【奈良観光】老舗ホテルや旧駅舎など、明治・大正・昭和期の歴史的スポット

修学旅行の定番スポットとして知られる日本の古都・奈良県。ここに残る歴史的スポットには世界遺産や国宝、重要文化財に登録されたスポットが多くあり、奈良の大仏がそびえる「東大寺」や多くの鹿が生息する「奈良公園」、聖徳太子ゆかりの寺「法隆寺」は奈良観光の定番観光地となっています。今回はそんな歴史的スポットが多数残る奈良県から時代が進んだ「明治・大正・昭和期」に完成した近代の建築物を見ていきましょう。

著名人も訪れた老舗ホテル「奈良ホテル」

著名人も訪れた老舗ホテル「奈良ホテル」

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奈良県奈良市高畑町にある「奈良ホテルは」は創業1909年(明治42年)と長い歴史を誇る老舗ホテル。
桃山御殿風のヒノキ造りとなっている本館は東京駅駅舎などを設計した建築家・辰野金吾(たつのきんご)と片岡安(かたおかやすし)の設計で、木造2階建て、面積は延べ4929平方メートル。
このほかに1984年(昭和59年)に営業開始した鉄筋コンクリート造り4階建ての新館で構成。

第2次世界大戦前から関西地方において国賓、後続の関係者が宿泊する「迎賓館」に準ずる施設とされるようになり、1922年(大正11年)に物理学者アルベルト・アインシュタインや、1983年(昭和58年)には名女優オードリー・ヘプバーンが宿泊。
現在でも多くの有名人が宿泊することで知られており、別名「関西の迎賓館」と呼ばれることも。
2017年5月からは3年間の予定で耐震補強工事が実施され、歴史的価値を残しながら現代的設備も加わる予定。
観光スポットとして眺めることはもちろん、余裕のある人は格式高い雰囲気の中での宿泊を楽しみたいですね。
住所:奈良県奈良市高畑町1096

明治中期を代表する欧風建築「奈良国立博物館」

明治中期を代表する欧風建築「奈良国立博物館」

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奈良市登大路町の「奈良国立博物館」は1895年(明治28年)に「帝国奈良博物館」として開館した博物館。
歴史は1874年(明治7年)に当時の奈良県権令・藤井千尋が中心となり設立された官民合同の「奈良博覧会社」からで、翌1875年(明治8年)に開催された「第1回奈良博覧会」において正倉院宝物などを陳列すると会期中に約17万人が訪れる大盛況に。
これによって明治維新後の「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく。
仏教を排除して、寺院などを破壊すること)」で廃れる恐れのあった文化財が「貴重な遺産」として認識され始め、ここから1889年(明治22年)に京都・奈良に帝国博物館の設置が決定。
文化遺産の荒廃はあと一歩のところで避けられたのです。

こうして設立された博物館にある「なら仏像館」は奈良で最初の本格的洋風建築で、設計は宮内省で宮廷建築に携わった建築家・片山東熊(かたやまとうくま)が担当したフレンチ・ルネサンス高揚期の様式。
デザイン的に評価される西玄関周りの造りが特徴的であることから「明治時代中期における欧風建築」の代表的存在とされており、1969年(昭和44年)には「旧帝国奈良博物館本館」として重要文化財に指定。
この博物館の文化財保存に対する貢献度は非常に高いものですね。
住所:奈良県奈良市登大路町50

和風とイスラム風デザイン「旧奈良県物産陳列所」

和風とイスラム風デザイン「旧奈良県物産陳列所」

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奈良国立博物館新館の裏手にも歴史的建築物が存在します。
1902年(明治35年)に建設された「旧奈良県物産陳列所」は奈良県下の物産展示を行う即売場として利用された建物で、設計は建築史学者・関野貞(せきのただし)によるもの。
構造は和風の外観を基調とするもので、窓にはイスラム風デザインを取り入れ東西の要素を巧みに利用。
屋根の形式、左右対称のデザインは関野が京都・宇治の「平等院(鳳凰堂びょうどういんほうおうどう)」を研究していたことから鳳凰堂を感じさせるものになっており、彼にとって鳳凰堂の存在は建築に大きな影響を与えていたのでしょうね。

建物はその後「奈良県商品陳列所」や「奈良県商工館」と名称を変え、1952年(昭和27年)からは奈良国立文化財研究所の庁舎として利用されることに(1980年(昭和55年)まで)。
1983年(昭和58年)には重要文化財の指定を受け、奈良国立博物館が管理。
現在は1989年(平成元年)に開館した博物館の「仏教美術資料研究センター」に生まれ変わっています。
住所:奈良県奈良市春日野町50

