天国にいちばん近い場所!ヨセミテ国立公園の歴史と見どころ

雄大な自然、多様な動植物、絶景の数々……。カリフォルニア州にあるヨセミテ国立公園はアメリカでもっとも有名な国立公園のひとつで、年間400万人の観光客がおとずれます。日本からもグランドキャニオンとならんで人気が高く、いろんなツアーも組まれています。今回はそんなヨセミテ国立公園の見どころと、その歴史をご紹介しましょう。じつは「ヨセミテ」とは現地のことばで「殺し屋」を意味するのです……。






ヨセミテ国立公園ってどんなところ?

ヨセミテ国立公園ってどんなところ?

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ヨセミテの魅力は美しい大自然

北アメリカの西部、シエラネバダ山脈のなかにヨセミテ国立公園はあります。
西海岸のサンフランシスコからは東へ約250キロ、車で4時間たらずの距離にあります。
またロサンゼルスからは北へ6時間ほどの距離。
世界遺産(自然遺産)にも登録されていて、アメリカのみならず世界中から観光客がおとずれる人気の観光スポットです。

ヨセミテの魅力はなんといってもその美しい自然。
約3000平方キロメートルの広大な面積のうち、9割が手つかずのまま残されていて、「公園」というより大自然そのものです。
敷地内には、氷河がけずりとった巨大な渓谷や、そそりたつ花崗岩の白い絶壁、そこから流れおちる700メートル級の滝、ゆるやかな大小さまざまの渓流、鬱蒼と生い茂るセコイアの大木と、見るものを圧倒する景観にみちています。

また多様な植物を観察できるのも、ヨセミテの魅力です。
敷地内の高低差は標高600メートルから4000メートルと幅ひろく、低地の植物から高山帯の植物まで5つの植生帯をおなじ公園内で見ることができます。
希少植物もたくさんあって、四季おりおりにいろんな花や草木を楽しめます。
ちなみに敷地内でいちばん大きいジャイアントセコイアの木は高さ60メートルをこえます。

かわいい動物もいっぱい

ヨセミテでは、いろんな野生動物を間近で観察することもできます。
よくみかけるのはシカやコヨーテやリス、クマの親子も木々のあいだをよく散歩しています。
夜になるとアライグマが寄ってきてちょこんとすわっていたりします。
ほかにもウサギやマーモットなど、かわいらしい動物もたくさん寄ってきます。
人間に慣れているためですが、エサを与えないように注意してください。

哺乳動物だけでなく、ヨセミテにはたくさんの鳥や虫、魚など、生物の多様性にあふれています。
こうした動植物にふれようと、トレッキングやバードウォッチング、釣りや写真撮影を楽しむ人々もおおぜいいます。
また予約制のレクリエーションとしては数種類のハイキングや、川下りのラフティング、サイクリングに、13か所のキャンプ場まであります。
どれも夏場は混雑するので、予約はお早めに。

これらの自然や動植物を楽しむために、観光客のほとんどが訪れるのが、ヨセミテ国立公園内の「ヨセミテ渓谷」です。
東西に長さ13キロのこのヨセミテ渓谷に、有名な景観や各種観光施設、アクティビティの拠点が集まっています。
渓谷の面積は公園内のわずか1パーセントにすぎませんが、ほかの大部分は自然そのものなので、ヨセミテ国立公園といえばこのヨセミテ渓谷を指すこともあります。
これからヨセミテの成り立ちと歴史、おすすめスポットを紹介していきますが、大半がヨセミテ渓谷に関する事柄であることを、頭の片隅にとどめておいてください。

観光地になる前のヨセミテの成り立ちと歴史

観光地になる前のヨセミテの成り立ちと歴史

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ヨセミテの自然はこうして作られた

まずは渓谷や花崗岩の絶壁など、ヨセミテの自然がどのように形成されたのか、そこから見ていきましょう。

いまから約2億年前、恐竜が誕生し、パンゲア大陸が分裂をはじめた時代に、造山活動によってシエラネバダ山脈がつくられはじめます。
同時に山脈の地下では、マグマがゆっくりと固まって、白っぽい花崗岩ができていきました。
花崗岩は約1億年前にもふたたび大量につくられました。

やがて恐竜がほろび、約1000万年前ごろになると、断層の影響でシエラネバダ山脈がさらに高くなりました。
山が高くなると、そこから流れる川の勢いも強くなるので、山肌はどんどん削られていきます。
地表が削られたことで、地下の花崗岩が表面に表れました。
そして花崗岩はぺりっと縦にわれやすいので、おおきな剥離がおきたりして、いまの絶壁となりました。

約300万年前ごろからは、シエラネバダ山脈を何度も氷期がおそいました。
山脈の川沿いは巨大な氷河で覆われ、深いものでは1200メートルもありました。
この氷河が年に数センチ単位でとてもゆっくりと流れくだったことで、川沿いの山肌はトンネル状にまるく削られ、いまの渓谷の姿となったのです。







「ヨセミテ」の名前はかんちがいから?

