ベルギー最古の街「トゥルネー」のノートルダム大聖堂の歴史

人口約7万人という小さな都市ながら、2つの世界遺産を有するベルギー最古の街・トゥルネー。ここに建てられた世界遺産「トゥルネーのノートルダム大聖堂」は、中世以降様々な国の支配を受けたこの地を見守ってきました。街と大聖堂の歴史を見ていきましょう。






ベルギー最古の街・トゥルネーの歴史

ベルギー最古の街・トゥルネーの歴史

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ベルギーではワロン地方という地域に属するトゥルネーは、フランス国境に近いためフランス語圏となっています。
また、フランスのリールから電車で約20分で行けるのに対し、首都ブリュッセルからは約1時間かかるということからも、いかにフランスに近い街であるかがわかりますね。

 

トゥルネーは2000年前に古代ローマの都市として建設されました。
5世紀にはフランク人に占領され、この街で後のフランク王国の初代国王クロヴィス1世が誕生します。
フランク王国はフランス王国の基礎を築いたということもあり、トゥルネーは「フランス揺籃の地」と呼ばれています。
フランスゆかりに地ということで、市の紋章にはフランス王家を表す百合の花が使われているんですよ。

 

15~16世紀にはタペストリーの生産、18世紀には陶磁器の生産で栄えたトゥルネーですが、昔から様々な国の支配を受けてきました。
フランス・イギリス・スペイン・オランダ・オーストリアなど目まぐるしく君主が変わりましたが、それこそこの街が国と国との中間地点にあったことを意味しています。

1830年にベルギー王国が成立し、ベルギーの一都市となるまでは、本当にいつも激動の時代を生きていた街だったのです。

トゥルネーのノートルダム大聖堂の歴史

トゥルネーの街にある世界遺産は「トゥルネーのノートルダム大聖堂」と「ベルギーとフランスの鐘楼群」のひとつとなっている鐘楼です。

ところで、ノートルダム大聖堂という名前の大聖堂がたくさんあることにお気づきでしょうか。
パリやランス、シャルトル、アミアンなどのフランスにあるノートルダム大聖堂や、ベルギー各地にもノートルダム大聖堂があるのです。

「ノートルダム(Notre-dame)」とはフランス語で「我らが貴婦人」という意味で、聖母マリアを指しています。
そのため、聖母マリア信仰があるカトリックの地、中でもフランス語圏の場所にはノートルダム大聖堂が建てられ、各地に点在することになったのです。

 

トゥルネーのノートルダム大聖堂は、1140年に建設を開始し、1171年に献堂されいったん区切りが付きました。
この時は石造りの重厚感あるロマネスク様式の建物でしたが、13世紀になると内陣を破壊し、ゴシック様式に作り替えたのです。
そのため、2つの時代が異なる建築様式が入り混じるというユニークな建物となりました。
これは、ゴシック様式が流行していたフランス・アミアンの影響があったそうです。
その後も改築は1325年まで続けられました。

1999年には竜巻により被害を受けてしまい、修復が続いています。
完成は2030年予定です。

2つの時代が交差する建築様式

2つの時代が交差する建築様式

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大聖堂の外観は、建物正面(ファサード)に最高で83mもある2本の尖塔、他に3本の塔があり、合計5本の塔があるというとてもユニークなものです。
建物の長さは134m、幅は66mと大規模な大聖堂で、遠くからもすぐにわかります。

身廊はロマネスク様式となっており、48mにわたって大小のアーチが続く高い天井が特徴です。
内陣が、13世紀に改築されたゴシック様式となっています。

 

タペストリーの街らしく、大聖堂の歴史を描いた22mの巨大なタペストリーが内部に飾られており、当時は字を読めない人たちのキリスト教理解への助けとなっていました。
ルーベンスの絵や美しいステンドグラスから差し込む光で、聖堂の内部はいっそう厳粛な雰囲気となっています。

