伊豆の旅。世界文化遺産「韮山反射炉」から伊豆長岡温泉へ

2015年7月、「明治日本の産業革命遺産」構成資産のひとつとして世界文化遺産に正式登録されて以来、訪れる人が急増した伊豆・韮山反射炉(にらやま・はんしゃろ)。今回はこの韮山反射炉と反射炉を築造した江川英龍公、そして早春の伊豆の国市周辺の見どころを中心に紹介します。






反射炉生みの親で「パン祖」の江川英龍(江川坦庵[たんあん]公)

黒船来航に動揺する幕末期、伊豆韮山代官だった江川英龍は国防、とくに海防の重要性を痛感し、徳川幕府に海防のための西洋式大砲鋳造を願い出ます。
韮山反射炉は江川英龍とその後を継いだ江川英敏が1857年に築造した溶解炉です。
韮山反射炉は廃止されるまでの7年間、じっさいに大砲鋳造に使用され、大正11年(1922年)には国の史跡に指定されました。

江川英龍はアイディアマンでもあり、ポルトガル人宣教師が伝えたとされる西洋のパン(堅パン)を兵糧用に復活させたことでも知られ、現在も「日本のパン祖」としてその名を残しています。
英龍とその子英敏、英武らを輩出した江川邸も国の重要文化財「江川家住宅」に指定されています。

重要文化財 江川邸

開館時間 9:00 – 16:30(最終受付は閉館15分前)

休館期間 年末年始、第3水曜日

入場料 一般500円(韮山郷土史料館共通入場券は別料金) / 団体 400円 / 小中学生 300円 / 小中学生団体 200円

江川邸公開事務室

Phone 055-940-2200 / Fax 055-940-2201

反射炉見学は新しくオープンしたガイダンスセンターから

反射炉見学は新しくオープンしたガイダンスセンターから

image by PIXTA / 21330289

韮山反射炉の見学は、反射炉入口に2016年12月にオープンしたばかりのガイダンスセンターから。
センター内には江川家による反射炉築造の歴史や反射炉の構造説明、年表、反射炉の古写真のほか、反射炉で鋳造された臼砲と明治時代に反射炉を保護していた銃剣柵、当時使用された砲弾、燃料の木炭や石炭の実物展示と、巨大スクリーンで反射炉の歴史を解説する映像ホールがあります。

ここで韮山反射炉の歴史と変遷を学んでから、いよいよ反射炉へと向かいます。

世界文化遺産・国史跡韮山反射炉

一般個人 300円 / 小中学生 50円

一般団体(20名以上) 270円 / 小中学生団体(同) 45円[4月1日以降は新料金へと移行]

交通アクセス : 観光周遊型韮山反射炉循環バス(1乗車 100円)、もしくは伊豆箱根鉄道駿豆線「伊豆長岡」駅より徒歩約20分(約1.6km)

Phone 055-949-3450

お台場のカノン砲も鋳造した韮山反射炉

お台場のカノン砲も鋳造した韮山反射炉

image by PIXTA / 26561154

江川英龍は反射炉築造許可が下りると下田で築造を開始しますが、ペリー艦隊の水兵が侵入するという事件が起き、築造場所を地元の韮山藩に変更。
しかし英龍は激務に倒れ、反射炉完成を見ることなく病没してしまいます。
遺志を継いだ三男・英敏によって3年半かけてようやく竣工した反射炉は当時のオランダの技術書の翻訳にもとづいて設計され、佐賀藩から技師の応援も受けて築造されました。

韮山反射炉は不純物を取り除くために銑鉄を高温で溶かす溶解炉と呼ばれるもので、高さ15.7mの煙突を2本そなえる反射炉が直角に向き合う「連双2基4炉」方式。
この工夫により、4つの溶解炉の同時稼働で大型大砲鋳造を可能にしています(反射炉本体は伊豆石、炉内部と煙突部は耐火煉瓦製)。
この反射炉を中心に幕府直営の製砲工場が整備され、ここで鉄製18ポンドカノン砲や青銅製野戦砲を含む数十門の西洋式大砲が鋳造され、その一部が「お台場」にも設置されたと言われています。

反射炉形式の溶解炉は比較的短期間のうちに廃れたため、そのほとんどは姿を消してゆきました。
その唯一の例外が韮山反射炉というわけで、製鉄技術史上においてもきわめて貴重な存在と言えます。

反射炉見学のあとはご当地ビールにご当地深蒸し茶も

反射炉に隣接して建つ反射炉物産館「たんなん」と反射炉ビヤ直営レストラン「ほむら」では、ここでしか味わえないご当地ビール「反射炉ビヤ」と「反射式遠赤外線火入」方式で製造されたやぶきた深蒸し茶が味わえるレストランと土産物店になっています。