約20万年前にアフリカで誕生した現生人類は、やがて各地にちらばり、陸つづきだったベーリング海峡をわたって、1万年前にはアメリカ大陸にもやってきました。
こうして住みついた人々がネイティブ・アメリカン、いわゆるインディアンの祖先たちです。
シエラネバダ山脈にもネイティブ・アメリカンのいくつかの部族が暮らしていました。

1800年代の半ば、ヨセミテ渓谷にはアワニチ族という部族が住んでいました。
アワニチとはかれらがこの渓谷を「おおきな口(アワニー)」と呼ぶことに由来します。
かれらアワニチ族ははみだしものの集まりだったようで、ちかくに住むおだやかなミウォク族からは「殺し屋たち(ヨヘミテ)」と恐れられていました。

そこに、白い肌をして銃をもった欧米人がやってきます。
きっかけは1848年からのカリフォルニアのゴールドラッシュでしたが、すぐに軍隊もやってきました。
アワニチ族は戦いをいどみますが、アメリカ軍の歩兵大隊のまえに敗れ、村を焼かれ、のこりの人々はインディアン居留地に強制収容されました。
ちなみに現在アワニチ族の村は、ヨセミテ博物館の裏に再現されています。

そして欧米人たちはこの地を「ヨセミテ」と名づけました。
「アワニー」でなく「ヨヘミテ」ということばを元にしたのは、ミウォク語の「グリズリーベア」の発音とよく似ていて、勘違いしたからだといわれています。
名づけた人も、まさかヨセミテが「殺し屋たち」なんてぶっそうな意味だとは思わなかったでしょう。

ヨセミテの発展と保護に貢献したガレン=クラーク

ヨセミテの発展と保護に貢献したガレン=クラーク

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あらたな観光スポットの発見

アメリカ西部にたくさんの人が住むようになると、ヨセミテ渓谷の美しさをうわさに聞いて、訪れる旅行者がでてきました。
そのなかには画家やライター、写真家などもいて、かれらがヨセミテのスケッチや記事、写真を出版したりしたことで、ヨセミテは「比類なき渓谷」としてひろく知られるようになりました。

こうした観光初期の時代において、おおきな役割をはたしたのがカナダ生まれの入植者ガレン=クラークです。
クラークは1857年、ヨセミテ渓谷の南にあるワオナという土地で、ジャイアントセコイアの森(マリポサ=グローブ)を発見しました。
200本以上の巨大な大木がたちならぶ絶景に、彼は心打たれました。
そして渓谷だけでなく、このマリポサ=グローブも必見のスポットであると新聞に記事を投稿しました。

クラークはそれから、ワオナにロッジを建て、馬車道を整備し、たくさんの観光客をもてなしました。
またクラークはひときわ大きい2本のセコイアの木をくりぬいて、馬車用と荷車用のトンネルをつくり、人気の観光スポットとしました。
荷車用トンネルの木は1969年に雪の重みで倒れてしまいましたが、馬車用トンネルの木はいまも生きていて、人間がらくらくと通りぬけることができます。

ヨセミテの保護にも活躍したクラーク

しかし、ヨセミテが観光名所として発展するにつれて、乱開発や密猟も増えてきました。
そこでクラークは政府に、ヨセミテ渓谷とマリポサ=グローブの保護を訴えました。
やがてクラークの主張は連邦議会に受け入れられ、ときの大統領リンカーンが署名して、1864年にヨセミテはアメリカ史上はじめて、自然保護と公共利用のための公園と制定されました。
これがのち、国立公園という制度になっていきます。

クラークは公園の初代管理者に任命され、ヨセミテの保護と発展に貢献しました。
1869年に大陸横断鉄道が開通すると、ヨセミテを訪れる観光客はさらに増えていきました。
ただ、クラークはワオナのロッジを維持するためにたくさん借金をしてしまい、結果としてロッジを売りわたしました。
いま、クラークのロッジは「ワオナホテル」として整備され、現在もおおくの観光客が宿泊しています。

お金で失敗したあとも、クラークはヨセミテの自然を愛し、おとずれる人々にお茶やクマの肉をふるまったりしてもてなしました。
そうした客のなかに、スコットランド生まれの植物学者ジョン=ミューアがいました。
このミューアがヨセミテを国立公園とし、そしてヨセミテの自然保護をさらにすすめていきます。

次のページでは『「自然保護の父」ジョン=ミューア』を掲載!
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