観光の前に知りたい「リオデジャネイロ」の歴史。この都市の光と影


徐々に経済の中心はサンパウロへ

コーヒー輸出で富と大量の労働力を手に入れたサンパウロでは、コーヒーだけではなくブラジル工業化の中心ともなりました。
その結果、国内での重要度は1920年代の時点で早くもリオデジャネイロを追い越し、ブラジル最大の都市となりました。

また、政治的にもサンパウロの重要性が高まりつつありました。
1894年から1930年までは、コーヒー生産地であるサンパウロ州出身者と、牧畜の盛んなミナス・ジェライス州出身者が交互に大統領を送り出し、「カフェ・コン・レイテ(カフェオレ、つまりミルク入りコーヒー」と呼ばれる体制が成立します。
1930年には、反サンパウロのヴァルガスが大統領に就任し独裁政治を開始しますが、サンパウロの政治的重要性が薄れたわけではありません。

ただ、リオデジャネイロが20世紀前半にかけて衰退したというわけではありません。
リオデジャネイロでも第二次世界大戦後には商工業が発展し、他地域からリオデジャネイロへ移住する人々がますます増加します。
ファヴェーラが拡大する一方で、前述の通り文化や流行の発信地としての側面を強めていきます。
今でもサンバに代表されるようにリオデジャネイロの文化は享楽的な性質があり、しばしば「リオ人は遊びで忙しい」と揶揄されます。

首都機能はブラジリアへ移転

1960年、時のクビシェッキ大統領は強引に首都をブラジリアへ移転します。
これによって、経済面だけでなく政治的にもリオデジャネイロはブラジル中心としての地位を失います。
しかし、ブラジル最大の石油会社をはじめ、名だたる企業は移転せず、本社をリオデジャネイロに起き続けました。
これは、リオデジャネイロが港を持っており、国内外の流通の中心地であったことが大きかったと考えられます。
経済機能はあまり移転しなかったために、リオデジャネイロは今日までサンパウロに続くブラジル第二の都市として君臨しています。

1960年代以降は激しいインフレーションや財政危機に苦しみ、経済的な停滞を経験した時期もありました。
しかし、1993年に現在の通貨単位である「レアル」に切り替わり、徐々にインフレが沈静化すると、安定した経済成長を遂げました。
ブラジルの国際的な地位が高まるとともに、リオデジャネイロの注目度も向上します。
2014年にはブラジルでサッカーのワールドカップが、2016年にはリオデジャネイロで夏季オリンピックが続けて開催されたことは、ブラジルとリオデジャネイロの存在感の大きさ、将来にむけた「成長可能性」が大きかったとされています。

2016年夏季オリンピック開催とリオデジャネイロの未来

2016年夏季オリンピック開催とリオデジャネイロの未来

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南米初のオリンピック開催!

リオデジャネイロは2004年や2012年の夏季オリンピックにも立候補していましたが、ファヴェーラを中心とした治安の問題、1950年代に整備されたインフラの老朽化、国際大会開催経験のなさなどが理由となって落選していました。

しかし、2007年にパンアメリカン競技大会(南北アメリカ各国が参加して4年に一度開催される競技大会)がリオデジャネイロで開催されたことでインフラが改めて整備され、状況が一変。
早くも2006年には2016年夏季オリンピック開催都市に名乗りを上げます。
政府の強力なサポート、リオデジャネイロ市民やブラジル国民の高い支持率をバックに、2014年サッカーワールドカップの開催を勝ち取ったことも追い風となり、三度目の正直でオリンピック開催権を手にすることができました。
南半球でオリンピックを開催したことがあるのは、これまで白人中心国家であるオーストラリアだけでした(メルボルン・シドニー)。
ブラジルはもちろん、南アメリカ大陸で初めて夏季オリンピックが開催されることになり、あらためてブラジルという国の存在感を国際社会に誇示したと言えます。

貧富の差や治安がリオデジャネイロの未来を左右する!

開催に当たっては、ジカウィルスの問題が大きく取りざたされました。
ジカウィルスによって引き起こされる「ジカ熱」は致死性ではないものの、妊婦が感染することで胎児が小頭症(頭が小さい状態で生まれたり、生後に頭の成長が停止したりする病気)にかかる可能性が高まることが示唆されました。
実際、ブラジルでは感染対策が進んでいないとして、トッププレイヤーの一部はジカウィルスを不安視して出場辞退を発表するなど、スポーツ界も対応に追われました。

また、市の財政難と治安の問題もクローズアップされました。
以前の立候補の際に指摘されていたとおり、治安の悪さという問題は残っていました。
また、市の財政難によって警察官への給料遅配が発生し、警官のデモやストライキ、強盗やひったくりが多発。
開催後も選手団の窃盗被害が相次ぐなど、治安の問題は最後まで解決されませんでした。

オリンピックが閉会した後も治安の問題や財政難の問題はくすぶりつづけています。
奴隷制や経済構造に起因する貧富の格差、それに伴う治安の問題は、21世紀のリオデジャネイロが世界的なイベントに頼ることなく解決しなければならない問題なのです。

多様な魅力いっぱいのリオデジャネイロ!歴史を知ってより深く楽しもう

町自体が美しいものも深刻な社会問題も、人種も階層も一体となって混じり合うエネルギッシュな魅力に包まれているリオデジャネイロ。
サンバやボサノヴァ、カーニバルなどといった文化も、「混じり合い」の中から生まれてきたのですね。
こんな素敵な都市がいかにして造られたかを知ると、見るもの触れるものをより深く味わうことができます。
歴史を頭に入れてから、ぜひリオデジャネイロへ訪れてみてくださいね!

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Writer:

和菓子好きの34歳男。某塾で歴史を教えていた経験があります。複雑な情報をうまく整理できたときの快感がたまらなく好きです。私の文章がそんな「快感」を共有できるものになれば・・・と思いながら、日々文章を書いています。

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