また、ここにはベルギー七大秘宝のひとつ「聖母マリアの聖遺物箱」というものが安置されています。
1205年にニコラ・ドゥ・ヴェレダが作ったもので、金銀や宝石で飾られ、キリストの生涯が浮き彫りとなったとても繊細なものです。

 

ちなみに他の七大秘宝はというと、「イカロスの墜落のある風景」(ブリュッセル:ベルギー王立美術館)、「キリストの降架」(アントワープ:ノートルダム大聖堂)、「神秘の仔羊」(ヘント:聖バーフ大聖堂)、「聖ウルスラの聖遺物箱」(ブルージュ:メムリンク美術館)、「聖バルテルミーの洗礼盤」(リエージュ:聖バルテルミー教会)、「ユゴー・ド・ワニーの御物」(ナミュール:ノートルダム女子修道院)です。

これらすべてを制覇してみる旅も面白そうですね。

トゥルネー生まれの王・クロヴィス1世

トゥルネー生まれの王・クロヴィス1世

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フランク王国の初代国王クロヴィスが生まれた街としてトゥルネーは有名になりましたが、では、クロヴィスとはどんな人物だったのでしょうか。

466年頃、彼はトゥルネーに生まれました。
481年に即位すると、フランク人を統一してガリア北部へ攻め込みます。
版図を次々と広げる中、政略結婚で絆を強めました。

 

一方、妻クロティルドのすすめによりカトリックに改宗しています。
ゲルマン民族の王の中では初めてのカトリック改宗者でした。
これにより、東ローマ皇帝からローマ帝国名誉執政官に任命されています。

その後も進撃を続けたクロヴィスは、結局、北海からイベリア半島付け根のピレネー山脈まで領土を広げました。

508年にはパリに都を移し、511年に亡くなると、パリ郊外のサン=ドニ大聖堂へ埋葬されました。
歴代フランス王のほとんどがここに埋葬されています。

戦乱の世だったとはいえ、クロヴィスはフランス王国の基礎を築いた最初の王として認められているのです。







トゥルネーの他の見どころ

トゥルネーは小さな街ですが、見どころはノートルダム大聖堂の他にもたくさんあります。

まずは、もうひとつの世界遺産「ベルギーとフランスの鐘楼群」の構成遺産となっている鐘楼でしょう。
1188年に建てられた、ベルギー最古の鐘楼でもあります。

 

アール・ヌーヴォーの巨匠ヴィクトル・オルタが設計を手掛けたトゥルネー現代美術館は、外観だけでも見ておきたいものです。
中にはルーベンスやゴッホ、マネ、モネなど錚々たる画家の作品が展示されています。

また、トゥルネー市タペストリー織物博物館では、タペストリーの歴史がわかる展示のほか、実物の修復や制作を行う工房があり、当時の技術を見学することができますよ。

他にも多くの歴史博物館や教会があり、さすが歴史ある「フランス揺籃の地」だなと感じます。

 

意外かもしれませんが、ベルギーという国自体、カーニバルが多く催されています。
トゥルネーも例外ではなく、毎年6月の第2日曜日には「四大行列」が行われ、15体の巨人が街中を練り歩き、人々が歌と踊りに興じます。

9月に行われる「病の聖母の歴史大行列」も有名ですね。
1092年に大流行したペストの惨禍を記念し、宗教行列が行われるのです。
ノートルダム大聖堂に保管されている聖エルテールの遺物など、多くの宝物が行列と一緒に街を歩きます。

トゥルネーを訪れるときは、このカーニバルのどちらかに合わせて行ってみたいものですね。

いかがでしたか。

ベルギー最古の街として育んできた歴史が集約されたようなノートルダム大聖堂は、ぜひ訪れてみたいものですね。
他にも見どころがありますし、フランスからのアクセスも近いため、ぜひ旅程に組み込んでみてはいかがでしょうか。

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