北方ヨーロッパの木造建築「奈良女子大学記念館」

北方ヨーロッパの木造建築「奈良女子大学記念館」

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奈良県では名門大学内の建物にも歴史的建築物が存在しています。
1908年(明治41年)に女性教員の養成を目的として設置された「奈良女子大学(当時は奈良女子高等師範学校)」にある「奈良女子大学記念館」は1909年(明治42年)に学校の本館として竣工。
外観は北方ヨーロッパの木造建築に見られる「ハーフティンバー」と呼ばれる建築様式を採用しており、木材を外部に見せる壁構造が特徴的。
建物は主に事務室、講堂として利用され、1949年(昭和24年)に学校が「国立奈良女子大学」に代わった後も引き続き大学本部、講堂として利用されてきました。

その後1980年(昭和55年)に本部管理等、1983年(昭和58年)に講堂が新築されると役目を終え、1990年(平成2年)には「記念館」として保存されることが決定。
時代とともに老朽化が進んだことから取り壊しが検討されたこともありますが、1994年(平成6年)から約10か月をかけて改修工事を実施、国の重要文化財として指定されることに。
現在は4月下旬~5月上旬、10月下旬~11月上旬の年2回限定で一般公開されており、見学時には事前予約が必要です。
住所:奈良県奈良市北魚屋西町

和洋折衷の客殿「宝山寺獅子閣」


生駒市にある「宝山寺獅子閣(ほうさんじししかく)」は「生駒の聖天さん」と呼ばれ大阪商人の信仰を集めた「宝山寺」にある客殿。
1961年(昭和36年)に重要文化財に指定された建物は2010年(平成22年)から解体修理が実施され、現在は特別な時期に公開されています。

建物は横浜へ留学した越後出身の棟梁・吉村松太郎によって1884年(明治17年)に建設され外観・細部装飾は洋風デザイン、内部には和風デザインも採用。
南側のベランダは長谷寺などに見られる「懸崖(けんがい)造(崖や池などの上に建物を長い柱と貫で固定,床下を支える建築方法。)」となっており、洋風の中にも和を織り交ぜた「和洋折衷」の造りに。
色ガラスがはめ込まれた窓には緑(春)、赤(夏)、黄(秋)、青(冬)色が施され、色ごとに式の景色が見える仕組み。
西洋建築を学んだ吉村の技術が詰め込まれていますね。
住所:奈良県生駒市門前町1-1

県内で貴重な洋風近代建築「第六十八銀行奈良支店」


奈良市にある「第六十八銀行 奈良支店」は1926年(大正15年)に「奈良郵便電信局」の跡地に建設。
1879年に設立され大和郡山に本拠を置いていた地方銀行「旧六十八銀行」の奈良支店として利用されたこの建物は建築士・長野宇平治(ながのうへいじ)が設計した鉄筋コンクリート造りの3階建て、地下1階で、外観のギリシャ様式建築は奈良県内では貴重な洋風近代建築の例に。
建物は建設当初から本店として利用すること(1928年(昭和3年)から)を想定していたことから、銀行本店にふさわしい耐震構造が採用され、総工事費は当時の金額にして52万3,000円。

建物で最も有名な存在は正面のイオニア式(古代ギリシアの建築様式の1種)円柱に設けられた「羊」の彫刻。
これは建物を設計した長野と東京美術学校教授・水谷鉄也の作品で、古代ヨーロッパにおいて羊が「多くの富をもたらした象徴」であることから設置されたとのこと。
この彫刻を見るだけでパワースポットのような「ご利益」が得られそうですね。

建物は銀行が1934年(昭和9年)に他の3行と合併して「南都銀行」となった後の本店になり、現在も現役の本店として利用されることに。
1997年(平成9年)には国の登録有形文化財にも登録されています。
住所:奈良県奈良市橋本町16

現在はサロンとして公開「杉山小児科医院」


大和郡山市にある「杉山小児科医院」は1921年(大正10年)に建設された中世ドイツ風木造2階建ての建物。
ドイツを好んでいた医師が診療所兼住宅として建設したもので、建築様式は材木が外部に見える北方ヨーロッパの木造建築技法「ハーフティンバー様式」を採用。
屋根に設置された「ピナクル(建築用語で尖塔を指す)」も特徴的な建物は1945年(昭和20年)に医者が廃業したのちは空き家の時期を経て「杉山医院」に。
2代目となった1980年(昭和55年)に「杉山小児科」と改名。
親子2代にわたり小児科専門医として地域の医療を支えてきました。

現在診療所としては診療を行っていませんが、文化庁の登録有形文化財に指定された2006年(平成18年)の11月から絵や写真、ステンドグラス作品を展示するサロンとして春・秋に一般公開。
2017年(平成29年)には登録から10周年を迎える予定。
診療所としての役割を終えてからも地域に欠かせない場所となっているのですね。
住所:奈良県大和郡山市本町52

Junya Higashi

Writer:

これまで旅行に行った土地は鹿児島・霧島や韓国・ソウルなど。世界の土地や風習のことなど、自分の知らない世界を調べて見るのが好きです。旅行経験やライター活動で得た知識が、これから旅行を楽しむ人の役に立てば大変嬉しく思います。どうぞよろしくお願いいたします!

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