌汁の味が家庭によって違うように、世界の文化の数だけ食事の形は存在します。
おいしいか、まずいか、グルメリポーターのように評価をすることも楽しみ方の一つですが、その味や材料、調理方法などと向き合い、作り続ける人の心を感じることは、その地の歴史を知ることにつながっていくはずです。
photo by iStock
Takashi Wada

Writer:

人はなぜ旅行をするのでしょうか。観光、食事、お土産・・・
その理由がなんであれ、私たちは、その土地に生きる人々から、多くのことを学べるはずです。
心理学専門、「人の心を読むライター」として、異なる環境に住む人々の文化、考え方、大切な価値観、生き様など、「 心 」をテーマにしたコラムを投稿していきます。

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