このお茶は反射炉を見下ろす茶園で収穫された茶葉で作られており、製茶工場わきの斜面に広がる茶畑の高台は反射炉と富士山、遠く南アルプスまで望める絶景ビューポイント。
展望台や望遠鏡も整備されているので、反射炉見学のときはこちらもおすすめです。
また茶畑の展望台に行く途中にある製茶工場にはつるし飾り雛の特別展示館も併設されています(入場無料)。







日本初の洋式帆船を建造したのも江川英龍公

日本初の洋式帆船を建造したのも江川英龍公

image by PIXTA / 6670414

安政元年(1854年)、ロシア使節として下田港に停泊していたプチャーチン率いる軍艦ディアナ号が安政東海地震の大津波で大破し、現在の沼津市戸田漁港へと修理のため回航する途中、こんどは嵐で遭難して沈没するという事件が起きました。
韮山反射炉築造中だった江川英龍はこのディアナ号乗組員のために、当時最高の船大工たちを伊豆半島中から集め、見たことも聞いたこともない西洋式スクーナー帆船の建造を命じ、新しい帆船は翌年3月に完成しました。

国産初となる2本マストのスクーナー帆船は「ヘダ号」と命名され、プチャーチン提督と47名の部下はこの新造帆船に乗りこんでぶじロシアへと帰還しました。
現在、戸田港の砂嘴「御浜(みはま)岬」先端に江川英龍公の「ヘダ号」関連資料を展示する「戸田造船郷土資料博物館」があり、入口前には引き揚げられたディアナ号の錨が展示されています。

戸田造船郷土資料博物館・駿河湾深海生物館

開館時間 9:00 – 16:30

入館料 一般 200円 / 小中学生 100円、20名以上の団体は2割引

休館日 水曜日、祝日の翌日、年末年始

Phone 0558-94-2384 / Fax 0558-94-2384

のちに江川家の所有となった韮山城址

のちに江川家の所有となった韮山城址

image by PIXTA / 15194230

江川邸からほど近い丘陵に、現在の伊豆の国市を見下ろすように韮山城址があります。

韮山城は明応9年(1500年)ごろの築城と言われ、戦国時代は後北条氏の本拠地として使用された平山城です。
慶長6年(1601年)に廃城したあとは韮山代官の御囲地となり、この城跡を含むほとんどの敷地が江川家の所有となりました。
そのため曲輪や土塁、堀などがほぼ戦国時代の姿をとどめて残されています。

また江川英龍は現在の静岡県立韮山高等学校の「学祖」とされ、同高校の別称「龍城」は、韮山城の異称でもあります。

韮山城址

伊豆箱根鉄道駿豆線「韮山」駅下車、徒歩約15分

伊豆の国市文化財課

Phone 055-948-1428

250本のロウバイも見ごろ

250本のロウバイも見ごろ

image by PIXTA / 25063665

北條寺は正治-建仁年間(1200年ごろ)に鎌倉幕府執権の北條義時が創建したと伝えられる古刹で、現在は「伊豆八十八ヶ所」第13番札所の臨済宗建長寺派の寺院。
桜の木の下に義時夫妻の墓塔が佇んでいます。
本堂には源頼朝が源氏再興を祈願した静岡県指定文化財「木造観世音菩薩坐像」や、運慶作と伝えられる「木造阿弥陀如来坐像」もあります。

現在(2017年1月末時点)、義時夫妻の墓へつづく約300mの遊歩道沿いに植えられた250本のロウバイの黄色い花が見ごろを迎えています。
満開は2月上旬で、今季から休憩用のあずまやと車椅子利用者のための見学場所も整備され利便性も向上しました。

Writer:

伊豆半島の付け根に住んでいます。地元静岡県の記事が中心ですが、海外ものもときおり織り交ぜてご提供。公共交通機関を最大限活用するスローな旅が好きです。

この記事のカテゴリ

伊豆長岡温泉
文化
温泉・旅館

関連記事を見る

伊豆長岡温泉の記事を見る

源氏にゆかりの「伊豆長岡温泉」の歴史的観光スポット
伊豆の日帰り温泉ランキング!海見える?食事はある?混浴貸切は?
伊豆長岡温泉の客室露天風呂(部屋風呂)がある旅館ならここ!おすすめ温泉宿5選
伊豆の温泉付きリゾートホテルならここ!厳選おすすめ高級ホテル30選
源泉かけ流しのある伊豆長岡温泉の旅館・宿泊施設ならここ!おすすめ温泉宿6選
日帰りできる伊豆長岡温泉ならここ!おすすめ旅館・温泉宿5選
伊豆長岡温泉の旅館・宿泊施設ならここ!温泉宿おすすめランキング11選